龍は乱れる
四龍(スーロン)島シリーズ十六冊目は『龍は乱れる』。
「乱れる」!「乱れる」ですってよ!!(だから何)
タイトル通り、「殿様(マク)ご乱心じゃ〜〜っ!!」なお話となっております。
表紙イラストからしてすごいし。
マクが飛(フェイ)くんを押し倒してますから!!
…でも、今までのストーリーを鑑みるに、このシチュは表紙イラスト的には初めてでも、内容的には日常茶飯事なのよね(笑)。
飛(フェイ)は、大龍(ターロン)と正妻の尊夫人(スンフーレン)との間に生まれた子供だった……。
その事実に気づいたマクシミリアンは、確証を得るために過去の書類を探り始めた。
『白龍(バイロン)』の奇行や、白龍屋敷と花路(ホワルー)の確執などで、しだいに街は騒めきはじめている。
それを機に、これまで沈黙を保っていた東州茶房(とうしゅうさぼう)主人が、積年の怨みを晴らすべく行動を開始した。
激動の運命に巻き込まれた飛が、街のために下した選択は……!?
(文庫折り返し部分より)
そんな訳で、殿様…もとい、マクは友人兼白龍屋敷居候のクレイと共に、
叔父老簫が街を牛耳っていたとき…つまりは、
飛くんが四龍島にやってきた頃の記録書類を調べるべく、老簫(ラオシャオ)館にやってきます。
そこで早速、ご乱行(汗)。
マクは、館の半分に『小白龍(シャオバイロン)』と共に住まう絲恋(スーリェン)の居室を訪れます。
彼女といつもどおりの皮肉調子の会話をするだけかと思いきや…なんとっ、いきなり、マクが絲恋に手を出します!!
…って、彼女の手を掴んだだけですが(笑)。
とはいえ、絲恋は叔父の愛妾で、『白龍』の跡継ぎの母。
しかも、同館内にマクの正妻(名ばかりですが)の雪蘭(シュエラン)もいるのです。
…が、そんな理由全てを取っ払っても、現在の(意味深だな/笑)マクがこうして女性にモーション(?)を掛けること自体、
驚愕すべき事態なのです!!
もちろん、絲恋はきっぱりと拒絶して、マクもすぐに手を引きます。
そのときのマクの台詞が何とも…(汗)(28頁)
「気を悪くするな。
『青龍(チンロン)』の姉姫よりも、叔父上の妾どののほうが、多少なりとも色街の束ね役に似ている気がして、血迷った」
「……おっしゃいますのね。いったい、どこが」
「さあ。あえて数えるならば、髪の色と目の色が美しい漆黒というところだろう」
その条件に当て嵌まるひとは、四龍島には結構いると思いますが…(苦笑)
『青龍』の姉姫、雪蘭もそう。
でも、ふわふわ天然姫の雪蘭よりも、強気で潔い絲恋のほうが、性格的には飛くんに似てるかもしれないなあ…
というか、マク、この件だけでも相当煮詰まってるのが分かります(汗)。
マクが去った後、「血迷うなら奥方の部屋で血迷ってもらいたいものだわ」と文句を言う絲恋。全くだよ(苦笑)。
一方、飛くんは、師兄雷英(リーイン)を花路へと連れて行きます。
そこで、顔見知りの羅漢(ルオハン)以外の面々に雷英を紹介し、皆で酒を酌み交わしながら、
飛くんの拳法の指南をしていたこともある雷英と仲間が手合わせする様子を眺めたり、
そこに自分が加わったりと楽しく過ごします。
…飛くんにとっては、最早花路のみが心から笑える場所となっているようです(哀)。
その手合わせも一通り済んで、酒飲み大会と化した場で、雷英が語る飛くんとの本土での出会い話。
飛ファンはこれには強く反応することと思います(笑)(62頁)。
「(中略)当時、そこのお坊ちゃんは真綿にくるまれるようにして大事に育てられた、それこそ深窓の姫君みたいな姿でね」
「おい、雷英」
「引き合わされたときには、てっきり女の子だと思ったっけな。
これは、将来は茶房のお嬢さんの婿におさまるしかないと本気で覚悟を決めた。
その日のうちに男とわかって、世をはかなんだのなんの……おまえ罪だぞ、小飛(シャオフェイ)」
「深窓の姫君みたいな姿」!?
本土で飛くんは、師父(シーフ)に蝶よ花よと慈しまれて育てられた訳ねえぇ〜〜っっ!!(喜悶)
しかし、冗談ぽく語られた、雷英の「茶房のお嬢さんの婿〜」の件は、
実は本気なのではないかと勘繰りたくなります、いや、本気であれ!!(笑)
その後の花路から茶房までの帰り道、珍しく酔ってしまった飛くんは、雷英に花路の自慢をします。
「いいだろう」と。
そう言いながら、内心でこの花路にも自分は、居続けることが出来なくなるかもしれないと考えます。
その思いが、「俺は……だれだろう」という言葉になって零れるのです。
迷いと酔いで歩けなくなり、雷英に背負われながら、いつの間にか寝入って帰ってきた飛くんを師父は温かく迎えます。
しかし、大切な養い子を見守る彼の瞳には、優しさとその優しさとは裏腹の何かが垣間見えるのです…
雷英に花路のことや飛くんがうわ言のように呟いた台詞を聞いた師父は、「時は満ちつつある」と言います。
そして深く寝入っている飛くんを抱き寄せるようにして低く囁きかけるのです。(75頁)
「大龍の子よ」
…と。うう…だんだんいやな方向に……(はらはら)
一方、黒龍(ヘイロン)では、飛くんに勇気を貰った元(ユァン)家の幼い当主、
梨樹(リーシュ)が喰えない(笑)当代『黒龍』に真っ向から立ち向かう為に黒龍屋敷に上がり、
長く梨樹に仕えてきた猫(マオ)も、黒党羽(ヘイタンユイ)の傾きを正すべく、黒党羽根城の廟堂へと上がります。
梨樹は『黒龍』冬眠(トンミェン)から、不思議な謎々を掛けられますが、
それに上手く答え、何とか『黒龍』に仕えることが出来るようになった模様。
しかし、猫はなかなか、老頭(ラオトウ)に物申すことが出来ません(苦笑)。
そのうちに、猫は老頭から一人の女を始末するように、と命ぜられます。
その女は猫も尊敬する一廟主(イーミャオシュ)雷英の敵だからと教えられ、猫も当初はその気になりますが、
実際にその女…つまりは廟堂に捕らえられていた玲泉(リンチュアン)のことですが、彼女の様子を見て、解せない気になります。
迷いつつも、猫は玲泉を連れ出しますが、ひょんなことから、
飛くんが玲泉の形見として預かりながらも置き忘れてしまった鏡が猫の懐から落ち、
それを目にした玲泉は、一気になくしていた記憶を蘇らせるのです。
彼女からこれまでの経緯と、何としてでも白龍へ行かなければならないと言う悲壮な決意を聞かされた猫は、
同じく白龍へ向かったと言う雷英を探しがてら、彼女に同道することにするのです。
…ううむ、こちらは急展開ですねっ!
そして、ご乱心中のマクは、ついにっ、雪蘭にまで手を出し掛けます!この馬鹿!!
確かに、↑の絲恋の「血迷うなら奥方の部屋で〜」との言葉に同意はしましたが、本当にやられると許し難いのです(笑)。
…と言っても、これまた未遂ですが(苦笑)。
このとき、尊夫人から海に沈められた赤ん坊のことを聞かされていた雪蘭は、
侍女の美芳(メイファン)に言い含められていたこともあって、
何とも無邪気にマクに向かって「赤ん坊をちょうだい」と言うのです(汗)。
ま…そのちょうだいレベルは、「そこの庭に咲いている綺麗な花を摘んで持ってきて」程度なんですが(苦笑)。
マクに寝台に押し倒されても、くすぐったがって笑い声を上げている辺り、状況が分かっているとはとても思えません。
そうして、解かれた帯の色を、「翡翠だわ」と言った彼女のその言葉に、やっとマクは我に返った模様。
翡翠=飛くんだからねえ…(笑)
ちょうどそんなマクと雪蘭の場面に行き会ってしまい、このまま退出するか、
それとも、主人の衣を整えるべきかと迷う美芳の慌てぶりが何だかおかしい(笑)。
つぎに、館でマクに頼まれた探し物を引き続きしていたクレイが現れ、マクは、慌てる美芳、
及び寝台の上で笑い声を上げている雪蘭をそのままほっぽり出して(苦笑)、彼女の部屋を後にします。
マクがクレイに探させていたのは、白龍市の戸籍帳でした。
しかし、そこには、目当ての東州茶房主人とその養い子(飛くん)の戸籍の詳細はなく、
彼らの戸籍が本土にあることが記されているだけでした……
そこで、マクは執事の万里(ワンリー)に、使いを命じます。
飛くんに、尊夫人が住まう南荘(ナンチャン)で剣舞を披露するように。
断られたら、その足で龍江街(ロンチャンチエ)へと行き、東州茶房主人を屋敷へ連れて来るようにと(汗)。
当たり前ですが、『白龍』の要求を拒絶した飛くんは、
万里は花路の頭を降りるつもりなのか、と思いも寄らなかったことを訊ねられます。
マクの龍玉にはなれないかと。
自分がいなくても、マクは立派に街の主をやっていけると苦し紛れに返した飛くんに、
万里は飛くんが去った後も、マクが『龍(ロン)』でいてくれるか自信がないと告げます。
飛くんが傍にいるからこそ、マクは『龍』でいられるのだと、そう言う訳ですね。
しかし、己の出自を隠し続けている飛くんは、万里の言葉も否定することしか出来ませんでした(泣)。
そうして、飛くんが去った後、東州茶房へ向かった万里は、師父を白龍屋敷へと招きます。
微笑みながら、雷英に待ちに待った嵐が来たことを告げる師父。
師父が白龍屋敷へ連れて行かれた後、切羽詰った風を装って、雷英は花路に現れます。
その様子にころりと騙され(苦)、力ずくで師父が連れ去られたと思い込まされた飛くんは、白龍屋敷へと駆け出して行くのです。
・「龍は乱れる」名場面。
これはいつもセレクトに迷うのですが…今回はこれで!
白龍屋敷の前庭で師父を迎えたマクは、彼と囲棋(ウェイチー)をしながら、飛くんを何処の海で拾ったのかと訊きます。
それに師父は、白龍の海で、と応えるのです。
そこに、抜き身の短刀を手にし、血相を変えた飛くんが、屋敷の番人を蹴散らして押し入ってきます。
師父を庇うようにして、マクを睨みつける飛くんに、笑みさえも浮かべないマクが「よく来た」と言います。(219頁)
「よかったぞ、花路……おまえを憤らせる術がまだ残っていて。
その足がどうすればわたしのもとへ向かうかと悩みに悩んだおかげで、すっかり眠りが足りなくなった。
はじめに言っておく……今夜のわたしは、たとえようもなく不機嫌だ。せいぜい覚悟をしろ」
眠りが足りなくなった上に、血迷っちゃったりもしたんだよね〜(苦笑)。
しかし、相手を怒らせてでも、自分の傍に引き寄せたいって辺り、マクらしいなあ(更に苦笑)、問題アリアリだけども。
えっと、↑が私がセレクトした名場面ではありません。
それはこれから。
容赦なく飛くんに向かって得物を振るうマクと、我を失った飛くんは刃を交え、ついに飛くんはマクを傷付けてしまいます。
本来、街の主に仕え支えるべき花路の頭がこともあろうに、白龍屋敷内にて、街の主を傷付けてしまったということで…(汗)
後を追ってきた羅漢と葉林(ユエリン)に抑えられて、やっと我に返った飛くんは、愕然とします。
万里は、この場にいた全員にこの件の口外を禁じた上で、羅漢たちに飛くんと師父を連れて帰るよう促します。
で、↓がセレクトした場面となります。
わかりましたという羅漢の重い声音を聴きながら、まだ飛はまなざしをマクシミリアンの姿に据えていた。
侍女に促されて屋敷のうちへと戻ろうとしていたその相手が、歩みだしかけて、やはり立ちどまった。
こちらをふり返る。
ふり返って、薄くくちびるを開く。
揺らめく灯火のなかで、そのくちびるが、みじかいなにごとかをつぶやいた。
(中略)
……逃がすものか。
逃がすものかと……あのくちびるが、たぶんそう言っていたのだ。
(本文226頁〜227頁)
…いいねえ♪このマクの飛くんに対する執着っぷり(笑)。
つまり、それだけ飛くんに心を傾けて、情熱(…か?)を注いでるってことでしょ?
そこに、私は不埒なときめき(笑)を憶えるのであります!
・「龍は乱れる」ベストオブイラスト。
え〜、恐らく本編をご存知の方は、想像付いているんじゃないでしょうか?(笑)
257頁のイラストです♪
飛くんの泣き顔のイラスト……
これが本文イラストに入るときは必ずと言っていいほどセレクトしておりますね(苦笑)。
だって、飛くんの泣き顔は可愛いんだ!綺麗なんだ!!仕方ないじゃないか!!(逆ギレか?/笑)
そして、思わず貰い泣きしそうな場面です。
騒ぎの後、自分が花路の頭である限り、マクとの繋がりを絶つことはできず、
何度でも踏み誤ってしまうと思い詰めた飛くんは、悩みに悩んで、
ついに唯一の心の拠り所としていた花路を自ら抜けることを決めます(泣)。
そうして、花路を抜たいと、大兄の羅漢と葉林に告げるのです。
口にしたとたんに身を切られる痛みに苛まれるかと思っていたが、言葉にしてしまうと案外に平静でいられた。
あの男に決別を言い渡したときとは違って、心のうちは澄んで穏やかだった。
ただ、しんと冷たいなにかが、口に出してしまった言葉のかわりに胸のなかをしだいしだいに満たしていく。
無言の葉林。
渋面の羅漢。
ふたりの顔を眺めるうちに、それが喉もとにせり上がり、両の目にあふれて、頬へと静かに流れだした。
「すまない」
(本文255頁)
謝るなよぉ!飛くんが悪いんじゃないんだから!!(やっぱり貰い泣き)
悪いのは、師父と雷英です!(どきっぱり)
花路を抜けたい理由を訊ねる羅漢と葉林に、飛くんは応えることができません。
そのとき、羅漢たちと同じく飛くんの身を案じ、ちょっと荒れ気味だった(苦笑)孫(スン)が、
花路の客と喧嘩!という知らせが入ります。
飛くんをその場に留め置き、喧嘩を抑えに向かう羅漢と葉林。
そうして、羅漢の住処の古妓楼にひとり残された飛くんの前に、マクが現れます。
抵抗する飛くんをものともせず、マクは雪蘭のところから失敬してきた眠り薬を、
無理やり飛くんに口移しで(!)飲ませ、気を失った飛くんを花路の仲間たちの目の前から連れ去るのです!!
いつまで口づけている、マクシミリアン。
息ができなくて……死んでしまう。
そのときの飛くんが徐々に失われていく意識の片隅で最後に思ったこと。↑(263頁)
どんなちゅうをしたんだ、マクシミリアン!!
しかも、その前のマクの台詞が、「溺れろ、花路……!」だしさあ…
溺れそうなちゅうってこと?(ぐはっ!←何か噴いたらしい)
と、思わず妄想まみれになりつつも(笑)、ストーリーは更に緊迫度を増し……(汗)
気絶した飛くんを抱えたまま(やはり姫抱っこでしょうか…♪/期待)、
何の身支度もせずに港へ行ったマクが乗り込んだのは本土への舟。
…さてはこいつ、本土にあるという飛くんの戸籍を確かめに行くつもりなのかっ!!
その頃、黒龍では亡くなったと言われていた先代『黒龍』の長子、
当代『黒龍』の兄にあたる人(たいへん優れた方だったそうです)が実は生きているという噂が流れ始め……
そして、白龍の東州茶房の奥で師父は雷英に静かに宣言します。(274頁)
「では、雷英……そろそろ罪な花を手折りましょうか」
「かしこまりました、われらが神龍(シェンロン)。真の『黒龍』たるべきおかたよ」
ん?!…ということは、やっぱり、師父が元跡継ぎの『黒龍』のお兄ちゃん?!!ひええ〜〜っ!!
飛くん、本土に攫われてる場合じゃありません!!
マク、飛くん攫って島を留守にしてる場合じゃありませんよ!!
…とはいえ、マクは島や街のことよりもまず、飛くんが先に来る男なので、注意しても無駄なのですが…(汗)
次回、主不在の白龍にて、師父一味(?)がどんな悪巧みを実行するのか、
本土にて飛くんがマクにどんな目に遭わされちゃうのか(笑)、どきどきはらはらうきうき(?)でございます!!
そんな感じで、殿様ご乱心の(笑)『龍は乱れる』れびゅもここまで。
長らくのお付き合い有難う御座いました〜〜♪
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