龍は花を喰らう
四龍(スーロン)島シリーズ第二作目は『龍は花を喰らう』です。
二作目にして、煩悩満載なこのタイトル(「龍」をマク、「花」を飛(フェイ)くんに例えると…/悦)。
その内容は葉柳の穢れた煩悩とは、やや(?)違うものの、やはりときめき要素がいっぱいです♪
まずはあらすじ紹介。
前回同様、折り返し部分からの引用です。
前回と同じく、引用部分は黒です。
マクシミリアンの統率のもと、平和を取り戻した白龍(バイロン)市だが、
老蕭(ラオシャオ/マクの叔父。前作で失脚し、雇った刺客に殺されました。)時代の腐敗はいまだ根を張っていた。
かつての知り合いの不審な死を目撃した飛は、それが極めて毒性の強い麻薬「夜花丹(イエホワタン)」の中毒死であることをつきとめる。
はびこる夜花丹の被害が、青龍(チンロン)市の陰謀によるものと確信したマクシミリアンは、飛と共に青龍市に乗り込むが……。
待望の四龍島シリーズ第2弾、ついに登場!
(文庫折り返し部分より)
何か、このあらすじ説明だとマクが進んで青龍市の陰謀を叩こうと乗り込んだ…的ノリですが、
実際はマクは暇潰しに叩いてやろうか、くらいの感覚で、一生懸命動き回って、マクを引っ張っているのはむしろ飛くんの方。
老蕭統治時代に白龍市に巣食った阿片窟を何とか一掃したいと思っていた飛くん。
そんなとき、正気を失った男が花路で暴れ、止めに入った飛くんの前で死亡します。
それがかつての知り合いの楊(ヤン)という青年だったのです。
青年の様子が阿片の末期中毒患者に見られるものだったので、青年の死因は阿片によるものだと思われました。
そして、青年の懐から出てきた何かの植物の根。
ところが、青年の死後、身体中に青い斑点が浮かび上がったのです。
それは阿片中毒には見られない症状。
飛くんが不審に思っていたちょうどその頃、マクは阿片窟の元締めである黄羽(ホアンユイ)から、賄賂を手渡されます。
包みの中にあったのは、翡翠の塊と楊が持っていたものと同じ植物の根。
この根こそが楊を死に到らしめた夜花丹だったのです。
このことと、楊が青龍から白龍に戻ってきたとの情報を照らし合わせ、飛くんは夜花丹の出所が青龍であり、
阿片窟と結んでこの麻薬を白龍に持ち込もうと企んでいることを確信します。
そこで、折りよく(?)青龍市の酒造組合から招待を受けたマクに付いていく形で青龍市に乗り込むのです。
んでもって、今回のお話で葉柳が思った(喜んだ)こと。
飛くんのイメージフラワーは牡丹なのねえぇ〜〜♪
ということ。
それも、白牡丹。
↑で死んでしまった楊ですが、彼は飛くんを育ててくれた師父(シーフ)が営んでいる茶房のお客だった詩人で、
牡丹を丹精するのが好きだったのですよ。
その頃から茶房を手伝っていた飛くんを、牡丹の花に似ているから、という理由で「あの子を養子にくれ」と師父に言っていたそうで……
どういう理由よ…(笑)牡丹のお花のように愛でたかったのかねぇ……(危ない……)
飛くんの旦那様(??)、マクも庭に咲き乱れる牡丹に飛くんの面影を重ねてたりして……
マクは↑で、黄羽から賄賂として渡された翡翠を上等な一欠けらを残して売るよう指示します。
(その金で人を雇って、逆に黄羽のことを調べようとする辺りは流石…)
その指示を受けた執事万里(ワンリー)が、こう訊いた訳です。
「で、上等の翡翠を、どこの姫君にお贈りしましょうか?『白龍』」
ふふんと鼻で嗤ったマクシミリアンは、窓に寄っておもてを眺めやる。
花園(ホワユアン)の牡丹の波が、すぐ眼下。
清廉な白、その奥に、うらはらに潜む薄紅……
誘われて思い浮かべる面影がある。
歌うように、背後へ応えを投げた。
「さあ……おそらくは、花路あたり」
(本文44頁より)
ここでマクが思い浮かべた面影が飛くんなんですな〜♪
この「うらはらに潜む薄紅」って辺りが、とっても艶っぽい表現で……(悦)
この上等の翡翠で耳飾りを作らせたマクシミリアンはこのお話のラストで、
耳飾りを半ば無理矢理に(笑)飛くんにプレゼントします。
という訳でこのお話にサブタイトルを付けるのなら、
マク、飛くんにエンゲージピアスを贈る
でしょうね!
ま、エンゲージは行き過ぎだとしても(笑)、この翡翠の耳飾りは今後二人の絆を象徴するものとなります。
そして、飛くんのイメージジュエリーは翡翠となるのです♪
今回葉柳が取り上げる、
・「龍は花を喰らう」名場面
は、このピアスをプレゼントする直前の場面となります。
夜花丹の出所を掴もうと動いていた飛くんは、前回と同様、またもや邪魔に入った青龍の刺客、
翼人(イーレン)が生まれたばかりの自分を海に投げ込んだ張本人であることを知ってしまいます。
翼人に捕らえられ、夜花丹の毒と海に沈む悪夢に溺れかけた飛くんでしたが、
助けにやって来たマクの少々強引な呼び掛けによって、何とか現実に戻って来ることが叶います。
息詰まる攻防の中、飛くんは致命傷を負った翼人を、自らの手で葬るのです……
その後、密かに青龍の姉姫の住まう花園で育てられていた夜花丹を全て焼き払い、
殆ど休む間もなく白龍へと戻り、阿片窟を叩きます。
事件の一通りの片がつき、気の緩んだ飛くんが、この件で犠牲になった人々や己の過去、
自らが手に掛けた翼人に対しての物思いに耽りそうになったちょうどそのとき、
狙い済ましたように、マクが現れます。
センチメンタルな気分に陥り掛けていた飛くんの心を逃すまいと、マクはかなり強引な口説き文句を吐きます。
「つまらん悪夢なぞに気をとられるな、花路。
おまえがよそ見をしていれば、すぐにわかる。
契りを交わしたはずだぞ。
そのまなざしを、ほかへはくれるな……」
耳に忍び込みかけていた海鳴りを、しなやかな両手が防ぎとめる。
「いいか、聞け」
と、頬触れ合うばかりに引き寄せて、マクシミリアンが言い聞かせる。
「その身に巣くう悪夢とやらを、わたしが喰らい尽くしてやる。
おまえには……夢見る暇さえ、与えてはやらん」
脅しにも似た台詞を吹き込むマクシミリアンの声。
それを、飛は酩酊の心地で聞いていた。
のけぞる喉から、
「あんたは……わがままだ」
ようやく詰れば、
「そのわがままな男を、どうしてもあんたでなければだめだと口説く物好きがいるから、不思議だったぞ」
即座に返ってくるのは、辛辣な揶揄ひとつ。
(本文230〜231頁より)
その言葉に飛くんがマクを睨んだ直後にいきなり、耳飾りを耳朶に差し入れられるんですな。
また、長く引用しちゃいましたが、マクの強引な口説き文句にドキドキ。
それを心地良く感じながら、同時に反発も覚える飛くんの姿にもドキドキ。
ああ…良い場面です。
葉柳の選ぶ・「花を喰らう」ベストオブイラスト!
今回また、悩みながらも葉柳が選んだ四龍島ベストオブイラストは、
本文153頁のイラストです!!
執事見習を装って、マクとともに青龍市へ乗り込んだ飛くん。
気まぐれを装いつつ、街の散策へ出たマクが、夜花の手掛かりを掴みに、
『青龍』の姉姫の住まう花園に一人入り、飛くんが外で待っていたとき。
いきなり、幾つか走ってきた俥(人力車)の内の一つから小刀を投げつけられます。
しかし、結局刀を投げてきた俥を取り逃がしてしまった飛くん。
するとまた、向こうから俥がやって来ます。
贅を尽くした造りの俥でしたが、何故か帳が上げたままになっています。
「とまれっ、とまれっ!」
と、ふいに車上に声が上がった。
(中略)
「そこの、おまえさん」
俥におさまったままの小太りの男に声をかけられて、飛ははっと顔を上げた。
「ちょっと、こっちへおいで」
訝しむ飛の目つきなどお構いなしで、男は手招きをした。
億劫な足どりを装って近寄る飛の顎に腕をのばし、ぐいと陽ざしのほうへ仰向ける。
「ほう、ほう……ほう……」
なにやら満足そうな笑みを浮かべて、懐から小さな包みを取り出した。
(本文152頁より)
ちょうど、この(↑)場面を描いているイラストなんですが。
この飛くんに声を掛けたオヤジ、実は青龍の色街で有名な男娼館の主人でして、
俥で出掛けるときは常に帳を上げて、街中でこれはと思う玉を見付けると、金の力に物を言わせて、
自分の養い子にしてから、店に上げるということをやってる奴なんですな。
つまり、飛くんは男娼にスカウトされた…と(笑)。
で、どうしてこのイラストが葉柳の中でベストかといいますと、仰のかされた飛くんのお顔立ちが、
そんな風にスカウトされてもおかしくないな、と思わせるほど清々しく整っていながら、
仄かに色香まで漂う感じに描かれてるからなのです〜〜♪
オヤジ、邪魔ですけど(笑)。
別の場面でも飛くんは青龍の娼妓に、このオヤジの店に上がれるとからかわれておりまして…
(肌が滑らかで娼妓にも負けず劣らず綺麗だ、ということで/悦)
奇しくもホントにスカウトされちゃったぞ、って辺りが流石というか、可笑しいというか……
泣く子も黙る花路の頭なのにね(笑)。
でも、そんな飛くんが葉柳は大好きです!!
まだまだ、語り尽くせないのですが、取り敢えず今回はこれで。
こんな独り善がりのレビューにお付き合いくださいました方、いらっしゃいましたら有難う御座います♪
葉柳はまだやるつもりです(苦笑)。これ、自己満足企画なので…エヘ。
宜しければ次回もお付き合いくださいましたら幸いです。
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