龍は微睡む
さてさて、四龍島シリーズ第一作目は『龍は微睡む』です。
第一作目ということで用語説明、及び簡単な人物紹介を交えながらレビューして行きましょう。
まず簡単なあらすじ……
と言っても葉柳は粗筋説明が下手なので、文庫本折り返しの作品紹介を以下に引用することに致します(早速か…)。
ちなみに引用部分は黒で表してます。
四龍(スーロン)島は『龍(ロン)』と呼ばれる4人の主に統べられた島である。
白龍(バイロン)市の後継者、マクシミリアンは、妾腹の生まれゆえに『半龍(ハンロン)』と呼ばれ、侮られていた。
しかし、歓楽街『花路(ホワルー)』の頭(トウ)、飛(フェイ)は、彼の瞳に常人とは違うものを感じていた。
できそこないを装いながら、本物の龍の鋭い牙を隠しているのではないか…。
今、2人の運命が大きく変わろうとしている!
疾風怒濤のカンフーアクション・ロマン登場!
(文庫折り返し部分より)
…何か、笑けてしまうんですけど……
特に「疾風怒濤の…」のあたり。
まあ、でも四龍島シリーズのあおり文句はこれですので!
取り敢えず手始めに……
・用語説明(補足)いってみようか。
・四龍島とはどんな島?
東西南北で4つの市に分かれ、東が青龍(チンロン)市、西が白龍(バイロン)市、
南が朱龍(チューロン)市、北が黒龍(ヘイロン)市と呼ばれとります。
また、市の名前がそのまま領主の呼び名となっておりまして、
『青龍(チンロン)』、『白龍(バイロン)』と表記される場合、
それはその市を治める領主その人を指すことになります。
このシリーズは主に四龍島西の街、白龍市が舞台となります。
白龍市は本土との交易の要の港を擁する活気ある街…だそう。
名前からお分かりのように、この四龍島、中華風の島となっております。
皆、袍(パオ)・短衫(トアンシャン・タンツオ)と呼ばれる
チャイナカラーのお洋服を着ているのですよ、うふふ。
・『花路』って?
簡単に言えば白龍市の色街のことです。
また、そこを仕切っている百余名の若者たちの呼び名でもあります。
彼らは色街のごろつきといえど、古くから『白龍』とは切っても切れぬ仲。
上から街を治める『白龍』をその下から支え、
大事の折には命懸けで街を守り通す頼もしい若者たちなのです。
飛くんはそんな彼らを仕切る頭
(トウ・「かしら」とか果ては「ヘッド」などと呼んではいけませんよ?まあ、意味は同じですが)なのです。
ドサクサ紛れに次は
・主人公紹介(人物紹介…ではなく/笑)です。
さてさて、物語の主人公の一人、マクシミリアンは英邁な主として『大龍(ターロン)』との異名を取った、
先代『白龍』である父の死後、後継ぎとして四龍島にやって来ます。
初登場からして彼は気だるげ。
白龍の海に沈む夕日を眺めながら溜息を吐きます。
以下に彼の初登場シーンの一部を引用。こんな人です。
「憂鬱な光景だな……」
(中略)
袍の裾に纏いつく龍の紋様が、窓辺に射し込んだ陽の光に染められる。
彫像のような整った容貌に、沈んだ銀灰色のきついまなざし。
西洋の血をなかば残す優雅な顔立ちを、漆黒の髪が縁取っている。
(本文12頁より)
妾腹の生まれである彼、西洋の血が混じっていることも手伝って、「半龍」と呼ばれるのです。
自分の評判も何もかも承知の上で、敢えて出来そこないの『龍』を演じます。
父が亡くなって恨みを向ける矛先を見失った彼は、何一つ周りに興味を持てずにいました。
そんな自分を省みることのなかった父に拘る(ファザコン?)彼、相当な皮肉屋で性悪なのです(言い切り)。
「天は二物を与えない」の代表……(マクシミリアンファンの方、すいません…/汗)←でも、事実やし。
良いのはその容姿くらい。
でも、「くらい」って言ってもずば抜けて良いので、「性悪でも美形なら良いわ!」と仰るお嬢様方にはお勧めかも。
ちなみに↑の引用では彼髪を黒く染めていますが、ホントは銀髪です。
さてさて、もう一人の主人公我らが(?)飛くんの御登場はこんな感じ。
花路の仲間、小虎(シャオフー)が店で暴れ、仲間に傷を負わせた大男に立ち向かいますが、適いません。
そこに颯爽と花路の頭である飛くん登場。
蹴り一つで大男を倒してしまいます。
あざやかにまわし蹴りをくらわし、よろめきもせずに地に降りたのは、小虎よりもいささか小柄な若者である。
いや、まだ少年といってもよかった。
背にかかるほどまで無造作に伸ばした髪をかきあげると、倒した男を踏みつけにして小虎のそばに寄り、ゆっくりと助け起こした。
(中略)
二年ばかりまえから色街を仕切るこの頭は、腕っぷしの強さと、ごろつきの首領には似合わぬ姿の美しさを、ふたつながら兼ね備えている。
ほそいが、屈強な男でもかなわないほどの力を秘めた、しなやかな四肢。
すっきりと整って甘くもないその顔だちに、どこか憂いの沈む漆黒の瞳が、衆目を引く色香を添えている。
まっすぐに視線を上げれば、相手を射る強い瞳だが、それがやさしく和めば、心根の荒いごろつきでも、いつのまにか魅き込まれてしまう。
(本文36〜37頁より)
すいません、長く引用しちゃって(汗)。
葉柳は彼が大好きなのですよ、だからついつい。
飛くんは↑のように、細身の美形でありながら、とっても強くて、優しくてついでに頭も良い!!
天が二物以上を与えちゃった人です。
ただ一つの欠点は余りにも周りの人を大切に思うが故に、自分を犠牲にしがちなところ。
でも、それが欠点であると同時に彼の美点でもあるのです。
いっぱい傷付きながらも、苦しんでいる人を助けようとするその姿勢にはいつも胸ときめき、じゃなかった、心打たれます。(語りすぎ)
そんな飛くんとマク(マクシミリアン)は初めて視線を交わしたそのときから互いに運命的なものを感じちゃいます。
まさに一目惚れ状態(語弊あり)。
飛くんは自分の掲げる『龍』はマクしかいないと強く感じます。
この飛くん、純粋であるだけにときどき、読者(もとい葉柳)を赤面させるような台詞をズバッと言ってくれちゃいます。
ふざけ半分に自分などを『龍』にしても、苦労するだけだと言うマクに、飛くんはきっぱりと言います。
「わたしになにを期待しても、無駄だぞ。
(中略)
わざわざ遠くの苦い水を飲みにくることもあるまい?」
皮肉にささやくマクシミリアンに、
「だめなのだ」
きっぱりと、飛は応えた。
「あんたでなければ、だめなのだ」
はねつけるように相手を睨み返して、強く言った。
(本文157頁より)
これって愛の告白?
いや、『龍』はマクしかいないと飛くんは言いたかった訳ですが。
ここに都合よく誤解するバカ女が1人。
作中にもう1人(マク)。←いや、この時点では微妙ですが。
マクはこの島に来てからただ一人真っ直ぐな眼差しを向けてくる飛くんを、煩わしく思うと同時に惹かれていくのです。
そうだなあ、この「微睡む」に敢えてサブタイトルを付けるならば、
飛とマク、運命の出会い。
平穏に街を治めることなどできそうもない気まぐれな神龍(マク)を前に、
飛くんは自らが彼を地上に繋ぎ止め、操る「龍玉」になることを決意します。
とまあ、そんな感じで。
これ以上語ると止まらなくなるので(既に止まらなくなっている気もしますが)、
ストーリー説明はここまで。
さて、次は葉柳以外は誰も指摘しないであろう、
・「龍は微睡む」名場面です。
葉柳がセレクトしたのはこちら。
飛くん初登場後、情けなくも大怪我を負い、頭に助けられてしまった小虎は、運ばれた妓楼の奥で、
悔しさに歯噛みします。
熱と痛みが増してきた脇腹を抱え込んで、彼はひと晩じゅう思っていた。
もっと逞しい腕を、もっと力強い足を、自分にください……
花路と頭とを、俺に守らせてください。
(本文41頁より)
これです!!
花路の仲間が頭(飛)をどう思っているかが如実に表れている場面だと思います。
守る必要がないくらいに強いんだけど、そうであっても周りに「守りたい」という
徒な気持ちを起こさせるような人なんですな、飛くんは(素敵♪らぶ)。
ということで、このシーンを敢えてセレクトさせて頂きました!
葉柳の選ぶ・「微睡む」ベストオブイラスト!
四龍島を語る上で忘れてはならないのが、漫画家の浅見侑さんによるイラストです!!
葉柳は四龍島を知る前から浅見さんのイラストが大好きで…(今も好きです)
最初はイラストに釣られて四龍島を手にとりました(笑)。
もう、表紙、挿絵とも全てが良いのですが、勝手にベストオブイラストをセレクトしました!!
本文201頁のイラストです!!
『龍』の地位を狙うマクの叔父が隣の青龍市と結んで雇った刺客の手により、
マクは車ごと崖から海にドッポンしてしまいます。
生まれてすぐ海に捨てられたと言う過去を持つが故に、海を恐れていた飛くんでありましたが、
このときばかりはそんな恐怖を忘れて無我夢中で海に飛び込み、マクを助け出します。
その後のマクとのギリギリの会話を経て、飛くんはようやくまどろんでいた神龍を起こすことに成功するのです。
イラストはちょうどそのあたり、マクが『龍』になり、
飛くんが『龍玉』になることをお互いに確信した後に、二人が視線を交わすシーン。
マクは優雅に微笑み、飛くんは凛とした美しい横顔を見せつつ、マクを強く見返しています。
ここにバーン!!とお載せすることが出来ないのが非常に口惜しいのですが、ホントに美しいですよ!!
代わりにそのシーンの二人の会話を引用。
「父の墓のよこに、先々代の花路の頭とやらの廟があった。
知っているか?
あれは、なかなかに洒落た話だった」
(先々代の花路の頭は、大龍の死後、後を追って自殺しました。殉死です。)
(中略)
「わたしが死ぬときには、おまえにも死にたいほどの気分を味わわせてやろう。
置いていかれるくらいならば、殺してくれと泣き叫ぶ声が、さぞかし耳に心地よかろうな」
吹き込まれる痴れごとが、飛の背筋を逆撫でするようだった。
そうなるかも知れない予感と、そうなってたまるかという反発にはさまれて、身動きがとれない。
頬に落ちかかるマクシミリアンの冷たい銀の髪を、首をふって避け、
「死人に聞こえる耳があったとしての、たわごとだな」
切り立つ崖を仰ぎ、飛はそんな皮肉で銀灰の瞳をかわした。
(本文200頁より)
この一瞬の視線の交錯を表しているイラストなんですな。
………長々と語ってきましたが、果たしてこれで紹介になっているのかどうかいまいち不明。
まあ、興味を持った方は、読んでみてね!!ということで。
読みにくいことこの上ないだらだら独り言れびゅーにお付き合い下さいました方、有難う御座います。
今回は人物紹介も含めて語っちゃったので、えらく長くなっちゃいましたが、
次回はもうちょっと短く纏めることができると思います(これで纏まっていると抜かす気か…/呆)。
宜しければ次回もお付き合いくださいましたら幸いです。
|