龍は恋い恋う
四龍(スーロン)島シリーズ二十六冊目となります、第二部クライマックスとも言える「龍は恋い恋う」。
読者の間では「龍はらぶらぶ」とも呼ばれています(笑)。
島全体を巻き込んだ騒動の発端となった月亮(ユエリャン)と玉蘭(ユイラン)の恋…その終焉を描いた巻であります…
一方で主人公ふたり(マクと飛(フェイ)くん)もタイトルどおり、らぶらぶしてたりするんですがね!!(笑)
この巻の表紙イラストは、歴代の四龍島表紙イラストの中で秀逸です。
私の中でのベストオブ表紙イラスト♪♪
表紙を飾るのはもちろん、マクと飛くんのふたり。
互いに視線を絡ませることなく佇みながらも、引き寄せた飛くんの指に、マクが口付けているところに、
表情のクールさとは裏腹のマクの飛くんに対する執着が垣間見えて、何とも良いです♪♪
飛くんもまた、クールで美しい横顔を見せつつ、素直にマクに手を預けているしねえ、うふふ♪(怪笑)
このクールさと艶っぽさの絶妙なバランスが素晴らしいのです!!
そして、そんなふたりに重なるように描かれているのが、月と、それを仰ぐように枝を伸ばし、花開かせている白木蓮。
これまた、もちろん、月は月亮、木蓮は玉蘭を象徴しているのですね、嗚呼…(しんみりモード)
ついに師父、月亮の野望をうち砕いた飛。
だが、敗走した月亮が死を覚悟していることを悟り、たまらずあとを追いかけた。
黒党羽(ヘイタンユイ)の廟堂に火を放ち、冥府に赴こうとしていた月亮。
追いついた飛は、師父をなんとか救おうともみ合う。
しかし、そこに炎に包まれた梁が崩れ落ち、二人は下敷きになる。
危ういところをかばってくれたのは、自分を憎んでいるはずの月亮だった……。
(文庫折り返し部分より)
この作品は今までの中で特に涙なしにはレビューできません。
飛くんと師父(シーフ)の話に涙し、師父と玉蘭の恋の行く末に涙し、親子三人の邂逅と別離に涙し……
マクと飛くんについては…煩悩の方が先走ってしまって、涙するまでには至らなかったのでありますが(笑)。
そんな諸々を含めて、名場面の連続。
それ故、このレビューも記す前から長くなりそうな予感がしているのですが(汗)、
お時間とお心に余裕のある方、どうか宜しくお付き合いくださいませ(平伏)。
黒龍(ヘイロン)屋敷門前に辿り着いた飛くん率いる決起勢。
その目の前で門が内側から開き、古参の身内の老銭(ラオチェン)が現れ、
今残るのは、月亮と黒党羽老頭(ヘイタンユイラオトウ)、そして、老頭に最後まで従う覚悟の黒党羽のみだと告げます。
そうして、癒えぬ病を抱え、それでも尚、何事かを待つような月亮の命ばかりは助けてほしいと、飛くんに頼み込みます。
飛くんの想いも、彼と同じでした。
屋敷に踏み込んだ飛くんは、捨身で立ち向かってくる黒党羽をどうにか退け、
ついに、月亮を目前にしますが、彼に促されるまま、望まぬ刃を交わすことになります。
しかし、自分の命を賭してでも、月亮を救いたいと決意していた飛くんは、途中で自分の刃を下ろしてしまいます。
無防備になった飛くんに、容赦なく刃を振り下ろす月亮。
それを身体を張って止めたのは、意外なことに、雷英(リーイン)を相手に戦っていた黒党羽老頭でした。
傷付きながらも、老頭は、月亮が待ち、運命を共にする相手は飛くんではないと訴えます。
その言葉に背を押されるようにして、月亮はその場から去ってしまうのでした。
黒党羽老頭を捕らえ、屋敷を取り戻した決起勢でしたが、飛くんは冬眠(トンミェン)に月亮を追いかけたいと願い出ます。
本土伍(ウー)家や、朱龍(チューロン)のことなど、まだ島の問題が残っている今、自ら退いた月亮のことはそっとしておいて、
今後のことを考えるべきだとさり気なく諭す冬眠に、飛くんは強情なほど首を振ります。
このままでは師父は最後までひとりきりのままになる、と。
身勝手だと承知した上で、それでも、どうしても今、師父の傍へ行きたいのだと。
ここでもう、うるっと涙腺が緩んできましたよ、私(苦笑)。
その強い願いに、とうとう冬眠も折れてくれます。
溜め息を吐いてから、師父と似た顔で(兄弟だからね)穏やかに微笑んでくれます。
「あなたは、余人があれこれと言い訳をしてあきらめるところを……決して手放さないのだね、『小黒龍(シャオヘイロン)』」(41頁)
そう!それが飛くんの素敵なところ、飛くんが飛くんたる所以なのです!!
だからこそ、きっと飛くんは、人一倍苦しい思いをしたりする場合があっても、
悔いを残さず、真っ直ぐ前を向いていられるのです。
本当に、こういうところ、尊敬します…今回はちょっと危うい感じですが(汗)。
雷英もまた、師父に引き摺られていきそうな飛くんの危うさに気付いていたようで、断固として同道しようとします。
それを羅漢(ルオハン)が止め、飛くんが望む道を進むことに、花路(ホワルー)とマクの分も含めて、強く頷いてくれるのです。
そんな羅漢と、その場に居る皆に、ありがとうと言う飛くん。
慣れない言葉がこう口をついて出るのは、果たしてどういう知らせなのだろうかと。
居並ぶみなに向かって拱手をしながら、おかしなことを想ってみた。(44頁)
…やだなあ、飛くん、どうしてそう最後みたいなことを想うのさ……(不安)
屋敷を出た飛くんは、ふと、月亮が居るのは、黒党羽の廟堂があった龍巣(ロンチャオ)に違いないと思いつき、駆けていきます。
駆けながら、今までの月亮との生活を思い起こし、想いを募らせていく飛くん。
また、生きてはその元に還れないかもしれない、マクと花路の仲間たちにも思いを馳せます。
そして、龍巣に辿り着いた飛くんが見たのは、火に包まれた廟堂でした。
火を付けた廟堂の中にひとりでいた月亮は、飛び込んできた飛くんに、刃を向けて来るなと制しますが、飛くんは聞きません。
月亮の望みを二つに折り、月亮を救い上げるまでは諦めないと。
そして、恨みのために自分を育てたという月亮の言葉を彼の思い違いだとはっきりと否定します。
「あなたは……俺と、この北里と、この島と、そして、俺の母であるひとを……
過ぎるほどに愛おしんでくださいました。(83頁)
今まで、彼から注がれてきた優しさと慈しみは、嘘ではないと信じるからこそ、飛くんはそう断言するのです。
そうだよねえ、本当に恨みと憎しみのみを抱いて飛くんを育てていたなら、
こんな魅力溢れるいい子にはならないよ(出た、飛くん賛歌/笑)。
他にともにあろうとする相手があるのに、こんなところでこんな愚かな男とともに、終わりを迎えるべきでないと諭しても、
退かない飛くんに、これまた頑固な(苦笑)月亮は、ならば自分の命を絶てと、手にした刃を振り下ろすのです。
刃を打ち合わせながら、師父と話すうちに、飛くんは師父が待っているのが誰なのか、はっきりと悟ります。
「師父。俺は、あなたの心が、いまになってわかるような気がします」
「わたしの、心?」
「そうです。わかるか、とあなたはおっしゃいました。この相手をこそと一途に思い決め……
その想いが叶うならば、すべてのものが得られるだろうと舞い上がり……
失うとしたなら、望むすべてを逆さまに覆そうとまで想いつめる心が……
俺にも、いまになって、わかるような気がするのです」
「……そうか」(90頁)
だからこそ退かない、と言いつつも、辛そうな顔で得物を振るう飛くんを月亮は見抜き、逃げるようにと再び言います。
どうかその大事な命を捨てないでほしいと、自分は飛くんの手で冥府へ送られたつもりになるからと、身を退く月亮。
彼を追い掛けようと足を踏み出した飛くんの上に、何と焼けた梁が落ちて来るのです!!
・「龍は恋い恋う」ベストオブイラスト。
涙しながらお送りする(笑)今回のベストオブイラストはこれ!!↓
119頁のイラストです!!
この「恋い恋う」は、表紙イラストのみならず、収録されている一色イラストもすべてが秀逸で♪♪
でも、選んでしまうのはやっぱり、飛くんの泣き顔のイラストなのです(笑)。
麗しくも切ない飛くんの姿とストーリーに貰い泣きしっぱなしです!!
さあ、その場面に至るストーリーを追いましょう!!
暫し、軽い気絶状態に陥っていた飛くんは、今まで幾度も思い出していた師父との思い出を反芻します。
幼い頃から、幾度も庇われ、助けられてきた思い出。
そうして、我に返った飛くんは、自分を突き飛ばし、代わりに焼けた梁の下敷きとなった月亮の姿を目にするのです!
顔を伏せたまま動かない月亮の元に駆けつけ、抱き上げながら必死に呼び掛ける飛くん。
それにどうにか、目を開いた月亮は、足を重い梁の下敷きにされ動けず、
何より病で先のない自分を置いて去るよう、飛くんに促します。
その優しさに心揺れる飛くん。
そんなとき、ふいに周囲の煙が、吹き込む風に吹き払われ、
飛くんは廟の開かれた扉の前にマクが佇んでいるのを目にするのです。
しかし、マクは何をするでもなく、ただそこに立ち、飛くんを見ているだけです。
それでも充分に心乱され、迷いだしてしまう飛くん。
そんな飛くんを月亮が更に促し、胸を軽く押しますが、飛くんは立ち上がれません。
弱い声で、師父を初めて「父上」と呼んだ(涙)そのとき、月亮の名を呼ぶ声が聞こえます。
廟の入口に、羅漢と小虎(シャオフー)に助けられながら、マクに次いで姿を現したのは…
月亮の愛したひとであり、飛くんの母でもある玉蘭でした。
玉蘭はひとり、燃え落ちる木材にも怯まずに、月亮と飛くんの傍までやってきます。
そうして、優しく飛くんの名を呼び、頬に触れます。
その瞬間堪えきれぬ涙を零した飛くんから、月亮の身体を抱き取り、玉蘭は彼に語り掛けます。
以下、長いですが、感動的なので引用します。
「すまなかった、月亮……あなたに……ずいぶんと遠い道のりを、歩ませてしまった。長く、このように待たせて……
伝えるべき詫びの言葉も、ない。けれど、間に合うてよかった。こうして、互いに、たどり着けたことを…………
いまは、なにはおいても、幸せと想う」
「ああ……玉蘭」
「許してほしい……かつて、愛しい相手をさらう勇気を持たなかったわたしを、どうか。
月亮、こののち、ゆっくりと罰してくれるか。いまこそ誓う……どこへも行かぬ……まなざしさえ、よそへはやらぬよ。
必ずあなたのそばにあって、ともに花の色を眺め、風の香りを楽しもう。やさしく……穏やかな時を……ともに」
春を、ともに。
そして、はじめて、月亮が安らかに笑んだ。
あきらめの笑みではなく、芯から満ち足りたといいたげに、痩せた顔に微笑みを浮かべた。
ゆっくりとまぶたを伏せて、目を閉じる。
「……ああ」
溜め息のあとに、ふたたび目を開き、
「ああ……不思議だ。もう、なんの言葉もいらない。
あなたがここへ来てくれたということだけで、これまでの恨みが溶かされるようだ。これは、どういう、不思議だろう。
こうして……あなたの顔を見ることができる。ありありと、目のまえに。不思議でならない……
いま、ここに、静かな闇が降りたというのに」
(中略)
「師父…………お目が?」
「不思議なことに、たったいま……今度こそ、この目は、ほんとうに光を失ったようなのですよ。
偽りではなく、まるで定められていたかのように、すんなりと静かな闇が訪れてくれました。
もう……これで……恨み憎しみばかりを睨み据えずとも済む。もう二度と、虚しく道に迷わずに済むらしい」
「師……父……」
「ああ、ですが、心配はいりません。愛しいひとの姿は、少しも薄れることなく、このまぶたのうちにある。
玉蘭、あなたは美しく微笑んでいて……小飛、おまえは……泣いてくれているのですね。
しかし、どうか、それ以上は涙を流さずに。お願いです、どうか……立って、歩みなさい」
「師……」
「歩みなさい、小飛。そして……また、春に、会いましょう」
(中略)
「あ……父……上」
「立ちなさい。どうか、立ってほしい」
尊夫人(スンフーレン)が、しっかりと師父を抱き包んでいる。
ふたりともが安らかに笑んでいる。
満ち足りた笑顔をこちらへ向けてくれる。
師父の眼差しは、かつてと少しも変わらない、あのどこか遠くを眺めるような様子。
けれど、それは見果てぬ先を遥かに望むようではなく、
近く訪れるはずの穏やかな季節を、確かに感じ、指を折りつつ心待ちにするような……。
「行きなさい、小飛」
「飛蘭(フェイラン)。つぎにはどうか、笑顔で」(115〜118頁)
セレクトしたのは、この場面を描いたイラストなのです!!
親子三人での最初で最後の邂逅。
加えて、飛くんの切なげで美しい泣き顔に、心震わせられ、涙涙。
そして、勘違い人生(苦)で苦しみ抜いた月亮が、最後に、ようやく穏やかな場所に辿り着けたことにまた、涙涙。
それでも、最後ではない、また会おうと言う両親に促され、飛くんはやっと立ち上がり、二人から離れます。
燃えがある炎に遮られ、見えなくなるふたりの姿。
背後にいたマクに背中を預け、身体が崩れそうになるのを支えてもらいながら、
飛くんは、堪えがたい痛みに、マクに縋る言葉を発します。
それを望み以上に手荒な言葉で、マクは悲しみに命ごと引き摺られそうな飛くんを引き寄せます。
廟堂が崩れ落ちるのを目にしながらも、それで、どうにか、飛くんは立ち直るのです。
その後、マクから白龍(バイロン)の港に船を待たせてあること、『青龍(チンロン)』の印を預かっていることを伝えられた飛くんは、
マクの意図を悟り、彼とともに南里へ向かいます。
その途中の俥の内で、マクが飛くんに触れてくるのを、飛くんがまだ駄目だと制する件が何とも艶っぽかったです♪
そのまま、南里に入り、朱龍屋敷に辿り着いたマクと飛くんは、僅かな供だけを率いて、塀を越えて屋敷に乗り込みます。
屋敷にはそのとき、飛くんの求めに応じて、朱龍勢の白龍への進軍を無理やり遮った樹林房(シュリンファン)がいました。
桃(タオ)や梁(リャン)他の身内を庭に残し、ひとり『朱龍(チューロン)』夏燐(シアリン)の前に出た樹林房主人は、
正面切って彼女の愚かさを指摘し、罰すると言うのなら、彼女自身の手で、自分の首を切るよう言います。
更に、一度屋敷の外へ出て、街を支える木を伐りに来いと言われ、コンプレックスを刺激された夏燐は、
激昂して、刀を握りますが、情は強くても、所詮は世間知らずのお姫さま、刀をなかなか振り下ろすことができません。
そこにちょうど、見張りを退けながら、樹林房の身内を引き連れた飛くんがやって来て、夏燐の腕を封じます。
憤りと悔しさに自嘲の台詞を吐き散らす彼女に、飛くんはこの箱の外に出てみないかと誘いを持ち掛けるのです。
僅かに迷いと躊躇いを滲ませながら、反発する夏燐を、マクが問答無用に抱え上げます。
一方、飛くんは、身内の三夫人(サンフーレン)に、『朱龍』の印を貸してほしいと求めます。
止めろと夏燐は喚きますが、三夫人は何かを思い決めたように、印を持ってきて、夏燐に渡します。
更に、この印とともに、街の主のお帰りをお待ちしていると拝跪され、
上辺だけの主と、己を常日頃自嘲し、憤っていた夏燐が、ぴたりとおとなしくなります。
印を預かり、おとなしくなった夏燐をつれて、マクと飛くんは白龍へと向かうのでした。
途中、やっと落ち着いた夏燐の俥に乗り換えた飛くんは、彼女にこれから本土伍家当主に直談判しにいくことを告げます。
伍家に囚われの身になっている『青龍』の名代として雪蘭(シュエラン)、『白龍』のマク、
『朱龍』の夏燐、そして、『小黒龍(シャオヘイロン)』の飛くんが、それぞれの龍の印を携えて行くのです。
悪くすれば、全員その場で捕らえられ、殺されるかもしれない危うい旅路です。
しかし、外の世界というのはこういうもの、また、こうした苦難を乗り越えてこそ、
欲しいものが手に入るのだと、飛くんは改めて、夏燐に誘いを掛けます。
これまでの経緯で俄かに街の主としての自覚に目覚め始め、飛くんの言葉に覚悟を決める夏燐。
このとき、初めて夏燐が、飛くんの名前を訊くんですよね。
飛くんが応えると、
「そなた、『白龍』に縁がなく、また北里の跡継ぎなどでなかったなら、不夜宮に閉じ込めてやろうほどに。
惜しいぞ」(191頁)
などと、気高く意地っ張りな彼女流の告白をするのです。
「いつぞやのことでたくさん」と飛くんには苦笑混じりにあっさり断られてしまうんですが(笑)。
富浪(フーラン)の船で、海へ出た飛くんたちは、味方の舟が敵の舟の数よりも、
少なくなっているという厳しい状況を目の当たりにします。
しかし、そこに策を弄した千雲(チェンユン)の舟と、陸が落ち着いて加勢にやって来た花路の舟が敵へと襲い掛かります。
その様子に、飛くんは白龍勢が勝つと迷いなく断言します。
争いを避けて回り込む形で進む富浪の船。
その間に、マクが飛くんに、必ず還ることを誓い、何がしかの証を寄越せと迫ります、この切迫した状況で(苦笑)。
が、それに飛くんが応える前に、天狼(ティエンラン)が現れ、雪蘭を質に取ります。
素手で向かってきたマクに、得物を振り下ろそうとする天狼を、体当たりで防いだ飛くんは、天狼諸共海へと落下!!
海の中、死闘を繰り広げる飛くんと天狼!(ハラハラ)
天狼に喉を掴まれ、ピンチに陥った飛くんは、そこで師父の温かい声を聞きます。
その声に励まされ、渾身の力を込めて得物を天狼に突き立て、飛くんは無事生還します!(ほっ/安堵)
そして、世に憚った憎まれっ子(苦笑)天狼も、ここでようやく他ならぬ飛くんの手で引導を渡されたのでした。
…しかし、人間的な弱さや情を欠片も見せず、徹底的に非道な悪役であり続けた天狼は、ある意味あっぱれ(笑)。
まあ、どう転んでも好きではないキャラですが(苦笑)。
だって、私には姫(飛くん)がいるもの♪♪←バカが!
そのまま、本土の港に上陸した飛くんたち『龍』御一行は、途中外人居留区で、
王老人(ワンラオレン)の手勢を得て、伍家当主天鳳(ティエンフォン)の住まう清鳳庁(チンフォンティン)に乗り込みます。
敵の手勢を押しのけ押しのけ奥へ踏み入る最中にも、マクが「還るか」と先ほどの問いの応えを求めるのですが
(しかも、マク「応えないならこのまま引き返す」とまで言いやがります/笑)、
そこにちょうど天鳳と『青龍』麗杏(リーシン)を見出し、またも返事は保留に。
天鳳の胸倉引っ掴んで、文字通り直談判した飛くん。
そんな手荒なところも好きよ♪(笑)
予想通り、天鳳は切り札である『青龍』を持ち出しますが、雪蘭が顔を出したお蔭で、
「『白龍』を殺せ」と叫んでいた麗杏はすっかりおとなしくなり、
幼子のようになって姉と抱き合うばかりになってしまいます。
それでも、欲の深い天鳳は、ついに力ずくで飛くんたちを押さえ込もうとしますが、
飛くんは自分たちがここにいる限り、四龍島は決して覆らないと断言します。
もし、力ずくで手にしたとしても、東海の宝玉と言われた輝きは失われているだろうと。
四龍島は『龍』あってこそ、何より、その『龍』と共に戦おうという島の人々がいるからこそ、
貴い島であり続けているのだと言うのですね。
しかし、堪え切れなかった伍家の身内が天鳳の指図を待たずに、主人を助けるよう声を上げ、たちまち争いとなります。
ここで終わるはずがないという確信を持って敵を迎え撃とうとする飛くん。
そのとき、天鳳の元に、伍家側の敗北の知らせがやってきます。
更に続いて、伍家本邸から四龍島への手出しを固く戒めていた先代当主の使いがやって来るに到って、
天鳳は四龍島攻めを諦めざるを得なくなってしまいます。
そうして、飛くんたちは、天鳳に改めて島への不可侵を約す書状をしたためさせることに成功し、清鳳庁を後にするのでした。
・「龍は恋い恋う」名場面。
今作の名場面は、タイトルに相応しく、ラストのマクと飛くんのらぶらぶ(笑)シーンにしました。
島全土を巻き込む騒動が決着し、島へと戻る船に揺られながら、
飛くんはこのまま白龍へ還っていいものかどうか悩んでいました。
そうして、眠れずに甲板に出ていた飛くんは、自分の行き先を決断します。
そんな飛くんの元にちょうどマクがやってきます。
飛くんの決意を悟っているのか、マクはもう重ねた問いを繰り返しはしませんでした。
代わりに、飛くんを手荒く腕のなかに閉じ込めるのです(照)。
白い霧の中、もう逃げるなと口説くマクに飛くんは、マクの胸倉を掴んで引き寄せます。
「聞いておけ、マクシミリアン。俺は、必ずさせない。あんたにも、俺自身にも……
目に映るすべてを覆して報いようなどと思い詰めるほどの虚しい想いは二度と、決して、させないと誓う」
「よほど虚しく聴こえるぞ」
「だから……叶うかぎりそばにある」
「では、ここから一歩たりとも遠ざかるな」
「……春に」
「いまここから、少しも離れるな」
「春から……」
「飛蘭(フェイラン)」
「マクシミリアン。あんたに出逢った……花の時節からは」(268〜270頁)
この押し問答が何とも艶っぽい雰囲気なのです♪♪
269頁のイラストの飛くんも艶っぽいしね〜〜っ♪♪ぶふふ♪(壊)
こんだけマクに掻き口説かれても(笑)、折れないところが飛くんらしい。
でも、飛くんも一刻も早くマクの傍に戻りたいというのが正直な気持ちなのです。
そんな飛くんは相手を慰撫するように、己の心を宥めるようにマクを抱き締め、苦しい胸の内を吐露します。
「もどか……しい。もどかしくて、仕方がない。あと、ほんの帳一枚だ。あんたのところまで……」
「そう思うのなら、帳とやらを引き裂けよ」
「ああ……だが、嗤え。それが少しばかり、心地いい。
触れることが叶うと思えるほどの隔たりを置いて、あんたと近く向かい合うことが……もしかすると、とてつもなく」
「いつから、そう悪趣味だ」
「知れている……あんたに、会ってから」
「帳の向こうに隠れて、誘うわけか。『小黒龍』」
「ああ」
「春の花ごとつかんで、壊してやるぞ」
「……させない」
「おまえの大切にしようというものを、片端から覆す」
「させない」
「しまいには、抱いたまま海に沈めてやるぞ。こうして」
こうして、と。
ぐ、と押され、背にした船べりを越えて、海へ。
「マ……!」
堕ちていくかと、思った。
それほど危うい力で迫られた。
波がもし気紛れに船を揺さぶったなら、抱きすくめる相手ごと霧の底へと沈んだだろう。
けれど、
「……してみろ。俺が、あんたをすくい上げる」
耳もと近くにそう囁いて、むしろ不敵に笑んでみせた。
銀糸の髪に頬をなぶられる。
離すものかと、堕としてやるぞと、腰のあたりをとらえて迷う腕を、しばらくそのままにと、不埒に願う。(271〜272頁)
…引用が長すぎますよ(苦笑)。
しかしですね、このふたりの距離感が何とも艶っぽくて堪らないのですよ♪
それにしても、ここまで苛烈なマクを相手にして、決して自分の信念を曲げずに、
ついにはマクを折れさせる飛くんは凄いです(笑)。
流石、龍が夢中になって追い掛ける「龍玉」だけのことはある!!
そして、飛くんは証として、翡翠の耳飾りを外して、マクに付けてやるのです。
白龍の港に戻った富浪の船。
多くの出迎えの者の中に飛くんの帰還を切望する花路もいましたが、羅漢が予想したとおり、飛くんの姿はなく…
そんな彼らに船から下りたマクが通り過ぎざま、春までに飛くんの帰還がない場合は、北里を攻めると告げます。
やはり、折れっぱなしではないマク。夫(?)のプライドか?(笑)
それまで腕を磨いておけと告げられ、頷く羅漢と、同じひとつのことを期する顔色となる花路の皆。
そして、白龍の港に辿り着く手前で、燕(イェン)に頼んで、
小舟を出してもらった飛くんは、黒龍の小湾(シャオワン)に到着していました。
そこには既に雷英が迎えに来ていました。
雷英、飛くんをマクに盗られては堪らないと、焦って迎えに来たようです(笑)。
別れのときから、飛くんの耳には時折、師父の「北里を頼みます」と言う言葉が、響いていました。
その言葉に今、はっきりと頷いて、飛くんは雷英と共に、北里の街へと踏み出すのでした…
師父の遺言(?)に従って、『小黒龍』として、踏み出すことを決意した飛くん。
何の悔いもなく、真っ直ぐ顔を上げて還る為に、敢えて回り道を選んだ訳です。
そんな一途で誠実な飛くんを私はとても好もしく思います♪(何この言い回し…/笑)
まあ、だからこそ、長らくファンやってるんですが(笑)。
しかし、美貌も人柄も知性も血筋も申し分なしの飛くんが、
『小黒龍』に収まってしまったら、還るにしても相当時間掛かっちゃうんじゃないの?(不安)
そんなことしてるうちに、全く手控えをしないだろうマクと花路が黒龍に攻め込んで、また四龍島は大混乱です!(汗)
…そんな傾国のような飛くんに心密かにときめきつつ…(笑)
「龍は恋い恋う」れびゅはここまでとなります。
長らくのお付き合い、お疲れ様でした!!(苦笑)
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