龍は炎帝を追う
はいはい、四龍(スーロン)島シリーズ第五作目、『龍は炎帝を追う』です!
最初っからイラストの話をしてしまいますが(笑)、いつもながら表紙イラストが素敵なのです!
髪に真紅の布を被せた飛くんが凛々しくも艶やかで♪
うっとりですよ、うっとり♪
それじゃあ、本編行ってみましょーっ!
宿敵・青龍(チンロン)の意を受け、白龍(バイロン)市を内側から食いつぶそうとする大船主・祥船(シャンチョアン)。
彼らに対抗するために、なんとか樹林房(シュリンファン)との取引を復活させたい飛(フェイ)は、
マクシミリアンに再三朱龍(チューロン)市行きを迫っていた。
折りしも、李(リー)の弟分である燕(イェン)が、祥船といさかいを起こして狙われている。
一向に動きを見せないマクシミリアンに業を煮やした飛は、事件に乗じてある計略を巡らせるが…。
四龍(スーロン)島シリーズ第5弾登場!
(文庫折り返し部分より)
はい、いつもによっていつもの如く、微妙にニュアンスが違いますが(笑)。
幽鬼騒動は何とか治まったものの、そのお蔭で『白龍』マクシミリアンの朱龍行きは取りやめになったまま。
叩いた阿片屈残党も一部を取り逃がし、肝心の黒幕である青龍の刺客も捕らえられずで、
このままでは一向に青龍と手を結んだ祥船を初めとした大船主組合の港での専横を食い止めることが叶いません。
しかも、飛くんの知り合いの船主、西海風(シーハイフォン)の李は、船主組合に屈することなく、
自分たちの力でいい船材を得ようと、樹林房へ交渉しようとしたばかりに、阿片屈残党によって身内が傷付けられ、
彼らの縄張りの港にも火を放たれました。
そんな中、自身も傷を負って、万全ではない状態でありながらも、飛くんは樹林房との取引を実現させることが、
港を、ひいては白龍市を守ることに繋がると信じ、朱龍行きを決意します。
しかし、案の定、飛くんを困らせたい(?)マクはそれを許しません。
そのようなときに、本土からの遊学から帰ってきた船主、富浪(フーラン)の若頭領、燕が、
真っ直ぐな気性のままに、船主組合とぶつかるのです。
西海風の李を兄貴と慕う燕は、李が惚れ込んでいる花路の頭(トウ)をも目の敵にし、島に戻ってきた早々、
花路でも騒ぎを起こします。
更に、船主組合の会合で、最近新しい舟に使われる船材が悪いと口にした燕。
ちょうどその場にいた飛くんの危惧どおり、燕はそのあと、樹林房の取引を願う訴状を白龍屋敷に出し、
密かに青龍と手を結んでいる祥船跡取り、千雲(チェンユン)の企みによって狙われることになります。
そこで更に、千雲は富浪と花路(ホワルー)を纏めて封じ込める算段に出ます。
富浪の荷蔵に捕らえていた阿片屈残党を逃がし、それをちょっとした諍いのあった花路の仕業と見せ掛けるのです。
八方塞の状況の中で、飛くんは大きな賭けに出ることに……という筋が正解。←?
・「龍は炎帝を追う」名場面
今回は(正直いつもですが/苦笑)ピックアップに迷ったので、二つで!
まずはこちら。
この『炎帝を追う』での飛くんの登場シーン。
昼の色街。
歓楽街一の娼館、梅雪楼(メイシュエロウ)の二階で娼妓たちが、朱龍行きのための衣装を選んでいる最中。
彼女たちは美しい紅梅の薄布を巡って無邪気な追いかけっこを始める中…
窓桟をすりぬけて、夏の陽射しのなかへと舞い落ちるのが、色鮮やかな紅。
所在なくひらひらと翻りながら窓辺を離れて、ちょうど小路を折れてきた人(飛くん)の肩へ、
ふわりと仮の居どころを定めた。
(中略)
「いやだわ……どうしましょう」
梅雪楼の扉から、慌てふためいて走り出てきた娼妓は、手放した美しい色が、
とんだところへ迷い着いているのを見つけて、思わずそこに立ちどまる。
半身に、紅色。
薄布を邪魔にするでもなく、腕組みのまま。
打ち水のされた石畳に、すっきりとたたずむ、その涼やかな立ち姿に、
「小妹(シャオメイ)。あたし、紅梅はやめるわ。あなた、とりなさいな」
「……いいわ、姐さん。あたしも、別のにする」
女ふたりは、みじかい溜め息をついて、欲しい色をあきらめる様子だ。
いましがたのぞき込んでいた鏡のなかの顔よりも、目のまえの相手に、文句なく紅梅がよく映える。
娼妓たちは、そういうことには敏感だ。
(本文34〜36頁より)
んで、飛くんは娼妓たちに髪に布地を被せなおされた上で、共にいた羅漢(ルオハン)と共に、
楼の中へと連れ込まれます。
しかたなく上がり込む楼の二階から、ばたばたと慌しい足音が降りてきた。
「お……」
飛をまえにして、梅雪楼主人が思わず絶句。
「こ、これはこれは……いったいどちらの美女のご到来かと思えば……頭でしたか。
いや、惜しいですな。
男でいらっしゃらなかったら、金銀積み上げてでもその身をお預かりして、
この二階に住まわせるんですが」
「褒め言葉か、けなし言葉か、測りかねるな、主人」
応えながら、飛は、漆黒の髪から紅梅色を滑り落とす。
「おまえが男で、梅雪楼は稼ぎ損ねたな」
と、からかい文句の羅漢に、まったくです、と楼の主人が、まんざら冗談ではない声音で、相づちをうつ。
(本文36〜37頁より)
娼妓たちよりも色鮮やかな布が似合ってしまう飛くん。
布を髪に被せただけで美女と間違われる飛くん。
男でなかったら、売れっ子娼妓間違いなしの太鼓判を楼主人に押されるほどの美貌の飛くん。
もう、全てがツボで御座います!!
ふふ、ふふふふふ……(変笑)
さて、もう一つは、名場面…というよりは名台詞?
捕らえた阿片屈残党の仕置きの始末の件について話し合うことになった、
船主組合の会合に呼ばれたマクは、その供として飛くんを連れて、
会合場所である祥船の店里(ティエンリー)へと赴きます。
そこで、残党を島送りまでの間、船蔵で預かることを勝手に決められた富浪頭領の燕が、
騒ぎを起こすのを目にするのですが、その後、皮肉交じりに騒ぎを詫びる祥船頭領、
高浪(カオラン)に対し、マクは、ふと香った花の匂いを切っ掛けに、
前回の事件の黒幕を知る手掛かりとなった黄色い花が、祥船頭領の妾宅にあるかどうか、
それとなく確認します。
そしてその別れ際にマクは、いつもの戯言を放ります。
「好いた女が早くに死ぬと、暇つぶしに悪事をたしなむわけだな、祥船頭領。
その心持ちはよくわかるぞ」
「はて、なんのことやら……こちらは、どうもわかりかねますな。
そのような世迷い言より、以前にも申し上げましたが、
あなたさまも早くに妻なり妾なりを、迎えられたらよろしい。
恋童をいくらかわいがっても、子をなしてはくれませんぞ」
嘲弄の嗤いを放ってよこして、高浪はゆっくりと踵を返す。
青白い顔の千雲が、そのうしろで静かな拱手。
父のあとについて、回廊を立ち去って行く。
「恋童……だそうだ」
と、マクシミリアン。
「馬鹿な言葉を、覚えるなよ、『白龍』」
(本文96頁より)
恋童、恋童ときたよ!!(喜)
稚児とか、寵童、ましてや恋人ではなく、恋童!!
何だか、凄くいかがわしくも(笑)、艶っぽい響きだと思いません?
ここで、飛くんに馬鹿な言葉を覚えるなよ、と釘を刺されたのにも関わらず、
この言葉はマクの頭にしっかりとインプットされた模様(それから、ことあるごとに使ってくれちゃいます)。
そして、葉柳の頭の中にもインプット(死)。
・「炎帝を追う」ベストオブイラスト!
今回のベストオブイラストも、これしかないでしょう!(笑)
本文229頁のイラストだっ!!
大きな掛けに出ることにした飛くんは、罪人を逃がした科で、船主組合を除名となった富浪の協力を仰ぎます。
突っ張っていた頭領の燕とも花路らしく、拳で(?)和解し、彼と一芝居を打つことにします。
白龍屋敷執事、万里(ワンリー)の協力で、密かに樹林房との商いを願い出る西海風と富浪の書状を預かり、
次いで、マクを騙す形で、添え状を二通手に入れます。
そうして、彼を騙くらかしたまま(笑)、飛くんは朱龍市へと向かうのです。
飛くんは夏の祭礼へ赴く花路一の娼館、梅雪楼の一行に紛れて、街の境の龍門をくぐります。
しかし、龍門は白龍屋敷の手勢によって固められ、阿片屈残党を逃がしたのが、花路であるとの噂により、
一行の俥の内は検められ、男は上着を脱いで、肩背中に刺青がないかまで確かめられます。
そこで、ここを乗り切るために、飛くんはな、なんとっ!
娼妓を装って見事門をくぐり抜けるのであります!!
よし、通れ、と声がかかった。
袍(パオ)をかかえて俥に乗った主人を、しかし、
「いや、待て!」
うしろから門番が引きとめる。
「ひとりかと思えば、となりにだれかを乗せているな。
困るぞ、主人。隠しだては、身のためにならん」
思わず帳を押さえるところを、無理やりつかんではね上げさせる。
梅雪楼の主人のとなりを、かっ、と夏陽があらわに照らした。
俥を囲んだ男たちが、いっせいに息を呑んで目を奪われる。
主人のかたわらに静かに座り、花釵を揺らして、にこ、と笑むのが、艶やかな姿の娼妓ひとり。
もの言わぬくちびるに、紅梅の色。
鬢を残して結い上げた髪が、濡れたようにつややかな漆黒。
媚びる甘さのない顔立ちに、不思議に深い双眸が、えもいわれぬ色香を添える。
怯えるでもなく、咎めるでもない、涼しげな風情で、ひた、とまっすぐなまなざしをこちらへ。
肩に纏った真紅の薄布が、容貌を引き立てて鮮やかに美しい。
(本文227頁〜228頁より)
こ、このっ!すんばらしい娼妓が飛くんなのです!!
まさに、描写通りの涼しげで色香漂うお姿に、男たち同様、見惚れまくりです♪
艶やかで美しいのに、近寄り難い気高さを漂わせている辺り、ツボを突きまくりです!!!
この後、見張りの男たちは、件の娼妓をまるで仙姫のような、と噂し合います。
あんな目で見られては、腰が抜けて手が出せない、とも(高嶺の花ということね!!/喜)。
その中でただ一人、元花路だった小虎(シャオフー)だけが、その娼妓が飛くんだと気付くのですが、
後日談として、奥さんの春華(ツンホワ)が臍を曲げるほど、そのときの頭の艶姿を褒め称える始末。
流石、元花路。頭ラヴ振りは妻子持ちになっても健在です(笑)。
梅雪楼の主人も、飛くん扮した娼妓を「梅雪楼の自慢」と紹介してるし。
後から、花路一の看板に偽りありと言われるぞと、飛くんが指摘すれば、言葉が足りないくらいだと返すほど(笑)。
こんな非の打ち所のない美姫になれちゃう飛くん。大好きです!!(歪んでる…)
次回、美男が一人歩きをすると、かどわかされてしまうと噂の(すげえ/笑)女の街、
朱龍市が舞台ということで、飛くんは女姿で行動することになります。
飛くんの芝居に、一歩遅れて気付いたマクも、彼を追って朱龍市へ向かいます。
あ、マクは女装しませんから。←してたら怖いよ(汗)。
という訳で、『龍は炎帝を追う』れびゅはここまで。
お付き合い頂いた方、有難う御座いました!!
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