龍は闇に堕つ

シリーズ後半戦半ばのクライマックスとなる四龍(スーロン)島シリーズ十九冊目は『龍は闇に堕(お)つ』。
今までの展開から予想済みではありますが、お先真っ暗救いのないタイトルです(汗)。
しかし、表紙は逆に白い背景で、
手元に淡い光を放つ(?)幾枚もの羽を纏らわせた小さい(ロングショット…?)マクの後ろに、
自らの右肩を左手で抑えるようにして背を向けた大きい(アップショット!/笑)飛(フェイ)くんが、
目を伏せて仰のいているという構図になってます。
…飛くんの横顔が何とも儚げです!
まるで、悲劇のヒロインのような…(ヒーローと言え/笑)でもあながち間違いでもないでせう。
彼の待遇とか見てると、どう見てもヒーローというよりヒロイン、姫!!
私の持つ強力な色眼鏡効果かもしれませんが(苦笑)。
こうして見ると、マクも何だか寂しげに見えます。

飛の出自を知った羅漢(ルオハン)たちは、マクシミリアンを廃し次期『白龍(バイロン)』の座に就くよう飛に迫った。
急進派の羅漢と、飛に花路(ホワルー)離脱を勧める葉林(ユエリン)とが対立し、仲間たちの間でも争いが起きる。
守りたいと願っていたものを自らの手で壊していくことに耐えられず、
追い詰められた飛は、ついにある決意を固め、白龍屋敷へ乗り込んでいくことに……。
激動の四龍島シリーズ、ついにクライマックスへ!

                                                      (文庫折り返し部分より)

うむ、そうなんです!(何が)
当初は、実際の印象とちょっとずれた文庫折り返しのあらすじ紹介でしたが、だんだん的を得てくるようになったなと。
じゃあ、私が今までやってた更に細かくあらすじを追い掛けるようなレビューなんて必要ないじゃん?
と言われたらそれまでですが(汗)、やっぱり語りたいのでやらせて下さい(笑)。
前作『落陽を咬む』で、飛くんを気絶させた花路のおバカコンビ、
羅漢と孫(スン)は、何としても飛くんを傍に引き留めたいが為に、飛くんの手を縛り上げ、寝台の柱に括り付けてしまいます。
そうして、幾度も飛くんに『白龍』として起つよう頼みますが、飛くんは頑として首を縦に振りません。
そこに、飛くん説得の為に呼ばれた葉林がやってくるのですが、彼は羅漢の意見に真っ向から反対します。
このような街が不安定な時期に、街を支えるべき花路が、更に街を騒がせるようなことを進んですべきではないと。
何よりも、仲間に縛り上げられても、『白龍』を廃することに頷かない飛くんの意に沿わないことはできないと、
大体そんな意味のことを言ってくれるのです。
流石、花路一の知恵者と言われる葉林!
仲間内でただひとり、飛くんの胸のうちを慮ってくれた彼に私は思わず感動です!!
やっぱり、ただの大喰らいじゃなかったんだね!!(笑)
その上で、葉林は飛くんに花路を抜けることを勧めますが、それに激しく反発する羅漢と睨み合いになってしまいます(汗)。
他ならぬ自分が原因で、ひとつだった花路に亀裂が入る様を目の当たりにして、
飛くんは胸を痛め、ますます精神的に追い詰められていきます(泣)。

街では花路に味方し、白龍屋敷に反感を募らせる人々がますます増えていき、
この不穏な動きは、屋敷が見張りと物見を出すだけでは最早抑えられない様子となっていました。
マクに指図を仰いでも、それを得られず、前々から街の様子を尋常でないと感じていた執事の万里(ワンリー)は、
ついにクレイ・ハーパーから飛くんの出生の秘密を訊き出します。
この直後、「走る万里」という滅多にお目に掛かれない状況を読者は目にする訳です。
ご丁寧に、その場面はイラストにもなっているし(笑)。
ある意味この巻の名場面のひとつと言えるかもしれません(笑)。
クレイの部屋を飛び出して、再び主の部屋へと戻った万里は、雪蘭(シュエラン)、絲恋(スーリェン)母子、
また、尊夫人(スンフーレン)を、市街から西湖の賓荘林(ピンチュアンリン)へ移ってもらうよう願い出ます。
つまり、騒動が起きる前に、マクの奥さん(形式上ですが/苦笑)と跡継ぎ、義理の母を避難させようという訳で。
それに、おざなりにマクが許しを与えたところで、
物見の男が「花路が『大龍(ターロン)』の子を擁している」という師父(シーフ)が流させた噂を拾って戻ってきます。
それに対して、マクは屋敷の手勢を増やし、一層花路と街の人々を締め付ける指図をします、
ああもう、逆効果だってばさ……マク自身そのことを分かってるんだろうけど(汗)。
分かっててやってるところが始末が悪いよね!(苦)

そして、やっとこさ、白龍市街へと辿り着いた玲泉(リンチュアン)と猫(マオ)。
ふたりは、すれ違う街の人々の尋常でない様子を不審に思い、花路退去の触書を発見して驚愕します。
そんな中、玲泉はひとりで尊夫人の元へ行く決意を固め、猫に飛くんに会えたときの言伝を頼み、
街の若者と屋敷の手勢とがもみ合う騒ぎに紛れ、姿を晦まします。
玲泉を見失った猫は慌てますが、まずは花路を訪ねることにします。
そこで、探していた雷英(リーイン)とばったり鉢合わせるのです。
雷英は最初、猫を黒党羽(ヘイタンユイ)の手勢だと勘違いをします。
つまり、この不安定な白龍市に止めを刺さんばかりに、黒党羽が黒龍(ヘイロン)から乗り込んで来るということで(汗)。
問われるまま、信頼する雷英の問いに応えていた猫は、
玲泉の名を出してしまったところで、雷英の怪しさ(?)に気付きますが、とき既に遅し。
問答無用で、猫は雷英の操る黒針(ヘイシン)により、身体の自由を封じられてしまうのでした。
一方、玲泉はぼろぼろになりながらも、見咎める人々をやり過ごし、
必死の思いで白龍屋敷の敷地内にある南荘(ナンチャン)へとたどり着きます。
そこには、西湖への避難を辞退し、薄布で顔を隠すことを止めた尊夫人がまだおり、ついに主従ふたりの再会が為されるのです!
やっとの思いで会うことのできた尊夫人に縋りつきながら、玲泉は主の子(飛くんね)が生きていることを打ち明けるのでした。

そして、捕らえられたままの飛くんは、様子を見計らって助けに現れた葉林の手を借りて、羅漢の棲家の古妓楼を抜け出します。
流れ始めた噂により、羅漢と孫以外の花路の仲間たちも飛くんが、大龍の子に違いないと確信し始め、
山の手に押し寄せようと羅漢に詰め寄る様を遠目に見ながら、
飛くんは大事な仲間たちに心の中で謝罪と別れを告げるのです(涙)。
それから、飛くんはマクに本土へ連れて行かれてから、初めて東州茶房に戻ります。
尋常でない様子で飛くんの身を案じる師父に、飛くんは初めて自分の生まれのことを訊くのでした。
師父は自分が大龍の子と知っても、マクを押しのけて『白龍』になろうと思うことなく、
ひとりで悩み抜いた飛くんの心を見抜き…
というか、そういう澄んだ心を持つように師父が飛くんを育てたので、飛くんの心は師父には丸見えなんですな!
飛くんがマクに惹かれていることもちゃんと知っていたようだし(苦笑)。
ま、そんな訳で、師父は的確に飛くんの心を煽り立て、飛くんはついに、
マクと刺し違える覚悟を固め(!)、引き留める(素振りの)師父を振り切って出て行くのでした。
その後、様子を見計らって出てきた雷英に、師父はもうすぐ終わりを迎える
この復讐劇の発端となった約二十年前の己と尊夫人の恋の話をします。
以下、師父の語る恋の概略(…と書くとあまりにも素っ気無いような/苦笑)。

南里の主であった尊夫人(玉蘭(ユイラン))と恋に落ちた師父(月亮(ユエリャン))は、
北里の跡継ぎという立場を捨てても良いとまで思い詰め、父の許しも得ぬままに彼女に婚儀申し入れをしました。
しかし、その申し入れは断られ、信じていた相手からのその返事に衝撃を受けつつも、
月亮は『朱龍(チューロン)』であった彼女の立場を思い、仕方がないと無理やり言い聞かせ諦めようとしました。
しかし、そんなとき、何と玉蘭が既に愛妾も子(マクですな)もあった『白龍』(マク父)に嫁すという噂を耳にするのです。
堪らず彼女に会いに行った月亮に、玉蘭はこの婚儀は島の平穏の為であり、
例え西に嫁いでも心だけは傍にあると、つまりは「私の心はあなただけのものだ」と誓います。
その言葉を信じて、身を引いた月亮でしたが、それでも彼女を得たいと想う心は絶ちがたく…
ついに、彼女を奪い返そう、それが無理ならば刺し違えようとまで思い詰めて、彼女の住まう南荘へと乗り込んだのです。

「大龍ごときがなに……北里の次代の『龍』たるべき立場がなに……島の平穏がなんだというのだ」(175頁)

…と思い詰めて。
この師父の台詞、『濡れ濡つ』でマクが飛くんに言ってた台詞と一致しますねえ…
こうした特定のひとを想う情熱(?)という点では、マクと師父って似てるのかもな、とここで読者は思う訳です。
で、そんな想いまでして会いに行ったというのに、そこで月亮が目にしたのは、
大龍の子を抱いている玉蘭の姿だったのです…!(汗)

…と、これだけ聞くと、「ひでえ話だ!そんな風に相手を裏切るつもりなら最初から「心は必ず傍に」
なんて約束なんてしなきゃいいのに!!」と、思ってしまいますが、
月亮の語った事実は、玲泉が猫に託した言伝と微妙に違うのでした。
実はここにはもうひとつ月亮自身も知らない事実があるんですねえ……
読者は玲泉の言伝辺りで、「あれ?これってもしかして?」と気付く方もいるのでしょうが、
まあ、それについて語るのは後に回すとしまして。
想いが深かった分、裏切られた衝撃、恨み、憤りは深かったのでしょう、
月亮は玉蘭と彼女を奪った西里に仇なすことを心に決め、黒龍での立場を捨てて、茶房主人に身を窶したのです。

しかし、その暗い火種のような感情に長い間止まない風を送っていたのは、飛くんだったのだと月亮は言います。
飛くんは今までの自分を覆してしまうほど愛した、そして裏切られたひとと彼女を奪った憎い仇との間の子。
しかも、その子は成長するにつれて、憎い相手ではなく愛しかったひとに似てくる……
そんでもって師父の望むまま、心根も実に清らかで優しい子に育ってくれた。
うむぅ……何だか屈折せざるを得なかった師父の飛くんに対する愛憎の気持ちも分かるような気がするのです。

雷英に過去の恋を語った月亮は、迎えに現れた黒党羽老頭(ラオトウ)と蜂焔(フォンイェン)に、
船主組合と龍江街(ロンチャンチエ)を焚き付け、黒党羽の手勢を使って、花路を始めとした街全体に火をつけるよう指示します。
その命を受け、月亮を騒ぎから離れ、黒龍にもちかいところへ連れて行こうとする老頭に、
月亮は白龍屋敷へ行くと言い出します。

「この十八年、ひたすら守り育てた美しい花の散り際を、なんとしてでも、この目で見届けたい」(178頁)

と、飛くんのことを言い、蜂焔に黒党羽への指図を任せ、老頭を供に茶房を出て行きます。
最後に茶房を出た雷英は、猫から聞き出した玲泉の言伝と月亮の昔話の辻褄が合わないことに考えを巡らすのです。

そして、蜂焔に騙され、焚き付けられた船主組合と龍江街が動き出し、
街の人々を巻き込んで屋敷の見張りを押しのけながら花路に押し寄せます。
その熱気に煽られるような形で、ついに羅漢は頭も葉林も不在のまま、
花路皆で屋敷に押し寄せることを、決断するのでした、この熱血お馬鹿!!
まさに敵の思う壺じゃないか…(苦)
そして、雷英は動けるようになった猫を率いて、師父一行とは別に動き出す様子を見せます。

・「龍は闇に堕つ」名場面。

さて、白龍屋敷へ乗り込んだ飛くんは、『白龍』も飛くんも失いたくないのだと、
引き留める万里を振り切って、大龍廟にて、マクと遭い見えます。
こうして、飛くんがたったひとりでやってくることを見透かしていたかのようにマクも、
たったひとりで短刀を手に飛くんと向き合います。
「最後だ」と、マクに向かって言い捨て、
マクが自分に言った掻き口説くような台詞を思い出しながら、飛くんは彼と激しく刃を打ち合わせます。
そんな飛くんの隙を突いて、彼の動きを封じたマクは、何故戻ってきたのかと問います。
そして、街の為でもなく、花路の為でもなく、自分の為に戻ったのだと目で訴える飛くんの首にマクは手を掛けるのです(!)。
飛くんは手に握ったままの得物の切っ先をマクの背中に向け……
…うおおぉぉ!!(獣の咆哮か?/汗)ついに心中かっ!!(大泣)
…と、読み手の私の気持ちも切羽詰ったそのとき。
疎林の中に落ちている枝が人の足に踏まれる音がし、マクが飛くんの首に掛けていた手を外します。
そうして、なにげなく疎林の方へと向けた目に、飛くんは思いも寄らなかった師父の姿を見るのです。
更にその傍らに、黒党羽老頭の姿を見、訳も分からぬまま、師父の元へ掛け付けようとした飛くんを、
先に師父の企みを悟ったマクが無理やり引き留めます。
マクに良く状況を見るよう強く促され、そこでやっと我に返った飛くんは、
目が見えないはずの師父の目が見えているのに気が付きます。
それでも、深く師父を信頼していたが故に、状況をまだ理解し切れていないままの飛くんは、
師父に危険を知らせようとしますが、その目の前で老頭が師父に膝を折るのです。
驚くばかりの飛くんに、師父は穏やかな笑顔で殺し合いを続けるよう促します。
続いて師父は呆然とする飛くんに、初めて己のもとの身分を明かし、
それに改めて納得した様子のマクが皮肉気に微笑んで、師父に言葉を掛けます。

…今回の名場面はそこのマクと師父の会話にしようかなという訳で以下、引用。

「黒龍の主たるべき身分……つまりは、急な病で死んだはずの当代『黒龍』の兄。さては、そういうことか。
朱龍屋敷で、北里には気をつけるようにといきなり聞かされたときには、
いったいいつの間にそんな恨みを買ったものかとくびをひねったが。どうりで身に覚えがないはずだ。
父が勝手に買ったつまらん恨みなぞのために、子が八つ当たりされてはかなわないぞ」
「おや。つまらない恨みなどとは、言ってくれるなよ……当代どの。
私怨私事のために一市を傾けた愚かしさを、あなたはとても嗤えないだろう。
半ば血を分けた相手の喉くびに手をかける姿は、このわたしとそう変わらない浅ましさだった。
似たような行いに手を染めておいて、他人ばかりを謗るのは……見苦しい」
「……」
「愛しいものを奪われ、信じたものに裏切られた恨みをつまらないと言い捨てたいのなら……
その手にかけてまで人一人を得ようなどという強欲は、起こさないことだ」
そうだろう、と穏やかに問われて、マクシミリアンは沈黙。

                                              (本文209頁〜210頁より)

師父の台詞、キッツイですね〜…(苦笑)
似たもの同志である分、的確に相手の弱いところを突いてくるというか。
皮肉屋で口達者な(笑)マクも流石に沈黙せざるを得なくなった、という点が名場面だと思います(苦笑)。
そして、師父は飛くんに、赤ん坊であった飛くんを奪い、海に投げ捨てるよう老頭に命じたのが、
他ならぬ自分であることも明かします。
しかし、そう命じた後で、何故か海へ漕ぎ出し、捨てられた飛くんを救い上げたのだと。

「……不思議ですよ、小飛(シャオフェイ)。人を殺したいと想う気持ちと、人を生かしたいと想う気持ちとは、
なぜこんなにもぴたりと寄り添って隣り合わせになっているのでしょうね。
まるで、花の蕾のなかで一つに身を寄せ合う雄しべと雌しべのようだ。
そして、憎いと想う心と、愛しいと想う心は、なぜ一つの胸のなかでこれほどまでに近くあり……
一枚の紙の裏とおもてのように、幾度も幾度も翻っては、わたしを惑わしてくれるのでしょう。(211頁)

この師父の台詞に、飛くんに対する気持ちが集約されてると思うですよ!
ま〜さ〜に、「♪愛してる、憎んでる、二つは背中合わせ〜〜♪(by石塚早織『遥かなる慟哭』)」ですよ!!
…つーか、この歌、師父のテーマだな(本編とはまるで関係ないコメント/苦笑)。

それも、今日で終わりだと宣言した師父は、殺し合わないと言うのなら自分がやろうと自らの刃を抜き放ちます。

・「龍は闇に堕つ」ベストオブイラスト。

今回はラストのラストのイラストをセレクトしました。

221頁のイラストです。

刃を抜き放ち、向かってくる師父と黒党羽老頭に、「渡すか」と、
さり気なく飛くんに対する所有権を主張して、マクは得物を構えますが、
衝撃から立ち直ることのできない飛くんは、全く動くことができません(泣)。
すべては始めから仕組まれていて、師父が飛くんにくれた優しさ、言葉は偽りでした。
しかし、それらは飛くんにとって何よりも大切なものだったのです(涙涙)。
そうして、飛くんが動けなくなっている間に、二人を相手にしていたマクがピンチに!
そのとき、飛くんには聞き覚えのない女の声音がそれを止め、尊夫人と玲泉が現れます。
まずは、玲泉が生きていたことに、驚いた飛くんでしたが、そこで初めて尊夫人とも顔を合わせ、
自分と似ているという確かな血の繋がりを知らされます。
そのとき、武器を錫杖から短刀に持ち替えた老頭が飛くんを襲い、それを庇って玲泉が飛び出してきます。
そうして、玲泉は飛くんが大龍の子などではなく、月亮と玉蘭の子なのだと必死な声で明かすのです。
何と、師父は飛くんの実父だったということで!!
尊夫人は師父を裏切ったわけではなかったのです!!
…ってここに至れば、だいたい読者には想像付いてるのですが、長く飛くんを仇の子と信じ、
身を削って復讐に明け暮れていた師父自身はその言葉を信じることができません。
積年の恨み辛みとそれを晴らす為に費やした日々が無駄になってしまうってことだからねえ……
そりゃ早々信じたくないでしょう(苦)。
しかし、尊夫人は嘘ではないとはっきり言います。
混乱して否定の言葉を繰り返した師父でしたが、ふいに身を折り、血を吐いてしまいます。
長年、抱えてきた負の感情がその心だけではなく、身体までをも蝕んでいたのでしょうか……(憂)
そうして、血を吐きながら尊夫人に刃を向けた師父を見て、飛くんは思わずその刃の前に飛び出すのです!!
セレクトイラストは、師父の刃を身に受けた飛くんが倒れていくシーンです。
衝撃的なシーンながら、儚げな飛くんの仰のいた姿が美しく…思わず見入ってしまうイラストです。
以下その辺りの引用。

息がつけない。
す、とからだじゅうの血が引いていく。
それが痛みかどうかも、わからない。
気づけば、目のまえにやさしい師父の顔がある。

……ほんとうに……感謝を、しています。

耳に甦るそれは、おのれの声だ。
やけに懐かしくその声音を思い返しながら、うまく定まらないまなざしで求める姿を景色のなかに捜した。
(中略)
そして、ようやく捜していた姿が目に映った。

銀灰の瞳。
銀糸の髪。
鼻梁高い優雅な美貌。

そんなに驚いた顔をして、どうしたんだ、『白龍』。
頼む。
手を貸してくれ。
何故だか、一人ではうまく立っていられない。
                                                (本文220頁〜223頁)

う、うわ〜ん!!飛く〜〜ん!!!(大泣)
そのとき、クレイや屋敷の手勢を引き連れた万里、黒党羽、屋敷に押し寄せた花路他多くの人々がやってきます(雷英と猫も)。
彼らが入り乱れ、切り結ぶ中、血に染まった飛くんの身体は敷石の上に崩れるのです……
密かに↑の驚いてるマクにこっちも驚いたりもしましたが、そんなことより(?)飛くんの安否が気遣われるこの状態!!
しかし、無情にもここで『龍は闇に堕つ』は終わりとなります……(汗)
主人公である飛くんがそう簡単にお亡くなりになる訳はないのですが、これは命が無事でも心がピンチじゃない…?(苦)
飛くんも、そして、もしかしたらマクも。
結局は、第二部始まってからずっとそんな感じですが(苦笑)、
不安を掻き立てられつつ、引き続きじりじり次巻を待つことになる訳で。
しかし、次巻は番外編だったのですよね(苦笑)。
うちの次回レビューもその番外編になります(笑)。

とにかく衝撃の『龍は闇に堕つ』れびゅはここまで。
最後までお付き合いいただいた方、有難う御座いました♪


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