龍は酔い痴れる


四龍島シリーズ七作目は『龍は酔い痴れる』で御座います。
まずは表紙イラストにうっとり致しましょう♪
前作『縛める』ほどではないにしても、巻数を追うごとに色香を増していく飛(フェイ)くんに注目なのです!!
ストーリー的な目玉としては「青龍(チンロン)篇」の黒幕であるところの東の街の主、
『青龍』がついに顔出ししたことでしょうか?
個人的にはどうでもいいんですが(笑)、想像どおり、毒のある美貌の方です(怖恐ろしい感じの…)。
取り敢えず、恒例の折り返し引用から。


青龍(チンロン)・酒坊街から送られてきた酒甕の中にしびれ薬が混入されていた。
梅雪楼(メイシュエロウ)主人が被害に遭い、飛(フェイ)は犯人の意図を探るため、
孫(スン)を青龍へ向わせた。
その矢先、祥船(シャンチョアン)屋敷に出入りするマクシミリアンを目撃する。
不信感を覚える飛だったが、マクシミリアンが祥船の手配で青龍へ向ったのを知り、
自らも青龍行きの船にとび乗った!
いよいよ「青龍篇」クライマックス!
四龍(スーロン)島シリーズ7作目。

                                          (文庫折り返し部分より)


う〜ん、まあまあ実際の内容に則しているかな(笑)。
でも、まだ青龍篇はクライマックスじゃなくってよ(苦笑)。
花路(ホワルー)の頭(トウ)、つまり飛くんは首尾よく、
樹林房(シュリンファン)との商いの約束を得て、無事に花路へと戻って参りました。
その祝いの席で、頭に呑んで貰うため、花路一の妓楼、梅雪楼の主人は、
四龍島一の美酒を造る青龍市・酒坊街から酒を仕入れました。
しかし、その中に痺れ薬が入れられており、
祝いの席で偶然一瞬先にその酒に口を付けた梅雪楼主人自身が倒れてしまうのです。
幸か不幸か、混入されていた痺れ薬が、口に含んだだけで痺れを覚え、
吐き出してしまうきつい代物だったため、主人は命に別状はないものの、
暫くは口が利けない状態となってしまいます。
因縁の青龍市から来た酒甕の中に毒。
しかも、梅雪楼主人が仕入れた酒甕は二つ。
花路で開けられた以外のもう一つは、白龍屋敷へ届けていたのです。
更に、それらは青龍市と繋がりのある祥船の船で運ばれた酒。
もし、この酒が花路のみならず、白龍屋敷に治められることも犯人が承知していたとしたら……
何やら、青龍市或いは祥船の陰謀の匂いがぷんぷん致します。
そこで、飛くんは犯人の意図を探るために、青龍へ出向くことにするのですが、
始終走りっぱなし(笑)の彼を、花路の仲間たちが引き止めます。
代わりに花路の中での兄貴分であり、飛くんに心酔する孫が、代わりに青龍に出向くことになります。
実は、この孫の頭(飛くん)への心酔振りがすごいのですが(笑)、
それはまたの機会に詳しく語ることとして。
一方、この事件を機会に、飛くんは、青龍と繋がりのある祥船が纏める大船主組合が運んでいた、
花路向けの酒荷を全て、富浪(フーラン)に任せることに決め、
毒混入事件を引き合いに出して、祥船にそのことを了承させます。
その為、訪れた祥船店里(シャンチョアンティエンリー)にて、飛くんはマクシミリアンとばったり出会うのです。
マクは一体何を企み、敵とも言える祥船を訪れたのか。
孫を青龍へ送り出した後、その目的を知るため、白龍屋敷を訪れた飛くんでしたが、そこで既に、
マクが祥船の船で青龍へと向ったことを知り、間一髪でマクの乗った船に自らも飛び乗り、
青龍へと向うことになるのです。

・「龍は酔い痴れる」名場面

ああ、全部と言いたいわたくしです(笑)。
ん〜、でも取り敢えずは私が思わず、ふふ♪とほくそえんだ(?)場面を選んでみました。
先程、紹介した飛くんに心酔する孫ですが、彼はとある商家に世話になっておりまして、
昼はその家の手伝いをしているのです。
そして、目下その商家の一人娘で幼馴染みでもあるお嬢さんに片想い中。
孫は、いつもその勝気なお嬢さんに、我儘を言われ、振り回されています。
でも、お嬢さんに怒鳴られても、「花路の頭、花路の頭」と繰り返すことは止めないのよね……(笑)
今回は、そんな彼がお嬢さんに付き合って通りを歩いている時に、
飛くんとばったり会うという場面をセレクトです。
いつも通りの花路の頭大事の孫の発言に、怒ったお嬢さんが、
「一生、頭のお尻を追っかけてればいいんだわ」(笑)と言い放ち、駆け出したところで、
横からやってきた人とぶつかりそうになり、転びそうになるところを相手(飛くん)に助けられます。

「ええと……そう、東州茶房の……」
言いさすのを聞いて、こんどは孫が驚きに息を呑む。
水色の地に薄い模様が透ける涼しげな袍(パオ)を着こなして、長い髪はすっきりと背に束ねている姿。
とてもすぐには気づけなかった。
夜とはまるで印象が違う。
良家の子弟といってじゅうぶん通る、昼間の姿の飛であった。
「お買い物の帰りですか」
娘にあたりさわりのない挨拶を述べながら、孫のほうへ、ちら、とまなざしをよこす。
少々悪戯なその視線にあって、ますますものが言えなくなった孫だ。
話を交わすことなくすれ違って、飛の向っていくのが、船主店里街のほう。
後ろ姿を見送る孫の横から、娘がなにやら溜め息混じりに教えてくれる。
「東州茶房のご養子なのですって……きれいなかたよね。
このあいだお父さまを迎えに茶房を訪ねて、はじめて給仕に出てらっしゃるのを、見かけたの。
あの茶房のお客は、品のいい年寄りか文人たちばかりだから、街の娘の噂にものぼらないんでしょうね、きっと。
おまえと違って、色街の大牌楼なんかくぐったこともないのよ、孫」
色街通いとは無縁の風情、と頬を染めて見送る娘。
実はあれが花路の頭だと、口に出してしまうわけにいかず、仕方なく夏の空を仰いで、
孫は歯切れの悪い返事をぶつぶつとこぼす。
「はあ……お嬢さんの、おっしゃるとおりで……」

                                    (本文67〜68頁より)


花路の頭を知らないお嬢さんの発言に、言い返すことの出来ない孫の姿が笑みを誘います、ふふふ。
飛くんは品もあるのよ♪ということで。東州茶房の看板娘(?)な飛くんも素敵なのです!!
「夜とはまるで印象が違う」ってなんかときめき♪

昼の姿が良家の子弟のような品の良さなら、夜は一体どんな風にっ?(どきどき)と、
妄想を逞しくしてしまいたくなります!!(実際、夜は凛々しく、色っぽくなるのです♪)
こういう昼と夜とのギャップも飛くんの魅力である訳だね!うん!!

・「酔い痴れる」ベストオブイラスト!

四龍島を御存知の方は、大方予想がついているかと思われますが(笑)、この度セレクトしたのはこちら。

本文187頁のイラストでございます!

これはですね…飛くん、マクに押し倒されてますよ?!!(大喜)なイラストです♪
これは別に私がこういう系列のイラストが好きという訳ではなく(いや、嫌いじゃありませんが/笑)、
全てはイラスト担当の浅見さんの所為なのです!(言い訳がましい…)
このイラストを始めとして、私がセレクトしているイラストは全て、
線の細かさ、流麗さから明らかに力が入っているのが分かるのです!!
まあ、浅見さんは自称「○モ好き」だし(笑)、力が入るのも仕方ないかもね。

そんな浅見さんのイラスト、私は大好きです!(笑)
この度のイラストも、マクに繁みの中に引き摺りこまれ、
口を塞がれながら押し倒されてる飛くんの姿に釘付けです♪
地に拡がる髪の流れや、顰められた柳眉さえ艶っぽく……♪♪

…ストーリー的には、そんな煩悩してる場面じゃないのですが(苦笑)。
一足先に、今後花路の酒荷を運ぶことになった富浪の若頭領、燕(イェン)と共に青龍入りした孫は、
早速、毒入りの酒甕のことを探ります。
燕の取引先の挨拶回りと称して、酒甕が買われた店里、燕と共に「酔仙洞」へ出向いた孫は、店の者から、
青龍市酒坊街界隈で、最近酒蔵荒らしが出ていて、時折酒に毒を入れたりするのだと聞かされます。
さては、毒入りの酒はその酒蔵荒らしの仕業かと納得した孫。
しかし、実はその酒蔵荒らしは、食えない『青龍』の懐刀、楽海(ユエハイ)の自作自演で、
そのことを知る酔仙洞の男は、技とそのようなことを孫たちに言ったのです。
酒蔵荒らしをはびこらせた楽海、そして、『青龍』の思惑は明らかならずも、
そろそろ潮時だと思っていた楽海は、自分が雇った酒蔵荒らし一味を一網打尽にします。
その現場にちょうど孫たちがいたものだから、さあ大変。
孫は何とか、燕を水路に突き落とす形で逃がしたものの、自分は酒蔵荒らしの一味として捕まってしまいます。
見せしめとして街中で処刑されることになった一味の中に孫が。
何とか助かった燕から事情を聞かされた飛くんは、いてもたってもいられず、
気紛れを起こした(?)マクと共に、酒造荒らしが捕らえられている古い酒蔵へと様子見に向います。
しかし、見張りの中にあの手強い刺客、天狼(ティエンラン)がおり、
とてもその場で助け出すことが叶いません。
一方、捕まえた酒蔵荒らしの数が一人多いことを知った天狼は、数を合わせるために、
その場で一人頭数を減らすことにします(ひでえ…/汗)。
そうして、引きずり出されたのが孫。
咄嗟に無茶を承知で飛くんが飛び出そうとする寸前、マクが屋根の瓦に向って石を投げ、
敵がそれに気を取られた隙に逃げ出そうとした酒蔵荒らしの一人が、孫の代わりに天狼の刃に掛かりました。
取り敢えず、一晩の猶予が得られ、マクに礼を言う飛くん。
そんな飛くんにマクは、珍しく(?)孫を救い出す手伝いをしてやろうと言います。


どうだ、と横目で訊ねられて、飛は銀灰の双眸を見据える。
「代価は」
「そうだな……朱龍(チューロン)のつづきを」
正面に高楼街(カオロウチエ・青龍の色街及びそこを守る猛者たちの名)の男の蔭を見て、
やにわにマクシミリアンが腕をつかみにきた。
なにをと相手を咎めるまえに、そのまま繁みのなかへと引きずり込まれる。
「う……っ」
力ずくで口をふさがれて、身動きとれぬまま組み敷かれた。
「おいっ、いちゃつくなら、よそでやれっ、よそで!」
厳しい叱責と足音とが、もつれ合うかたわらを行き過ぎる。
「喘ぎ声を上げてみせないのか」
押しつけがましい美声の揶揄が、左の耳朶に熱かった。

                                   (本文186〜188頁より)


マクが言ってる「朱龍のつづき」とは、前作「縛める」で演じた濡れ場の続きということです!
しっかし、毎度思うけどマクってばホント、強引な上に(サドっ気があるとも言う…/笑)セクハラ男だな〜。
そんな旦那(マク)のやり方に慣れてきているような新妻(飛くん)。良いのか?!(笑)
しかし、旦那の意地の悪さはそれだけでは終わらなかった!!
マクの協力を得て、何とか孫を救い出すことに成功した飛くんは、後になって、
マクが単身、敵の巣窟の青龍屋敷へ出向いていったことを知り、後を追うべく急いでとって返します。
孫を助け出すまえ、代価を問うた飛くんに、マクが応えた「毒杯をあおげ」との言葉の意味に遅ればせながら気づく飛くん。
そうして、旦那を捕まえるべく青龍屋敷へと向う飛くんの独白。↓

「あんたはまるで、毒入りの美酒だ」(本文222頁)

全くもう、この子はどうしてこう恥ずかしい台詞を平気で言っちゃうのかね?!(大照)
それでいて、本人は無自覚なんだよ!!ある意味、飛くんも天然だよね、ホント……

そんな君を愛してる♪←馬鹿。
しかし、「毒入りの美酒」って凄いなあ…マクっぽいけど。
更に今回の事件の発端も毒入りの酒。それで、タイトルが「酔い痴れる」になる訳ですな!
流石、真堂さん!!(当たり前?/苦笑)

そして次回、ついに『青龍』との直接対決と相成るので御座います!!
楽しみだね!ハラハラだね!!
…というところで、『酔い痴れる』れびゅはここまで。
お付き合い有難う御座いました〜〜っ!!


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