龍は戯れる


四龍島シリーズ八作目は『龍は戯れる』です。
小刀を手に、凛々しくも美しく佇む飛くんと、
その後ろで企み笑いをするマクが目印の表紙です(のっけから差をつける女…)。
まずはあらすじ紹介。


マクシミリアンを追って青龍(チンロン)屋敷までやってきた飛(フェイ)。
酔熊(ツォイション)という男の助けを借りて首尾よく屋敷に潜り込むが、
『青龍』の不穏な噂に警戒心を覚えていた。
屋敷に単身のりこんだマクシミリアンは、『青龍』麗杏(リーシン)に、
表向き客人としてもてなしを受ける。
宴席でまたも酔ったふりをしたマクシミリアンは、
一同が油断した隙に麗杏の偏愛する姉の雪蘭(シュエラン)を誘惑するが…!?
緊迫の四龍島シリーズ第8弾!

                                          (文庫折り返し部分より)


う〜ん、マクがたらしの悪みたいだ……間違ってもいないけど。
しかし、立ち向かう『青龍』麗杏が、それはきっついお人なので、バランス的にはいい感じ。
そんな二人に挟まれてしまうことになる飛くんは、
本当に災難です、よよよ…(作者の真堂さんにも言われてた/笑)
物見遊山の途中で、青龍屋敷まで面白半分に出向いてしまったマクをすぐさま追った飛くん。
しかし、仮にも街の主の屋敷。
そうそう簡単に忍び込めるわけもなく。
そこで、飛くんは『青龍』の側近でありながら、その実直さゆえに、
『青龍』の企みを知らない、大酒庁(ターチュウティン)長老、文海を頼ることにします。
しかし、目当ての相手が留守で会うことが叶いません。
彼が戻るのを待つことにした飛くんは、数人の男たちに袋叩きにされていた酔っ払い、
酔熊を助けることとなります。
彼は助けた早々、飛くんを「別嬪さん」と呼び、
木の上の酒瓶を取ってくれるよう頼む、飄々とした髭面の男でした。
しかしながら、肩に青龍の色街、高楼街(カオロウチエ)の刺青のある、
また文海とも顔馴染であると言う彼を、只者ではないと見抜いた飛くんは、彼に
いちかばちかで、青龍屋敷へ入る為の手助けを頼むのでした。
「酒瓶一つと青龍屋敷とでは割が合わない」と酔熊の酒の相手をすることになった飛くんは、
酒坊街の端の界隈で、酒楼(チュウロウ)を営む笑鈴(シャオリン)という女性に引き合わせられます。
先代『青龍』に妾として攫われ、青龍屋敷に閉じ込められていたことがある彼女から、
飛くんは屋敷内部の造りを教えて貰うと共に、当代『青龍』麗杏とその双子の姉、
雪蘭に気を付けるよう忠告を受けます。
…この麗杏、双子は不吉だから引き離そうと先代に進言した身内の喉を、
寝ている間に掻き切ったっていうんだから、恐い恐い。

更に、酒坊街の建て増しをしているという話も聞き、
横流しされた朱龍(チューロン)樹林房(シュリンファン)の木材が、
ここで使われているのかと一瞬考えた飛くんでしたが、
槌の音がする割には作業が進んでいないとの笑鈴の文句に、引っ掛かりを憶えます。
酒坊街建て増しは実はカモフラージュで、朱龍の上質の木材は、
何か別のことに使われているのでは…ってことよね!!不穏です!

そして、酒楼を出て行く際に、笑鈴に迷惑が掛からぬよう、
彼女から貰った青龍屋敷内部の様子を頭に叩き込んだ上で、
描いて貰った地図を処分した飛くんの漢前ぶりに、またもメロメロ♪

か〜っこいいなあ、もう!!(ツボ)
関係ないけど、酔熊、ビジュアル的にはそれほどでもないんですが、結構好きです。
だって、出会って以降、飛くんをずっと「別嬪さん」って呼んでるのよ♪(そんな理由か!!)
美女(飛くん♪)と野獣(酔熊…いや、熊だから/笑)というのもなかなか…←?
…飛くん、この酔熊からも「細腰」って言われてました♪
ホント、マクを始め、色んな男(!)から言われてるよね……(笑)
四龍島の男は細腰好き。多分、真堂さんも好き。私も好き…♪

えー…お話戻しまして、更に飛くんは、酔熊の口利きで、大酒庁が定期的に酒坊街の酒を、
青龍屋敷に納める為の荷運びとして駆り出される高楼街連中に混じる形で、
屋敷に乗り込むことに成功するのです。
一方、マクはもてなしの宴で、『青龍』の姉、雪蘭と引き合わされます。
そこで、更に彼女がお気に入りだという月琴の奏者として現れた女性が、
夏に朱龍で知り合った樹林房の身内、玲泉(リンチュアン)であることにマクは気付きます…
というか、『青龍』がそうと気付くよう仄めかします。
飛くんの出生の秘密の鍵を握るらしき玲泉。
彼女は、目が見えない身だというのに、ひとりで飛くんに会いに白龍へ向う途中、
親切ぶった青龍の刺客、天狼(ティエンラン)に騙されて、
『青龍』の姉姫の住まう花園(ホワユアン)に連れられて来ていたのでした。
そこで、マクは宴席で酔いつぶれた振りをし、
呆れた『青龍』たちが彼を花園に残して去っていった後、行動を開始します。
マクを、主、雪蘭の結婚相手に…と期待する侍女、美芳(メイファン)の手引きで雪蘭の部屋へ訪れるマク。
そこで、マクは『縛める』で飛くんが滝壺に投げ捨てた翡翠の耳飾りが、雪蘭の手にあることも知るのです。
…で、マクは雪蘭を口説くんですが……
もう、

「ぎゃ〜、何しやがんだ、お前!この浮気者がッッ!!」と叫びたくなる具合で……
しかし、雪蘭も弟、麗杏に負けず劣らず変わった姫なので、
そうそう男女の色恋には発展しません(マク飛ファンも安心?/笑)。
まあ、「綺麗なもの」好きの彼女に随分気に入られたようなので、マクとしては成功なんだろうな。
結局は、『青龍』の掌中の珠の気をひくことで、奴を煽り立てるのが目的だからねえ…
あとは飛くんを妬かせて、気を引きたいっていうのもあるね!きっとだね!!(笑)
しかし、アンタはいつもやり過ぎです!!
当然、あまりに分かりにく過ぎる愛情表現(?)に、飛くんはこれから混乱していくことになるのです(苦笑)。

・「龍は戯れる」名場面

この度も(?)、あまりピックアップされないであろう場面にしましょう!(笑)
酒甕運びとして、高楼街に混じって、何とか青龍屋敷門内に侵入を果たした飛くん。
しかし、マクがいる筈の客房は屋敷のもっと奥です。
新しい酒を納めた代わりに古い酒を振舞われて、酔い騒ぐ高楼街の一人に、
酒を持ってくるように言われた飛くんは、そこにあった酒甕の櫃の中に潜んで、
屋敷奥に入ることを思いつきます。

「まったく、苦労をさせてくれる……」
ひとりごちつつ櫃の重い蓋を開け、なかに残る二つ三つの甕のあいだへ、すばやくからだを入れた。
そこへ、
「なにしてやがるんだ……新入り」
酔いつぶれて動けまいと思っていた高楼街(カオロウチエ)が、ふらふらと千鳥足で寄ってくるではないか。
「なんだ、おまえ。よく見りゃあ、蓮仙楼(リェンシェンロウ)の男娼みてえなきれいな顔だなあ。
ちょっと狭いが、俺とこんなかで愉しもうって気か」
赤い顔を近づけてくる男のくびの根を、飛はやにわに片手でつかみ、
「せっかくの申し出だが、俥といい櫃のなかといい、狭いところは好みじゃない」
ぐい、と引き寄せざま相手の腹へ拳をたたき込めば、情けないうめき声をひとつもらして、
男はあえなく白目をむく。

                                   (本文132〜133頁より)


全く、手強くて容赦ないお姫さまね、飛くんってば♪
飛くんにちょっかいを掛けた男は災難です…というか、酒の所為なのかどうなのか知らないけど、
そんなカッコ悪い様で、飛くんの相手になろうったって無理よ?(笑)
いい気になり過ぎ。←手厳しい。
ちなみに蓮仙楼とは、青龍の色街、高楼街にある有名な男娼を集めた妓楼のことです。
ええっと…ここで私が何を言いたいのかというと、

飛くんは通りすがりの男の気まで引いてしまう美貌をお持ちなのよ!!
ということです♪
…それだけです(苦)。

・「戯れる」ベストオブイラスト!

ああ、どうしよう…このイラストをピックアップしたら、絶対変人だと思われる……(何を今更)
でもでも、どう見ても、一番リキ入っているイラストだし……
…ええいっ、迷ってなどいられません!(?)
これにしてしまいますっっ!!

本文185頁のイラストですっ!!

飛くんが『青龍』に折檻されているイラスト……(ああっ、逃げないでっ!!)
そして、その様子を愉しそうに眺めるマク。
うぬぅ…おのれ、やはり、Sだな!!(笑)
…しかも、飛くん、いじめられてる姿が艶っぽいのは不味いでしょ!!
マクも悦んじゃうでしょ!!私も思わずクラクラとっ…!!←危ない。

何とか、青龍屋敷奥まで潜入することの出来た飛くんは、すぐにマクを捕まえることが出来ます。
しかし、もう少しのところで、『青龍』が現れ、そのとき、彼を連れ出すことは叶いませんでした。
身を隠す間際に、ここに玲泉がいることを聞かされ、驚く飛くん。
乱れた心地のまま、夜を待ち、マクと約し、玲泉がいるという花園へと向います。
しかし、玲泉を見付け、声を掛ける寸前に、天狼に邪魔をされ、飛くんは敵方に捕まってしまいます。
黒針(ヘイシン)という術により、一時的に身体の自由を失った飛くんは縛られ、
花園の地下にある牢房(ラオファン)で目覚めます。
そこに現れた『青龍』麗杏。
マクが姉の雪蘭にちょっかいを掛けたことを知り、憤る彼は、動けない飛くんを短刀で嬲りながら(汗)、
母が父の妾を葬る為にこの牢房を作ったこと、自分が傷付けたり、葬ったりした人々のこと、
そして、彼の父、先代『青龍』を葬ったこと、白龍を憎む理由までも教えて聞かせます。
……彼の静かな狂気を孕んだ言動には背筋が寒くなるものがあります(怯)。
そこに、マクが登場。


姿を見せるのが案の定、呆れた調子でつぶやいてみせる西の街の主で、
「秘密めいた地下の部屋で、いったいなんの愉しみのさいちゅうかと思えば」
「待っていたよ、『白龍』。花園(ホアユアン)の罠に、めずらしい犬がかかってね。
かねて噂に聞いていた西の主どのの飼い犬に、吠える声が似ているようなので、
わざわざご足労を願ったわけだけれど……」
(中略)
短刀の刃を飛のくびに押し当ててよこしながら、
「大事な花園を荒らしてくれた犬を無傷で放してやる気は、あいにく少しばかりもなくてね。
ただ、この犬のどこが気に入っているのかと、あなたに訊ねておきたかったのだよ、『白龍』。
目か……くちびるか……くびすじか……胸か……それとも、もっとほかのところ?
この掌中の珠のどのあたりを、いちばん愛おしく思っている?」
返答しだいで刃の向く先が変わる。
だから教えてくれないかな、と促す相手をまえに、マクシミリアンはさして困ったそぶりも見せずに、
「どこも、かしこも」
さらりとそう言ってのけた。
「どこをと問われても応えようがない。仕置きをするのなら、好きなところにすればいい。
すでに少々の傷はあるはずだ。なんなら調べてみるといい」
「傷がついても、かまわないと?」
「傷があるのは、嫌いではない」
「ひねくれた飼い主だね、あなたは。目のまえで、この犬が鳴き叫んでも平気?」
その問いに、むしろ愉しいくらいだと嘯くマクシミリアンを、刺のあるまなざしで仰ぐ『青龍』だ。
それならば、と短刀の刃が飛のくびすじを這い、そこからまたたくまに血が滲む。
「つ……ッ」
「ほら、苦痛で顔が歪んでいるよ。これを見ても、つらく思わないのかい」
ぐい、と『青龍』に手荒に顎をつかまれたはずみで、飛は口のなかを噛み切った。
生温かい血を喉に飲んで、のけぞったまま堪えきれずにむせる。

                                   (本文181〜183頁より)

…と、この後も『青龍』は飛くんを痛めつける訳ですが。
ううっ…痛いよう、可哀想だよう……(泣)『青龍』が恐いよう…(怯)
マクっ!にやにやしてるんじゃないっ!!(怒)
…などと、飛くんの艶っぽさにどきどきしつつも、思ってしまう訳であります……
しかし、『青龍』に飛くんの何処を気に入っているかを問われて、
「どこもかしこも」と恥ずかしげもなく、応えるマクに、ちょっぴりにやり♪
傷が付くのを悦んでるのは、趣味が悪いですが。まあ、マクだからね!!(?)
命乞いさえしないマクに期待を裏切られた『青龍』は、飛くんをそのまま牢房に閉じ込めます。

その後、マクは雪蘭を上手く唆し、飛くんを牢房から出す手助けをさせるのです。
どうにか、玲泉と再会した飛くん。
再会に感動しつつ、何事かを飛くんに伝えようとする玲泉。
しかし、『白龍』の名を聞いた彼女は、不自然な動揺を見せます。
更に、ここが青龍屋敷であることを知らされ、混乱に陥ってしまった彼女を、
飛くんはどうにか連れ出そうとしますが、それを他ならぬマクが押し止め、飛くんに囁きます。

「この女はお前の母親だ」と……
また、「憎しみと怒りとをその胸に溜めろ」と。

混乱する飛くんの前に、天狼始め、敵の手勢が現れ、一気にピンチに。
しかし、遅ればせながらも、青龍屋敷にマクを迎えるために訪れた白龍屋敷執事、
万里(ワンリー)に付き従ってきていた飛の右腕、羅漢(ルオハン)が加勢に駆け付けます。
そこで、形勢不利を悟った天狼が、玲泉を攫おうとし、
すかさず追い縋ろうとする飛くんを、再びマクが力ずくで、押し止めます。
とうとう、成す術もなく、連れ去られる玲泉を見送るしかできなかった飛くん。
「俺に何をさせたい」と、怒りのあまり、我を忘れた飛くんは、
手にした長刀をマクに投げ付けてしまうのでした(もちろん、マクの背後の木に向ってですが)。
これから飛くんはますます、精神的に追い詰められていきます(涙)。
一方、『青龍』も大事にしていた姉をマクに誑かされ、本気で白龍を潰しに掛かります。
これはマクが目論んでいた展開だったのですが、奴がその先に何を見、望んでいるのかは、
この時点では謎。飛くんファンは、

あ゛〜〜っ!!腹の立つ!!!(怒)
という気持ちになること請け合い(苦笑)。
ついに、クライマックスへ向けてエンジンが掛かった青龍篇。
飛くんの精神状態を案じつつ、次回へ!!!
…と、この度も長々と語ってしまいました(汗)。
お付き合いくださった皆様、お疲れさまでした!!


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