龍は雲にひそむ
四龍(スーロン)島シリーズ第四作目は『龍は雲にひそむ』です。
今回はそれ程妄想溢れるタイトルではありません(笑)。
しかし、その内容は…ふふふふふふふふ……(不気味な含み笑い)
そこの辺りははおいおい語っていくとして、まず、あらすじ紹介を。
いつものごとく、引用部分は黒です。
『大龍(ターロン)』の死後、白龍(バイロン)市では大船主・祥船(シャンチョアン)が木材の取引を独占していた。
彼らの勢力拡大を阻止するため、
マクシミリアンはかつて親交があった朱龍(チューロン)市の材木商・樹林房(シュリンファン)を訪ねることにする。
しかし、ちょうどそのころ白龍市内で幽鬼騒動がもちあがった。
またも背後に『青龍(チンロン)』がいると見た飛(フェイ)たちは、
騒動の黒幕を探しはじめるが、次第に意外な真相が明らかになり……。
四龍(スーロン)島シリーズ第4弾!
(文庫折り返し部分より)
しかし、どうしてこういったあらすじは、本編と微妙に違うニュアンスを伝えるのだろう……
いや、間違ってもいないのだけど…(苦笑)
ちょうどこの時期は、夏の辟邪の祭礼が間近。
朱龍の辟邪の祭礼は殊更華やかだ、ということで。
祭礼見物にかこつけて、『白龍』に朱龍市へ出向いて今は商いから退いている材木商・樹林房と繋ぎを付けて貰い、
祥船(シャンチョアン)の専横を喰い止めたいとの意向は、実は執事の万里(ワンリー)を初めとした白龍屋敷のものなのです。
肝心のマクは相変わらず、やる気ナッシング。
更に、今は隠遁中の樹林房主人が、特に『大龍』と個人的に深い親交があったと知っているマクは、
大龍の忌日に廟に供える花籠を持ってきた樹林房の使いが来たときも、雲隠れ。
朱龍市を訪れる気はさらさらないような様子。
でも、飛くんには忙しくて、朱龍の祭礼にもいけないと零したりもして、いつもの天邪鬼振りを発揮です(笑)。
ところが、万が一にでもマクが朱龍に赴くことがない様にする為か、幽鬼騒動が持ち上がるのです。
マクの叔父、故老蕭館で鬼火を見たと人力車の車夫に訴えられ、飛くんは半信半疑、
マクは面白半分で車夫に付き合い、その界隈へと出向きます。
以下、絶対に鬼火を見たと主張する車夫と揉めていた花路のところにマク登場、の当たりの引用です。
「夜の散歩の誘いにきたぞ、花路」
人をくった微笑で、飛の正面。
(中略)
腕をつかむしなやかな手指を、即座に飛はふり払う。
「あんたの散歩のつきあいとやらはごめんだが、行く先はどうやら同じらしい。
俥はひとつ。悪ふざけはなしと約束するなら、となりに乗っても文句は言わない」
「ほう。いままでわたしが、悪ふざけなどをしたことがあったか」
「悪ふざけをしなかったことがあったかと、こちらが訊きたい」
飛の詰る口調に、マクシミリアンが小気味よく笑い声をたてる。
「信用がないな、花路。
わたしはそれほど手に負えない性悪ではない。
まんがいちその細腰が抜けて、一歩も動けなくなったときには、家まできちんと送り届けてやる。
そのくらいの優しさは、持ち合わせているぞ」
「あんたが腰を抜かしたら、暗い石畳に放り出して帰ってやる、『白龍』。
少しはあたまが冷えて、懲りるだろう」
(本文76頁〜77頁より)
飛くん、細腰発覚。(↑でも、大文字で強調してみました。/笑)
いや、以前から細身だとか、首が細いとか、肌綺麗とか色々言われていて、それでも充分嬉しかったのですが、
細腰!細腰ときたよ!!喜びのあまり強調しまくりです(笑)。
しかし、マク……↑の会話でわざわざ「細腰」と言うとは…かなり、細腰好きだな?(人のこと言えません。/苦笑)
マクの戯言に、「放り出して帰る」と容赦なく言い返す飛くんがナイスです(笑)。
あ、今更(汗)気付いたのですが、マクは飛くんのことを名前で呼ぶことはなく(この時点ではね。)、
「花路」と呼んでます。
マクが「花路」と言うときは、大抵飛くんを指してます。
ごくたま〜に、色街のことだったり、そこにいる若者たちのことだったり…
何だかんだ言いつつ、結局マクは飛くんのことしか見ていないので、そうなるのでしょうね(笑)。
まあ、そんなこんなで、やっぱり俥の中で悪戯(?)されつつ、出向いた先で飛くんたちは、ついに鬼火を目撃します。
そして、その場にいた女性から故老蕭の幽鬼を見たのだと訴えられるのです。
更に、飛くんたち花路が本格的な調べを始めようとした最中に、
今度は街の到る所で小さな火事騒ぎが起き、ついには、取り壊し中の阿片窟に火が付けられ、
ちょうどその場にいた万里が大火傷を負ってしまうのです。
その万里も老蕭の姿を見たと言い…
飛くんたちは、これらの騒動を本物の幽鬼ではなく、阿片窟残党の仕業と予想します。
街中で火をつけた賊を見失った場所が、素封家の屋敷が立ち並ぶ龍江街(ロンチャンチエ)の手前であったことから、
老蕭時代に彼らと関わりのあった大船主、特に祥船が匿っているのではないか、とマクは言います。
あの狡猾な祥船頭領がこんな騒ぎを起こすのが解せないと思いつつも、飛くんは祥船屋敷に探りを入れます。
・「龍は雲にひそむ」名場面
またも、迷いつつ、葉柳が選んだ名場面はこちら!
幽鬼騒動の黒幕と読んだ祥船屋敷に探りを入れるため、飛くんは花路での右腕、羅漢(ルオハン)と共に、
祥船を訪れる『白龍』の供として、屋敷に潜入します。
上手く屋敷の中へ潜入することに成功した二人は、二手に分かれて屋敷奥へと進んでいきます。
飛くんは途中で見つけた祥船の上着を借り、背に髪を束ねて、店に出入りの商人見習を装います。
すると、出くわした男に目下の使用人と間違われ、
急の来客(『白龍』のことです。)への茶の準備を手伝わされるのです。
その男からさり気なく祥船のことを訊き出す飛くん。
「おまえも、祥船でのし上がるつもりがあるなら、帆の操り方よりも、数の勘定を覚えたほうが、
道は早いぜ」
どん、と乱暴に背を突かれて、飛は茶碗をとり落としかけた。
おっと、と慌てて助ける男と、間近で見合うはめになる。
「あれ?おまえ……別嬪だなぁ、おい」
とたんに目の色を変えた男の腹へ、問答無用とばかりに、飛は一発拳を見舞った。
「あんたは、口のききかたと、場所がらをわきまえることを覚えて、せいぜい出世してくれ」
捨て台詞を吐く飛の腰から、ずるり、と男の手がはがれて落ちる。
(本文130〜131頁より)
何だか、また誰も取り上げないところを名場面にしておりますね(笑)。
しかし、この場面が私的にヒットだったのです。
飛くんは男も放っておかない別嬪さんなのです♪
しかし、名前もないこの男、既に飛くんの腰に手を回しているとは、意外に手が早いですな(笑)。
そんな無体な真似をする男を拳一つで黙らせる飛くんが素敵です!!
さて、この祥船の男、別の場面でも出てきます(笑)。
騒ぎに乗じて敵を油断させ、阿片窟残党の隠れ家を突き止め、あわよくば一網打尽にするために、
マクは辟邪の祭礼を行います。
飛くんは、何かことがあれば動けるよう、仲間に指示を下した後、
花路の頭としてマクと共に輿に乗り、道行く人に邪気を祓う桃の枝を触れさせたり、
辟邪の符咒を渡したりしていました。
そこで、例の男が幽鬼にたぶらかされたとマクに訴え出るのです。
その内容は「めっぽう艶っぽい新入り」に親切に仕事の手ほどきをしていたら、
急に気を失ってしまったというもの。
そして、花路の頭にも聞いて貰おうと隣を見た男は、
「めっぽう艶っぽい新入り」本人を目の前に思わず絶句(笑)。
「艶っぽい新入りが、どうしたと?」と、飛くんはその男の額にべったりと符を貼り付けてやるのです(笑)。
・「ひそむ」ベストオブイラスト!
さてさて、今回のベストオブイラストは、もうこれしかないでしょう!の
本文237頁のイラストです!!
このイラストを初めて見たときは、思わず身悶えてしまいました!!
なな…なんと艶っぽいイラストであることか!!!(興奮気味)
…場面といたしましては、物語のラスト近く。
何とか阿片窟残党の隠れ家を見つけ出し、彼らを叩いた花路。
しかし、突如現れた青龍の刺客、天狼(ティエンラン)に邪魔され、肝心のリーダー格の男を初めとした数人を逃してしまいます。
さらに飛くんはそのリーダー格の男、蝎子(シエズ)と争った折に、脇腹に傷を負ってしまいます。
この戦いの場面も、蝎子が飛くんにセクハラ紛いの発言をしていて(?)、結構好きなんですが。
あ、あと、祭礼の衣装のままで辟邪の剣を振るう飛くんのイラストも♪
しかし、まあ、それは置いておいて。
一応は阿片窟残党の殆どを捕らえた飛くんたちは、そのまま黒幕と睨んだ祥船へと乗り込みます。
しかし、祥船頭領、高浪(カオラン)はその事実を否定します。
その声音に嘘を感じなかった飛くんは、ふとした切っ掛けで遂に、
天狼と結んで騒ぎを起こしたのが、前回登場しました祥船の跡取り、千雲(チェンユン)であると気付くのです。
彼は頭領にも隠して単独で、天狼と手を結び、祥船頭領の妾宅を拠点に、
阿片窟残党を集めて、騒ぎを起こしていたのです。
物静かで思慮深そうな彼が何故、そんなことをしたのか、明らかになるのはまだ先の話。
また、祥船跡取りの仕業と気付くと同時に、飛くんはマクとのやりとりも思い出し、
この一連の騒動を引き起こすきっかけを、技と作ったのがマクであることにも気付くのです。
そして、マクがかき乱そうとしているのは、街そのものではなく、街を守ろうとする飛くんの心だったことも。
白龍屋敷に乗り込んだ飛くんは、そのことでマクを激しく責め立てます。
しかし、マクは全く堪えた様子がありません。
飛くんが怒りに任せて、頬を打っても、「次は右の頬をさし出そうか」と笑って言う始末。
「言ったはずだぞ、花路。わたしを退屈させるな、と」
「ふざけるな。街に火の手が幾つ上がったと思っている。
紛い物の鬼火や、馬鹿げた老蕭の幽鬼のおかげで、いったい幾人が怯え暮らしたと思っているんだ」
激しく責めれば、返ってくるのが、つくり笑いひとつ。
「月が、明るい」
と、かたわらの卓子に置かれた洋灯を、吹き消された。
「夜を眺めるには、月光でじゅうぶん。そう思うだろう……龍玉」
窓を背にして、マクシミリアンに追いつめられる。
(中略)
ゆっくりと、マクシミリアンの手が、包帯越しに脇腹の傷に触れてくる。
(中略/笑)
いま少しで窓から落ちるほどに、迫られた。
銀灰の瞳を仰いで、飛は身を反らす。
「今夜は抗わないのか、花路」
「抗いたくとも、あんたが傷に触れている」
身じろぐ肩に、月の光。
(中略/苦笑)
脇の傷ごと、やにわに背中をかき抱かれた。
「は……ッ」
半身を揺さぶる痛みのせいで、わずかな後悔を、たぐりそこねる。
あの心やさしげな祥船の跡取りが、いったいなぜ……。
「で、勝負のおちは、どこだと?」
のけぞって、銀の髪の向こうに月を見上げた。
雲の切れ間に、甘く溶けるその色。
(本文235頁〜238頁より)
こっ、この!!窓際で飛くんがマクに抱かれている場面がイラストになっているのです!!
冷たく、しかし鮮やかに微笑むマクの腕の中で、触れられた傷の痛みにのけぞる飛くんの横顔がもう!
苦しげにやや伏せられた長い睫といい、艶やかに乱れる黒髪といい……っっ!!
い、いけません!いけません!!←?
これは犯罪的なほどの色っぽさです!!!
今拝見しても、狂喜乱舞です♪(おいおい…/苦笑)
そのあまりに艶っぽい姿に味を占めたか、この頃からマクは、飛くんに対してソフトSMとなります(笑)。
「飛くんをいじめるのは許さん!」とマクに対して思いつつも、
こんな艶っぽい姿を見せられては、マクもついついいじめてしまうんだろうなあ、
と今になって思います(笑)。
まあ、あの人はでっかい子供ですからね。
好きな子ほどいじめるんです(笑)。
いじめ方が子供のレベルにおさまってませんけど(何せ、街全体を巻き込んでだし。/汗)。
…まあ、それはさておき。
今回の話を切っ掛けとして、マクはますますいけず振りを発揮して、街を乱し、飛くんの心を乱します。
飛くんはマクに対して、徐々に怒りを募らせながらも、強く惹かれる、相反する感情を抱えるようになるのです。
…と、いう訳で、今回はこれでいい加減締めましょう(苦笑)。
ではまた次回。
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