花姫純情
四龍(スーロン)島シリーズは、この巻から番外編となります。
一年に一回出遭えるお楽しみ♪となった、シリーズ通算二十八冊目は「花姫純情」です。
タイトルが発表された当時は、「この「花姫」とは飛くんを指しているに違いない!!」と、
ネットでも話題になったものです。
もちろん、私もそう期待しておりましたが、実情は違っておりました(笑)。
表紙はマクのアップの手前に、鞘に入った剣を手にした飛(フェイ)くん、
その下に小さく、孫(スン)と孫がお世話になってる商家のお嬢さんが描かれているというもの。
この表紙で、誰が話のメインになるか分かりますね(笑)。
しかし、このイラストの飛くんは凛々しい美人さんなのです♪♪
四龍島、春の盛り。
春を寿ぐ花炮(ホワパオ)の祭礼を間近に控えた白龍(バイロン)市では、付け火騒ぎが街を賑わしていた。
現場に残されていたのは、孫が身を寄せる商家である孫家の品札。
孫家では主人が病に臥し、一人娘の媛媛(ユァンユァン)に縁談が持ち上がっていたのだが、騒ぎのせいで評判は悪くなるばかり。
密かに想い合うらしい孫と媛媛の様子を気にしながら、飛は事件を調べに走るが……。
四龍島シリーズ、待望の番外編!
(文庫折り返し部分より)
…という訳で、この話のメインは、孫とお嬢さんの恋話です。
ここで初めて、お嬢さんの名前が明らかになりました。
媛媛…日本式にするなら(せんでいい)、「姫子」といったところか?(笑)
タイトルの「花姫」はこの媛媛ということで。
当初の期待は裏切られてしまいましたが、メインではなくても、
ちゃんと飛くんの素敵な姫っぷりを拝めたり(あくまでも葉柳基準です/笑)、
マクとの際どいやりとりに、胸ときめかせたりできるので、充分楽しめます♪
しかし孫…商家の孫家にお世話になっているからという理由で付けられた通り名だったのか!(笑)
・「花姫純情」ベストオブイラスト。
お話は、東州茶房から始まります。
最後まで客席に残る三人の若い娘が、はしゃぎながら茶を楽しんでいます。
その三人のうちの一人が媛媛でしたが、彼女だけは少しぼんやりとして、友人の話も耳に入らない様子でした。
そんな彼女らの相手をし、お土産に菓子を持たせつつ丁寧に送り出すのが、東州茶房の新しい主となった玲泉(リンチュアン)です。
彼女らが店を去った後、玲泉が高い棚の陰に向かって呼び掛けて、飛くんが登場します。
今回のベストオブイラストはこれ!↓
13頁のイラスト♪
白黒イラスト一枚目の茶房給仕姿の飛くんです。
髪を束ねて、春の花模様の繍のある袍(パオ)を纏った姿にうっとり♪♪
「客のまえに出ないでは、仕事にならないというのに。玲泉」
そう言って苦笑する。
すずやかに美しい容貌。
年のころが、十八、九。
しなやかな細身に白い袍がよく似合う。
背まで伸ばした髪を藍色の飾り紐でひとつに束ねているが、
清々しい色香漂う目もとを、ふぞろいな前髪が、ぱら、と隠すような隠さないようなだ。
すっきりとたたずむ姿が、潔い風情。(12頁)
この(↑)引用を、まさに具現化しているイラストなのです!!
肩に掛かる艶々の髪が綺麗よねぇ♪♪
腕がちょっと細過ぎる感があるんですが(汗)、気にしない気にしない!
太過ぎるよりは、よっぽどマシですから!!(笑)
長い前髪が艶っぽい目もとを隠すような隠さないような…っていうのが、チラリズムっぽくて(笑)、好きです♪
あからさまでない色香!!これが飛くんの魅力のひとつだね!!堪らないよ、それだけで…♪♪(笑)
…そんな理由もあって、私の好きになるキャラは大抵、前髪長めになるんですが(そう言えば、やっすんもそうだな/笑)。
どうやら、玲泉は若い娘の客が来ると、飛くんを茶房の奥に隠してしまうようです。
その理由を、もし、若い娘に懸想され、噂が立つようになったら、山の手のお咎めが恐ろしいからと笑う玲泉。
山の手とはつまり、マクのこと。
玲泉はすっかり、マクと飛くんの仲を応援する態勢でいるようです(笑)。
しかし、玲泉、飛くんは姫だが(断言すな)、一応男だぞ?
仕えていた玉蘭(ユイラン)に面差しが似ている所為なのか、どうも、彼女は飛くんを、女性扱いしている節があります(苦笑)。
常日頃、飛くんを姫扱いしている私は一向構わない…というか、むしろ、大歓迎なのですが(笑)、
飛くん本人としては苦笑してしまうしかないのでした。
そんなところに、媛媛が忘れ物をしたと、茶房に戻ってきます。
大事な守り袋だというそれを無事見付けることができて安堵する様子の彼女でしたが、
それを玲泉に指摘されると迷うような返事をします。
話題を変えようと、玲泉が、彼女の家が扱っている商品のひとつである常夜灯の油について問うと、
彼女は進んでどの油が良いかと話をしだします。
しかし、彼女に付き添っていた身内の明賢(ミンシェン)に窘められ、少し悔しそうにしながらもおとなしくなってしまいます。
玲泉の呼び掛けで、彼女が孫がお世話になっている商家の娘だと気付いた飛くんは、
明るくて活発だと聞いていた彼女の様子が違うことを気に掛けます。
そうして、彼女が去った後、玲泉から彼女の父が病気で、
家のために彼女が幾つもの縁談をするらしいという話を聞かされるのでした。
日が暮れてから、花路に顔を出した飛くんでしたが、孫は媛媛の縁談の話を仲間には伝えていないようでした。
しかし、近く行われる花炮の祭礼に必要な火薬、油を商う孫家に話が及んだことから、
慕い合う者同士が結婚の約束をするという慣わしにかこつけて、
媛媛を口説くよう仲間に焚き付けられていた孫は、少々悪酔いをしているようでした。
それでも、仲間に孫家の実情を打ち明けていない孫の気持ちを尊重し、飛くんは何も言わずに、白龍屋敷へと向かいます。
雪蘭(シュエラン)との正式な離縁の前に、噂を流していた為、
マクのところには、代わりに妻ならずとも側仕えの娘を差し上げようという素封家が引きも切らずに押し寄せていました。
それにうんざりするマクの興味の対象は、やはり、飛くんのみのようで(笑)。
屋敷内に部屋を用意させたのに、一向に寄り付こうとしない飛くんに、
どこに居所を定めたいのかと恨み言めいた問い詰めをするマクに、飛くんは問い返します。
「訊いておきたいが、マクシミリアン。俺をそうまで近くに置いて、どうしたいわけだ」
「知れているだろう」
「俺には知れない。まさか夜ごと囲棋(ウェイチー)の相手か」
「ああ、それもいい」
「堪らない。身が持たないぞ。あんたはいかにも性悪な手を使いそうだから……」(42頁)
と、飛くんは断りますが、マク「それもいい」の「も」ってのは何だ?「も」ってのは?(笑)
明らかに別のことを期待していると読者に邪推させますぞ!(笑)
一方、そんな邪推とは全く縁の無い飛くん。分かってないのか、マクの意図を…(笑)
この期に及んで↑のようなことを正面切ってマクに訊くとは…さすが純粋培養は伊達ではない(笑)。
口説きモードに突入したマクが、更に飛くんを落とそうと攻め手を繰り出している最中(笑)、
またも、側仕えの娘を紹介しようとやって来た素封家に邪魔されて、ブチ切れてるマクが非常に面白かったです(大笑)。
翌日、飛くんは、常夜灯の油を買うついでに様子を見てこようと、孫家の店里(ティエンリー)に出掛けます。
そんな彼の応対をしてくれたのが、先日顔を合わせた明賢でした。
どうやら、彼は孫家主人の家筋に当たる者の妾腹で、血筋から言えば、媛媛の従兄であったようです。
彼から媛媛の縁談のことについてそれとなく聞きだしていた飛くんでしたが、
急に店が慌しくなり、店を出ざるを得なくなります。
その落ち着かない様子を気に掛けながら、東州茶房に帰った飛くんに、玲泉が慌てた様子で耳にした噂を教えてくれます。
それは、マクが花炮の祭礼に合わせて、側仕えを召し上げる為の美女比べをするというもの。
一瞬呆れ返った飛くんでしたが、これは質の悪い誰かの企みではないかと気を揉む玲泉に、
マクならばそれくらいのことを言うだろうと応えるのでした(笑)。
あっという間に『白龍』美女比べの噂で持ちきりとなった街の中、
日が暮れてから花路に入った飛くんは、羅漢の古妓楼で、執事の万里(ワンリー)と共に待ち受けていたマクを顔を合わせます。
祭礼に先立つ宴に、花路の出席を指図する書状を渡すついでに、飛くんの反応を見に来たようです(苦笑)。
しかし、今回の飛くんは余裕で、憤る顔が見られず残念だと悪びれることなく言ったマクは、
着飾って美女比べに加わるかと飛くんに戯言を言って妓楼を後にします。
そんなマクを、花路の大牌楼まで飛くんと花路の大兄らが見送りに出たところで、事件が起こります。
マクが乗ってきた俥が突如、火花を散らし燃え上がったのです。
幸い、危険を察知した飛くんが、警告の声を発したお蔭で、惨事は避けられました。
しかし、その後の指図をしていた飛くんの目のまえに、赤い紙切れが降ってきます。
それは火薬商いの孫家の荷札でした。
孫家の荷札はそのとき集まっていた野次馬たちにも見られ、噂が広がってしまいます。
調べの一切をマクから任せられ、白龍屋敷から花路に戻った飛くんは、早速仲間たちに指示を出します。
飛くんは、最初は孫を、孫家の調べに同行させようとしていましたが、
孫から違う役目にまわして欲しいと頼まれ、その願いを受け入れます。
それから、支度のために皆が出て行くときに、孫を呼び止め、少し媛媛の話をするのです。
彼女とは幼馴染で、恋しいかと問われると気恥ずかしさが先に立つ、
ただ、危なっかしいところがあって放っておけないのだと言う孫。
だが、自分と彼女とは元々立場が違うと、最初から諦めているようでした。
そのままならなさに、心痛むものを感じつつ、飛くんは羅漢(ルオハン)と共に、孫家へと向かいます。
そこでは、急に幾つもあった縁談の話がなくなって、
店里も慌しい様子である理由を知らされないままだった媛媛が痺れを切らして、明賢に詰め寄っていました。
屈強な羅漢と共に現れた飛くんを、明賢はおとなしい雰囲気の東州茶房の給仕と同一人物であると気付きませんでしたが、
媛媛はそうと気が付きます。
が、彼女がそれを言い指す前に、羅漢が花路であると名乗るのでした。
奥に案内された飛くんと羅漢は、病に伏せっている店里主人代わりの明賢に、
白龍屋敷の俥が燃えた後に、残された孫家の品札を見せます。
それは不特定多数が買うことのできる小売の商品にも使われる品札だと応える明賢。
他にも商いでの揉め事は無いか訊ねますが、心当たりは無いとのことで、事件の手掛かりを見付けるのは難しそうです。
取り敢えず、後で店の帳簿を見せることと改めて主人に商いの揉め事について訊くことを明賢に頼み、
飛くんたちは孫家を後にします。
そのとき、裏口から出てきた媛媛に呼び止められ、孫のことを訊ねる彼女の様子から、
彼女もまた、孫を想っているのではないかと飛くんは察するのでした。
花路の羅漢の棲家に戻った飛くんは、羅漢と共に、孫と媛媛の話をします。
想い合いもの同士がうまく寄り添えない理由は何だと珍しく色恋に関する疑問を口にした羅漢に、
後からやって来た葉林(ユエリン)が、応えてくれます。
それはお互いの意地なんだそうで(苦笑)。
意地を張らないでいれば、寄り添う方法など幾らでもある、という葉林の言に「なるほど〜」と思わず納得してしまう私。
しかし、葉林、経験がなさそうな割には、そんなことを良く知ってるな!(笑)
もしかして、昔はスレンダー且つダンディで、恋愛経験豊富だったりして…ってそれはないか、幾らなんでも(更に笑)。
恐らく、大兄として長く色街に腰を据えていて、多くの娼妓と客との間の恋を目にしてきたから、というところでしょう。
恋にのめり込んでる当人同士より、それを傍から冷静に見てる他人の方が、現状が良く分かるものだと思うし。
その後、白龍屋敷に上がった飛くんは、今は無人の南荘(ナンチャン)の庭にいたマクと久し振りに剣の手合わせをします。
最終的には力付くで、飛くんを石階に押し倒すような格好にして(笑)、調べの首尾を問うマクに、
眉根を寄せつつ応えた飛くんは、ふと、マクに孫の恋について知恵を借りたいと言います。
それに返ってきたのは、相手の意地を叩き折ってやればいいと、実に強引なマクらしい答え(笑)。
更には、火付けの犯人は、媛媛と恋仲になるために、
彼女の縁談を全て破談にしたかった孫ではないかと辛辣なことも言い出します。
それに筋は通るとだけ応えた飛くんでしたが、事件の犯人が、祭礼が無事に済めば、
孫家の騒ぎも収まるだろうことを見越していたことも視野に入れて、改めて犯人像に思いを巡らすのでした。
一方、用意されていた縁談が全て破談になった媛媛は、病床の父に、従兄の明賢を婿にするように言われます。
ついに、婿を取ることがほぼ決まってしまい、家のため嫌だということもできない媛媛は、ひとり部屋で癇癪を起こして、
泣きながら寝入ってしまいますが、目を覚ました後、ひとりで屋敷を抜け出し、花路にいる孫に会いに行きます。
彼女が今度の事件について、何も知らされていないことを知った孫は、彼女に事件のことを話します。
その話から、蔵用の大きな箱に貼る紅い品札が火付けの現場で次々に見付かったことについて疑問を持った媛媛は、
密かに単独で調査に乗り出します。
そうして、店の引き出しに、紅い品札があることを発見し、次いで蔵に忍び込んで、
その箱にも紅い品札が貼られていることを確かめた彼女は、偶然そこにやってきた店の雇い人たちの話から、
今度の事件が、店を継ぎたい明賢が、媛媛と結婚する為に仕組んだものであることを知ってしまいます。
更に、蔵の扉の鍵を閉められ、閉じ込められてしまいますが、彼女は孫のことを想い、彼が語っていた、強くて、
優しくて、綺麗で、敵さえも最後には味方につけてしまうと言う花路の頭のことを考えて、自分を勇気付けるのでした。
花路のことばかりを話し、頭を褒めちぎる(笑)孫に、よく癇癪を起こしていた彼女でしたが、
話の内容はいつもきちんと聞いていたようです。
そして、やってきた美女比べの宴の当日。
飛くんもまた、孫家から買った灯油の品札が、黒い札で届けられていることに気付きますが、
生憎考える時間がなく、残る花路の仲間たちに、指図をしてから、大兄と共に、白龍屋敷の宴に加わる為、出掛けます。
・「花姫純情」名場面。
今回セレクトしたのは、宴の席で飛くんが、華やかな剣舞を見せる場面です。
『白龍』の側仕えに選ばれようと着飾った美女がたくさん集まり、次々とマクの前で特技を披露しますが、
彼女らの多くが、マクの美貌に圧倒されてしまい、いいところを見せられません(苦笑)。
そんな彼女らを見るのに、早々に飽きたマクは、一休みをさせて、花路に女性の好みを訊ねます。
羅漢は、見目はともかく潔いのが一番だと答え、孫もまた、
見掛けがどうであれ、自分らしくあろうとする人がいいと答えます。
孫の言葉に、媛媛への想いを読み取った飛くんは、今からでも彼女の元に行くよう密かに孫に勧めます。
それに、もう媛媛の婿に明賢が決まったことと彼女が気にしていた品札の色のことを、
孫から打ち明けられた飛くんは、マクの言葉を思い出し、明賢が犯人であることに気付きます。
すぐさま、羅漢と孫を孫家に走らせようとしますが、それを察したマクに止められてしまいます。
お前の好みを言えと、更に問われた飛くんは、答えの代わりに、また、
退席する羅漢と孫を見咎められないよう、剣舞の披露をしようと前へ出ます。
興味津々噂の花路の頭を身を乗り出して眺める宴の客たち。
「祭礼などで姿を見たという噂を聞いたことがあるけれど。
それにしても、百余名の猛者の束ね役があんなに細身だなんて」
「あら。髪が邪魔でよく見えないけれど、ずいぶん美しい姿をしているような……」
「『白龍』さまのおそばにああして寄り添うところが、
まるで神龍(シェンロン)の化身と、それに従う神仙のようだわ」(179頁)
つまり、マクと飛くんは似合いの夫婦のようだと♪(違う)
飛くんが、特技を披露した龍江街(ロンチャンチエ)の美女顔負けの見事な舞で、
客の目を奪っている間に、羅漢と孫は席を外します。
それにただひとり気付いたマクは、舞を終えて拝跪した飛くんに、
「花精に見とれるあいだに、してやられたぞ」(182頁)
と、戯言めいた文句を囁くのです(笑)。
花・精!!←ウルサイよ。
これだけでも、飛くんの美しさ、剣舞の見事さが分かろうというものです♪♪
マクって、揶揄混じりではあっても、結構、飛くんのことを手放しで褒めてるよね(笑)。
蔵に閉じ込められた媛媛はめげずに、外へ向かって大声で助けを求めます。
しかし、そこに現れたのは、明賢の仲間の男たちで、逃げ出そうとして捕まえられ、
派手に抵抗したところ、腹を立てて彼女を傷つけようとします。
そこに、孫が現れ、男たちの手から逃れた媛媛は、孫の無事を祈りながら駆け、途中立ち塞がった明賢も押しのけて、
後から追い付いてきた孫を率いるような形で、宴の途中の白龍屋敷の庭に駆け込みます。
服も髪もボロボロのまま、マクの美貌と、その隣にいる飛くんとふたり並んだ眩い姿に、
一瞬言葉を失くしてしまう媛媛でしたが、意を決して自分を側仕えとして召して欲しいとマクに願い出ます。
その申し出に驚く孫、嫌な予感にマクを止めようとする飛くんをそっちのけで、
マクは媛媛を側仕えとすることを宣言するのでした。
花炮の祭礼、そして、媛媛が側仕えとして上がる日に、飛くんは、東州茶房に預けられた彼女と、
改めて花路の頭と名乗った上で、少し話をします。
飛くんに、喧嘩の相手を味方に付ける方法を問い、ずっと肌身離さず身に付けていた守り袋の中に入れていた、
孫が青龍(チンロン)で、媛媛の贈り物として買った簪、その後、酒蔵荒らしの一味と間違われ、
捕らわれた(「龍は酔い痴れる」参照)際に、一部が欠け、
曲がってしまった銀の簪を挿して、茶房を出て行った彼女の姿に、飛くんは何かしらの決意を感じます。
そうして、すっかり諦め気分で仲間の元で、自棄酒を飲んでいる孫を、媛媛を迎えに行こうと強引に連れ出すのでした。
自分だって、マクとの間を媛媛に遮られるのは嫌だと言って(笑)。
孫もまた、心を決めて白龍屋敷に行くことにするのでした。
一方、マクの寝室に上がった媛媛は、勇気を振り絞って、マクに孫家を自分に継がせて欲しいと願い出ます。
婿にやらせるのではなく、自分の手で店を取り仕切りたいのだと、幼い頃からの願いを言い、更に、
火付けの犯人の明賢を、性根を正すために、暫くの間白龍屋敷で仕えさせてくれないかと頼みます。
それに、恋しい男を取り仕切れない代わりに、店を取り仕切るのかと嫌味を言われた媛媛は、
マクの前で初めて孫への想いを吐露してしまいます。
孫に我儘ばかりのつまらない女だと思われたくない、自分らしく、花路の頭には敵わなくても、
喧嘩の相手を味方に付けるくらいの気風のいい女になれるよう頑張るのだと、
泣きながら言ったところに、その飛くんがやってきます。
「散り落ちた白い花が気紛れを起こして窓辺で人の姿を借りたよう。」(230頁)に、
現れた飛くんは、媛媛に花路の仲間で上等の大兄である孫を力ずくで攫う気はないかと誘います。
飛くんの背後に孫の姿を見つけた媛媛は、マクの腕を振り解いて、待っていたわけではないのに、
「遅い」と思わず文句を言ってしまいながら、孫に駆け寄って抱き締めるのでした。
そうして、飛くんたちの計らいで、羅漢の棲家の古妓楼にふたりきりとなった孫と媛媛でしたが、
気恥ずかしさが先に立って、なかなか気持ちを伝え合うことができません(笑)。
しかし、緊張を紛らわせる為に、ひたすら喋り続ける媛媛に、意を決した孫が不器用な口付けをして、
ついに想いを打ち明けようというところで、不意に立ち上がった媛媛が、更にまくし立てるような勢いで喋りだしてしまいます。
慌てて落ち着いてと言う孫に、「落ち着いたらどうなってしまうか分からない」と、
媛媛が叫ぶところが何とも微笑ましいです(笑)。
それから、逃げるように妓楼を飛び出してしまった媛媛を追い掛けることもできずに取り残される孫が、
いかにも花路の男らしくて笑えます。
孫大兄、花路に居残り決定(笑)。
駆けてきた媛媛の姿を見て、孫は失敗したかと一瞬、飛くんたちは思いますが、彼女の顔色からして全くそうでもない様子で。
その後、現れた孫に泣き付かれ、それを励ました飛くんは、羅漢の言で、
マクが孫家の窮地を救うように取り計らってくれたことに気付かされます。
そうして、白龍屋敷に上がった飛くんは、待ち受けていたマクと、
想い合う者同士が将来を誓い合うという花炮の祭礼の夜を、まだ返してもらっていなかった翡翠の耳飾りを賭けて、
囲棋をしながら過ごすことになるのでした。
そうして、祭礼の後に発する予定の、財の相続などを取り決めた触書には、新たに、才ある者には男女を問わず、
商家などを継がせるとの文句が付け加えられたのでした。
今回はラブラブに収まったという感じで!
マクもかなり飛くんに甘々だったなという印象です(笑)。
まあ、たまにはこんな話もいいでしょう!
むしろ、姫をこれからもどんどん甘やかすが良いよ!!と私は思っておりますが(笑)。
そんな訳で、「花姫純情」れびゅはここまで。
お粗末さまでした(平伏)。
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