龍は誘う―章題から見る四龍島―
湖水美人
これって、この巻から登場する絲恋(スーリェン)を指してるのかな。
白龍市の別荘地区、賓荘林(ピンチュアンリン)の近くにある西湖が話の舞台っちゅうことで。
一言で言えば、彼女の秘めたる恋を、飛くんが手助けする話?
ですがもちろん、飛くんラヴの私にとって、触れたいエピソード盛りだくさんです♪
初っ端から、前作登場の李が、すっかり飛くんに惚れ込んでしまっているのにニヤリ(笑)。
はたまた、茶房給仕の姿で、白龍屋敷を訪れた飛くんの姿を、マクが揶揄混じりに褒めたり、
飛くんがそんなマクを平手打ちにしたり、そんなふたりの様子を見たクレイが、
「あれが花路の姫君か」と手強い敵(?)に嘆いたり(笑)。
同じく前作で、死を遂げた翼人の弟子だという新たな青龍の刺客・天狼(ティエンラン)も登場。
『青龍』の右腕・老楽海(ラオユエハイ)もまた、新たな悪巧みを仕掛けてきます。
それは、マク父である大龍(ターロン)の、マク以外の隠し子騒動。
青龍が手を伸ばしている白龍の大船主・祥船(シャンチョアン)頭領の妾宅で、たまたま(?)出くわした楽海から、
噂としてその話を聞かされたマクは、面白がって(汗)噂の元であると聞かされた西湖へと自ら出向くのです。
勿論飛くんも一緒に、というか、人攫いのように無理やり強引に連れて行かれるのです(笑)。
その上、前作の夜花丹の毒がまだ抜け切らず、時折手足が痺れる身体を拘束されて、憤慨する飛くん、
目的地に着いたら、その真っ先に殴りつけてやる、とマクに文句を言うのですが、
ならばこの先一生この腕を離さずに置くかと返すマクの戯言が、脅迫めいた口説き文句のようで、またニヤリ。
…にしては、花嫁の扱いが乱暴に過ぎますが(苦笑)。
花嫁の方も威勢が良過ぎますが(笑)。
しかし、辿り着いた白龍屋敷の賓荘では、小虎の子を妊娠中の春華が静養がてらやってきており、
飛くんは歓迎されて、帰るに帰れなくなってしまうという…マクはしてやったりです(笑)。
名物(?)の温泉にもゆっくり浸かっちゃったりなんかしていたら(主にマクが)、早速事件発生。
春華が西湖で知り合った絲恋が賓荘にやってきて、顔を合わせたマクに、いきなり刃物を振り上げるのです。
牽牛織女
かの有名な彦星と織姫のことですね。
天の河に遮られた恋人たちを、大きな障害のある恋をしている一星(イーシン)と絲恋に重ね合わせています。
また同時に、もしも大龍の隠し子が事実だったとした場合、近くとも遠い海を隔てた本土へと帰るだろうマクと、
四龍島に残る飛くんのふたりにも重ね合わされています。
…っていうか、そうだよね!その筈だよね!!(誰にともなく確認)
問題の子は絲恋の息子で、その子を正統『白龍』として押し立てるよう青龍側に唆され、
マクを陥れる悪事の片棒を担ぐ羽目となった一星。
彼女の幸せのためと、彼はそんな行動に走るのですが、当の絲恋は自分の子が『白龍』になるのを望まず、
青龍の刺客・天狼のお蔭で捕らわれの身となったマクと飛くん、春華を救い出そうとします。
腹違いの兄妹であることを知らずに、一目で惹き合う恋をしたというふたりのそんなすれ違いが何とも切ないです。
絲恋は子持ち(つっても若いんですが/笑)とは思えない華やかな美女で、
その点は個人的に何とも思わないのですが(笑)、彼女の激しいまでの一途さは好印象。
例え、他の男から想われて、優しくされようとも、自分にとっての恋は、ただひとつだけ。
どんなに苦しくても、その形が醜く歪んでしまったとしても、たった一つの恋を大事に抱えていたいというところが。
報われぬ恋の辛さに耐え切れず、離れて遠くから彼女の幸せを願おうとする一星の気持ちも分からなくはないですが、
彼女の一途さの前ではちょっと意気地がなく思えてしまいます(苦笑)。
元々、あっちにふらふら、こっちにふらふら、という優柔不断さ、尻の軽さ(失礼)が、キライなものですから(笑)。
ここまで殆ど飛くんのことに触れておりませんが、ここからでございます!!(笑)
そういえば、飛くんも、マクから気が多いと時折詰られてますが、飛くんは違うのです!!
彼は老若男女問わず、誰に対しても優しいだけで、優柔不断ではないですから。
一度決意すれば、確固たる態度で臨んでいるし、
どちらも選ばない(或いはどちらも選ぶ)ことで生まれる苦しみや痛みを、全部自分自身で引き受けてる。
この話でも、一星に告げられた別れに、自らの命を絶とうとする絲恋を、飛くんは叱咤混じりに励まします。
実はそれはマクを失いそうになっている自分自身への叱咤でもあるのですが。
端から罪な出会いなんて無い。
手放したくないなら、周りからどんなに身勝手だと罵られようと、決して手放すなと。
で、飛くんが凄いと思うのは、相手が真に望んでいることを自然に見抜いて、背中を押すことが出来るということ。
それが、本当の優しさなんだろうなぁとしみじみと思います。
また、ここの章では、敵の要求に従い、本土へ帰る前に、一度、屋敷へ戻されることになったマクが、
捕らわれの飛くんの元にやってきて、口移しで(!)戒めを解く陶器の欠片を渡すというシーンがあります。
ふざけるなと怒る天狼がちょっと笑える(笑)。
海風(ハイフォン)
青龍の陰謀により、とうとう本土への船に乗ったマクを、飛くんが強引に連れ戻す件ですね。
絲恋は実は故老簫(ラオシャオ)の妾で、彼女の子は大龍の子ではなかったということも明らかに。
しかし、良くもまあ、あんなヒキガエルな爺の妾になんぞなったもんだ。
絲恋にとって、一星以外の男は誰であろうと皆同じなのでしょうが。
端から叶わぬ恋に、自分の身がどうなっても構わなくなってしまう捨て鉢な気持ちもあったのでしょうかね。
とにかく、子どもが母親似で本当に良かった!(笑)
自分では絲恋に幸せをやれないと言う一星に、彼女が望んでいるのは幸せではないと、言う飛くんの言葉がこれまた印象的です。
交し合う目に恨みつらみしかなかったとしても、それを幸せと想えば、想いを遂げたことになる…かぁ。
円満に結ばれることだけが想いを遂げる方法じゃないってことだね。うぅん、深いなあ…
何を幸せと思うかは人それぞれ。
しかし、このふたりの幸せの捉え方の違いは、真堂さんの描く男女の違いをも表してるのかな、とも思ったり。
何となく男性キャラは、目に見える具体的な幸せを思い描くのに対して、
女性キャラはより観念的な幸せを求めるという印象があります。
今回の件では、絲恋の方に肩入れしてはいますが、飛くんは双方の幸せの捕らえ方を理解している感じなんですよね。
やっぱ男でも女でもない姫だから?←妄想です。
まあ、それはさておき。
一星は通り一遍の幸せに目を奪われて、絲恋の本当の望みを読み違えていたんだね。
飛くんはそれを見抜いて肝心の男にババンと突きつけたという訳です、
そんな想いの遂げ方では、お前の方が堪えられないのかと男の弱気を詰る言葉と共に。
うん、カッコいい!!(これが一番言いたい/笑)
そして、そんな強気のままに、飛くん自身もマクを連れ戻しに向かうのです。
飛くんはマクを乗せた祥船の船を西海風の手を借りて無理やり止めるのですが、
その際、ちゃっかり飛くんに腕を差し伸べて、自分の舟に乗せちゃう李が、
さり気ないチェックポイントです♪←私だけのチェックポイント?(笑)
海風をも味方にした強情な織女(マク談/笑)に引き止められて、マクは再び四龍島へ。
んが、その裏では、息子の一星が青龍に与したが故に、祥船頭領が青龍と結ぶことを決めてしまうのでした。
夏星 遥か
七夕伝説をモチーフとしたこの話にはピッタリのタイトルですね!
しっとりした恋物語を目指したのに、アクションいっぱいになってしまったと、
真堂さんは後書きで嘆いておられましたが(笑)、大丈夫!
ちゃんと切なく美しい、一抹の希望をも残した恋物語になっておりますよ!!
事件解決後、一星は飛くんの誘いを受けて、花路へ。
絲恋は『白龍』の跡継ぎとなった子の母親として、主亡き老簫館の新たな女主人となります。
結局別れ別れになったふたりですが、今は言葉にしなくても互いの想いを確信し合っている様子。
叶わなくとも、絲恋を想い、守りたいと望む一星と、例え、死の間際であっても、
互いに想いを伝え合える日が来ることを望む絲恋の姿が、切なくも美しいです。
マクが「叶わぬ望みを追っているうちが花」なんて、ひねたことを言っておりますが、
叶わぬ恋のほうが美しいというのはあるかもしれませんねぇ…(しみじみ)
飛くんには、めでたく恋を実らせて幸せになってほしいですけどね!!(いつ彼が恋したことに?/笑)
しかし、飛くんと白龍の街の苦難はこれから。
息子と娘を白龍屋敷に救われることとなった祥船頭領は、今更お屋敷に従う気はないと決別宣言をし、
絲恋の同腹の兄で、現在祥船の跡継ぎとなっている千雲も、天狼と密かに連絡を取り、青龍と与しようとしている様子。
嵐の前の静けさのような雰囲気もあります。

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