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龍は薫風に翔る

四龍(スーロン)島シリーズ二十七冊目「龍は薫風に翔る」。
本編としてはついに、最終巻となります!!
発売された当初は、「何か、くどいタイトルだな」と心密かに思っておりましたが(苦笑)、
年を経て、最終巻に相応しい素晴らしいタイトルだと思えるようになりました(笑)。
表紙イラストは、もちろんマクと飛(フェイ)くんのツーショット。
作中の大春節をイメージしているのでしょうか、飛くんは、龍舞(ロンウー)の際に用いる飾り物の龍玉を手にし、
マクは顔を隠す為の(?)薄布を手にしています。
第二部が始まって以来、とんと御無沙汰だった
飛くんの柔らかな笑顔が何よりも印象的なイラストです♪(マクそっちのけ/笑)
見惚れてしまいます♪♪
飛くんの泣き顔のイラストばかりをピックアップしているからといって、
別に私は彼の泣き顔だけが好きな訳じゃありませんよ!(笑)
笑顔だって、凛々しい顔だって、怒り顔だって、艶っぽい顔だって、お澄まし顔だって(笑)好きなのです♪(用は全部)


動乱が終結し、平和を取り戻した四龍島。
飛は、『小黒龍(シャオヘイロン)』の名を背負ったまま黒龍屋敷で街の立て直しに尽力していた。
だが、西里への想いは断ちがたい。
おのれの心と、師父の遺した「黒龍をよろしく頼む」という言葉との間で飛は揺れる。
やがて、大春節の日に正式に『龍』を継ぐことが決まった。
飛は、ひとつの決断を下した…。
ロングヒットカンフーアクションロマン、ついに感動の最終巻!

                                                     (文庫折り返し部分より)

これ(↑)ちょっと文と文の繋ぎ辺りがおかしいような気がするのは気のせいだろうか(苦笑)。
綺麗な文章じゃないなと思ってしまう(人のこと言えない/汗)。
そして、相変わらず、「カンフーアクションロマン」という煽り文句に笑ってしまう私。
まあ、それはさておき、さっさとレビューに入りましょう。

島の騒動が治まってからひと月。
黒龍に戻り、『小黒龍』として屋敷に入った飛くんは、街を落ち着かせ、
穏やかになるよう、殆ど眠らずに動き回っていました。
騒動を引き起こした張本人の毛(マオ)家当主は、春になってから咎めを下すことが決まり、
黒党羽老頭(ヘイタンユイラオトウ)は蟄居を命じられていましたが、その他の毛家に味方した者や、
黒党羽の古参の者たちに関しては厳しい咎めは無しという触れが街じゅうに立てられます。
飛くんに従い、街の為に戦った際の気持ちを覚えている人々は皆、
この触れもきっと飛くんの考えなのだろうと素直に受け入れています。
街に良く出ては方々を見て回って手助けをしてくれる飛くんの姿に、希望を得て、
街の人々も協力し合いながら、前向きに街の立て直しに取り掛かっている様子です。
ひと月も経たないうちに、『小黒龍』は、街の人々に人柄、容貌共に(笑)大人気となっている模様。
まあ、飛くんですからね、無理ないですけどね♪(笑)
冬眠(トンミェン)の傍らで、街が落ち着き、更に活性化するよう、
着々と決め事を定めていく飛くんの姿は、非常にときめきます♪♪
それは、独断専行で決めるのではなく、関わりのある者を親しく集めて話し合い、
冬眠にも最終的な改善点を含めた指図を求めて決めていくやり方なのです。
その改善点を飛くんが心得ていても、最後の決断は街の主である冬眠にさせる訳です。
冬眠はのらりくらりとは応えをはぐらかし、すべてを飛くんに任せようとするのですが、
いつも根気強い飛くんに負けて、口を開く羽目となるのです(笑)。
流石、最も扱いにくい(笑)『龍』(マク)の龍玉だけはある。
『龍』の扱いはお手のものといった印象です。
それから、飛くんは、捕らえられた毛家一味と黒党羽にも直接会い、軽い処罰に却って反発する者があっても、
相手が納得できる形で、その罰を受けさせるのです。
…本当にこういうところ、上手いなあ…というか、飛くん自身の清廉さと誠実さは、
相手が真の悪人でない限りちゃんと伝わるんだね!!すごいよ!(また尊敬/笑)

雷英(リーイン)は引退させられた老頭の跡を継いで、黒党羽の頭となり、
それまでの汚名を拭うべく、集団を新たに纏めなおしていました。
街の人々からの人気も高く、すっかり黒龍に根を下ろしつつある飛くんの姿に、彼は満足しているようです。
そうして、毛家の陰謀が絡んでいたとはいえ、黒党羽が花路(ホワルー)を焼いてしまった侘びとして、
龍巣(ロンチャオ)から伐り出した木材を送りたいと申し出ます。
花路の名を出されて、思わず、恋しい相手に想いを馳せるような表情をしてしまう飛くん。
それを雷英に指摘されると、飛くんは「仕方がない」と艶めいた笑みを見せるのでした。
飛くんが『小黒龍』としてバリバリ働いているのは、
この止めようのない西里、花路、ひいてはマクへの想いを紛らす為でもあるんですね。

決起の際に一番の力添えをしてくれた元(ユァン)家の幼い当主の梨樹(リーシュ)も、家に戻っていました。
黒党羽に戻った猫(マオ)と共に、もうすぐやってくる飛くんのことを語り合います。
猫が、昨日、市街の市を見るために、飛くんが冬眠と並んで目抜き通りを歩いた際の人垣と娘たちの反応について語ると、

「うん。飛蘭(フェイラン)さまは、見目うるわしいかただから。
『黒龍』さまとおふたり並んでじゃあ、僕でも目が眩むくらいだよ」(41頁)

と、梨樹は飛くんファンの彼らしい言葉を言ってくれちゃいます。
しかし、梨樹、そして、猫も、飛くんが西里へ還りたいと言っていたことを覚えていました。
無理ではないかと尤もなことを言う猫に対して、梨樹は飛くんをひたすら案じています。
そんな梨樹に、元家を訪れた飛くんは、少し痩せたと心配されてしまいます。
苦笑してしまう飛くんでしたが、更に、梨樹と猫から、
街で飛くんを見た女たちが、飛くんが恋やつれをしているのではと言う噂をしていたことまで聞かされてしまいます。
そんな暇はないと、噂を否定した飛くんは、元家を後にしますが、本土からの使者を迎えにいく俥のうちで、
同乗していた草朗(ツァオラン)に、その件について何となく訊ねてみると、
お屋敷の侍女もそのように心配していたということが分かるのです(笑)。
恋やつれ…当たらずとも遠からず、という感じです。
相手は女性じゃありませんがね!!(笑)
ふとした瞬間に西里へと想いを馳せる飛くんの姿は周囲の人々にもしっかりとキャッチされていたようです。
さぞや色香漂う風情でいるのでしょうねえ、そのときの飛くんは♪♪
だから、「恋やつれ」などと言われてしまうのです!
しかし、噂をしながら、自分たちに手助けできることはないかと草朗に訊ねる侍女たちの様子から、
飛くんが皆にとても愛されていることも感じます♪
伍(ウー)家の使者を迎えた宴が滞りなく済んだ後、自室に引き取った飛くんを冬眠が訪ねます。
今回の大春節の親は黒龍市であるので、その際黒党羽が舞う龍舞に飛くんを借りたいと雷英の申し出があったことと、
それを『小黒龍』の仮の披露としたいという冬眠の考えを聞かされます。
そして、その月末には、飛くんが正式に『黒龍』の跡継ぎとなる儀式を行いたいとも。
ますます西里から遠ざかっていく自分の境遇に躊躇いを感じつつも、
飛くんは北里のため、また、師父の遺言を守るため、その申し出をしっかりと受けるのでした。

一方、青龍(チンロン)市。
青龍屋敷と隣り合う花園(ホワユァン)には、雪蘭(シュエラン)が戻ってきていました。
全くの幼子に還ってしまったような麗杏(リーシン)では、『青龍』としての務めを果たせないということで、
その代行として雪蘭は白龍(バイロン)から返されたのでした。
結局、大春節を過ぎた後に、マクとは正式に離縁するという形となった訳です。
申し訳ないことだが、助かったと、マクの善意を信じている善良な文海(ウェンハイ)老に対して、
実のところ、体のいい厄介払いじゃないかと指摘する酔熊(ツォイション)。
酔熊、大正解(笑)。
弟をあやすように遊ばせる雪蘭は、何ともマクに都合よく(笑)、
離縁やら何やらということには全く興味無しで相変わらずの天然ぶり。
しかし、意外にも、尊夫人(スンフーレン)の最後の言葉…花が欲しい場合は、
他人に摘んできてくれと言うのではなく、自分の手で育てるものなのだという言葉…は、彼女の心に残っていたようです。
それまで美しいもの、綺麗なものしか目を向けようとしなかった彼女でしたが、
「美しいのと丈夫なのとはどちらがいいのかしら」などと、口にしたりして、少しずつ変化の兆しを見せているようです。
麗杏は結局頭のネジが緩んだままですが、神経を張り詰め、物騒なことを繰り返していた正気の頃と比べると、
今の状態は彼にとって幸せなんじゃないでしょうか、周囲の人々にとってもね(苦笑)。
そして、奥さんの笑鈴(シャオリン)がおめでたになったと言う酔熊は、
飛くんのために大春節で何事かをやるつもりでいるらしいです。

そして、朱龍(チューロン)市。
樹林房(シュリンファン)にいる桃(タオ)も、飛くんの望みは西里へ還ることなのだろうと察しています。
そして、同じくそう察しているだろう樹林房主人、松妙(ソンミャオ)にこう言うのです。

「なんとなくね……飛のそばには、あの『白龍』さまが似合うような気がするんだよ。
やさしく微笑んでくれる飛も好きなんだけど……
西のご主人さまに向かって、なんだか挑みかかるみたいな目をしてるところが、
戯苑(シイユァン)の花旦(ホワタン)なんかよりも、ずっと色っぽかったと思うんだ」(79頁)

流石、飛くんファン!良く見てる!!(笑)
そして、過日の約束どおり、木を伐りに樹林房へとやって来た『朱龍』夏燐(シアリン)が、
桃に飛くんのいる北里に何事か悪戯を仕掛けようと耳打ちをするのです。

そして、また白龍でも、花路が大春節に飛くんのために何事かをしようと計画している模様です。
孫(スン)が晴れて花路の大兄となり、マクは春になったら、すっかり北里を攻めるつもりでいるようです(笑)。
しかし、花路も、屋敷執事の万里(ワンリー)も、飛くんを信じて待っています。

そうして、ついに大春節がやってきます。
島の中心にある天園(ティエンエン)に青龍、朱龍、そして白龍の『龍』が到着するのを待って、『黒龍』は祭祀を始めます。
『小黒龍』である飛くんも、
きらびやかな祭礼の衣装を纏い(梨樹からは「こうしてお見上げするだけでも、
どきどきするようなお姿、
侍女からはまぶしいほどだ等と賛美されています♪/笑)、
冬眠と並び、共に祭祀を執り行いました。
儀式を終えた飛くんは、龍舞のために梨樹が心を込めて準備してくれたという衣装に着替えようとしますが、
そのとき、その黒い袍(パオ)に、母に縁深い花である白木蓮の花が刺繍されていることを知るのです。
儀式の最中から理由の知れない胸の高鳴りを感じていた飛くんは、そのとき、微かに母の声を聞いたように感じるのでした。
これまた、手伝いの侍女たちに「何てお美しい」
「輝くばかりの姿と誇らしげに讃えられながら(笑)着替え終え、
儀式を行っていた龍壇(ロンタン)から出た飛くんは、そこで初めて桟敷にマクがいることに気付きます。
同時に自分の胸の高鳴りの理由を悟った飛くん。
取り乱しそうになるのをどうにか堪え、祭具の龍玉を雷英から受け取った飛くんは、黒党羽の龍舞を舞わせ始めます。
しかし、心の乱れは抑えようもなく、不意に飛くんは舞の所作を忘れ、手にした祭具を下ろしかけてしまいます(汗)。
そのとき、新たな騒ぎが起こるのです。

・「龍は薫風に翔る」名場面。

この巻も流石に名場面ばかりで、どれにしようか迷うところなのですが、以下の場面にしました。
恐らく四龍島初の、四市揃った龍舞の場面。
しかし、その場面自体も長いので、今回もところどころピックアップ引用方式で、ストーリーを追って行きたいと思います!

ふいに、広場の東側から、酔熊が先導する青龍の龍舞が乱れ入り、
続いて南側から、桃(タオ)が先導する朱龍の龍舞が加わります。
驚いて立ち尽くすばかりになってしまった飛くんに、酔熊が笑いながら、

「なあ、別嬪さんよ。あっちやこっちやに知り合いが多いと難儀なことだなぁ。
こんな時には加勢のひとつもしてやろうかと、方々に思わせるってのは……
まあ言ってみりゃあ、おまえさん自身の罪だぜ」(155頁)

うんうん、その通り!!(強く頷く)
飛くんは四龍島一愛されている罪な姫なのです!!!(笑)

早まる鼓動を抱えたまま、広場の西を見た飛くんは、
そこに、白龍の龍舞を舞うために、集まってきた花路の仲間たちの姿を目にするのです。

この晴れの日のため。
いまは別れてあるだれかのために。
駆けつけよう、花を添えよう、ここに我らは確かにあるのだと、そのひとに告げよう、と。

「堪らないぞ……これは」
くちびるを噛み、天を仰いで、それをまぶしさのせいにした。(156〜157頁)

ここ(↑)の辺り、初読のときは、一番感動したところではなかったのですが、
三回目辺りに読み返したときに、涙が出るほど大感激してしまいまして…(笑)
感極まって立ち尽くしちゃう飛くんの姿を想像したら、
もう何か…こっちこそ堪らないよ!!ッてな感じになってしまうのです(笑)。
島全土を巻き込んだ騒動の渦中で苦しみ、幾つかの大切なものも失って、それでも闘い抜いて、勝利を掴んだ飛くんを、
この晴れの場で讃えようと皆、集まってくれた訳ですよ…もう感動するよね(涙)。
本当に、飛くんは皆に愛されているよね!!(笑)
三市の龍舞に負けぬよう、飛くんも再び自らの龍舞を舞わせ始めます。
交錯するたびに、他市の親しい皆が飛くんに声を掛けてくれます。
そして、花路は、「帰って来い」「待っている」と…
そうして、舞い終えた龍たちは、それぞれの街の主の前へと向かい、拝跪しますが、
白龍の龍だけが、『黒龍』の前で拝跪するのです。
飛くんは、必然的に、マクの前へ行かざるを得なくなり…そうして、やって来た飛くんの目のまえで、
マクは顔を隠していた薄布を取り去って、飛くんを抱き寄せるのです。
公衆の面前で!!(照)
飛くんは自分のものであるということをマクは見守る大勢に向かって、主張したかったのでしょう!
やれやれ、これだから独占欲の強い男は。←あれっ、何か違います?(笑)
そうして、抱き寄せながら、マクは飛くんの耳もとに、
低い美声で(笑)「月末に北里を攻める」と言葉を残して腕を離すのです。
マクのこういう脅し文句は、ほぼ口説き文句とイコールなので、
もはや飛くんも読者もその内容自体にはそれほど驚きません(笑)。
その代わり読者(私)は身悶えますが(笑)、飛くんはマクと離れていることのもどかしさを一層耐え難く思ったよう。

大春節を終えた黒龍の街。
今までにない祭礼に、見物した黒龍の人々も興奮冷めやらない様子で噂し合っています。
でも、やはり、一番は北里の龍舞だと言って、飛くんのことを語り合うのです。

「龍玉を操る『小黒龍』のお姿の、あの美しさ。
まるで神龍(シェンロン)が戯れに人のかたちをとられたようなと、みなで見とれていましたよ」
「こっちじゃあ、春という時節の神さまが天園に立ち降りられたようだって、溜め息ついてたっけ。
なんだか、ふっ、と天へ還ってしまいそうな麗しさだよってね」
「えっ。そりゃあ困るじゃねえか」
「そうよ、嫌だわ」
「ああ、確かに嫌に違いないんだが……
『小黒龍』というかたには、どこかしらそんな風情がおありじゃあないかと、みなして話していたんだよ。
例えてみれば、この北里を助けにいらしてくだすった、神龍のお使いとでも言おうかなぁ」(168〜169頁)

ふっ、と天へ還ってしまいそうな麗しさ!!ですってよ♪♪
凛々しさ、頼もしさに加えて、そんな儚い美しさも併せ持つとは…堪りません!!(笑)
思えば、私の理想とする姫像って、飛くんを基盤としているのですよね…
彼のあらゆるポイントに、ツボを押されまくりなのは無理もないことなのです♪(笑)
…まあ、それは置いておいて、↑街の人々の会話からは何処かしら先の展開を予感させるものがあります。
当の飛くんは、大春節を終えた後、今までの無理が祟り、熱を出して寝込んでしまいます。
そうして、やっと熱が下がり、起き上がれるようになった飛くんは、ひとりで目立たない服に着替え、何気なく居室を出ます。
飛くんをそうと気付かない侍女と擦れ違いながら、冬眠と屋敷身内が話し合う執務室を過ぎり、屋敷裏手から街へと出ます。
そうして、屋敷と街が滞りなく穏やかに治まっている様子を、初めて客観的に目の当たりにするのです。
やがて、俥に乗って、龍巣へと辿り着いた飛くんは、その青い嶺を仰ぎながら、
ついに春が到来し、再会を喜んでくれる師父の面影を見、その声を確かに聞いたように感じます。
それから歩き出した飛くんは、何かに急かされるように駆け出して、元家を訪れます。
突然の来訪に驚きつつも、喜んで迎えてくれた梨樹に、飛くんは「身勝手な頼みがある」と、内容を言う前から拱手しました。
すると、梨樹はにっこりと笑って、飛くんの手を取るのです。

「困りました。僕は、あなたの望むことなら、なんでも叶えてさし上げたいと思ってしまうみたいなんです……」

どうぞ身勝手をおっしゃってください。飛蘭さま、と。(184頁)

ここの件は、私の中では、実際セレクトした名場面と一二を争うほどの名場面です!!
だって、梨樹は多く見積もっても、十二、三歳くらいの少年ですよ?
そんな少年に「あなたの望むことならなんでも叶えてさし上げたい」と、
いっぱしの男前が言いそうな台詞を言わしめるとは…流石飛くんなのです!!(そっちか!/笑)

・「龍は薫風に翔る」ベストオブイラスト。

正式に飛くんが『小黒龍』となり式を前日に控えたその日、飛くんは、黒龍屋敷の中庭に立てられている小さな館で、
冬眠、草朗、雷英に見守られ、衣装合わせをしていました。
衣装合わせの手伝いをしていた侍女たちがその場を外した隙に、
飛くんに呼び出されてやってきた雷英は、毛家当主の裁きの件について話し出します。
騒動の種を撒いた張本人である毛家当主だけは厳罰(斬罪)に処すべきと、進言する雷英に、冬眠も頷きます。
しかし、冬眠に意見を求められた飛くんは、きっぱりと異議を唱えます。
雷英は顔をしかめて甘いと言い、冬眠も溜め息を付いて、こればかりは避けられないと言います。
彼らの反応に、飛くんは黙って父親の処罰の話を聞いていた草朗に、心を乱すようなことを言ったことを詫び、
雷英には、ここでどうしても厳しい処罰を下せないのが自分の脆さだと以前雷英に指摘されたことを認めた上で、
冬眠に自分は『龍』の器ではないと言い出します。
そのとき、侍女が戻ってきて一端話は途切れ、衣装合わせが再開。
飛くんの美しさに喘ぐような溜め息を付きながら、侍女たちが龍鱗の冠を飛くんの頭上に飾り、衣装合わせは完了します。
目を細めて飛くんの姿に見惚れる雷英たち。
が、最後に飾り刀を渡して、侍女たちが去っった後、飛くんは、飾り刀を抜き払い、その刃を自分の首筋に当てるのです!
今回のベストオブイラストはその場面を描いたイラストです。

195頁のイラスト♪

これはもう、場面がどうこうと言うより、
飛くんの『小黒龍』おめかしスタイルに、素直に惚れ惚れした上でのセレクトです♪
すっきり前髪を分けて、髪を結い、宝珠瓔珞の揺れる龍鱗を飾った姿は、本当に美しいです♪♪
飾り刀を構え、やや幅広の袖から覗く腕飾りを付けた右手首の細さ
もポイント高いです♪←こりゃまたえらくピンポイントな…(笑)
飾り気のない普段の飛くんももちろん、大好きですが、たまに見せるおめかし姿もときめきますね!!
…ねっっ!!!←誰に同意を求めているのか…(苦笑)

そうして、刃を構えながら、飛くんはもう一度草朗に、彼の父を自分の為の言い訳にしたことを謝罪した上で、
斬罪にするのは反対だと言ったのは嘘ではないと言います。
北里にとっては憎むべき敵ではあっても、父親であった蜂焔の命を惜しんでくれた飛くんに、草朗は感謝を示し、
これで思い切れたと改めて、冬眠に蜂焔の斬罪を進言します。
それから飛くんは、白龍の黒龍攻めのことを打ち明けます。
しかし、それがなくても、自分は何が何でも白龍へ還りたいと、
今還れなければ死んでしまうと、彼には本当に珍しい我儘(?)を言います。
更には、ここで許しをもらえなければ、この場で命を絶って、魂魄だけの姿となっても還ると言い張るのです。
明日に迫った式をどうすると、何としても飛くんを『小黒龍』にするべく策を弄してきた雷英はこの場で一番渋りますが、
そんな彼に、飛くんは雷英が『小黒龍』になればいいと、そのためにこの場に呼んだのだと言うのです。
雷英、今まで幾度か飛くんを騙してきたしっぺ返しを思わぬところで受けた、という感じでしょうか(苦笑)。
しかし、それらのことは当代の冬眠が考えることと、飛くんは雷英の制止の声も聞かず、手にした刃に力を込めようとします。
それに「参った」と苦笑した冬眠は、のんびり調子で飛くんを止めつつ、前の夜に梨樹が訊ねてきたことを打ち明けるのです。
梨樹は飛くんを白龍へ帰してあげるよう、冬眠に嘆願しに行ってくれたのでした。
前の件で、飛くんが梨樹に「身勝手な頼みがある」と言ったのですが、
実際飛くんが梨樹に頼んだのは、これからの北里を穏やかで活気あるものとして欲しいということだけだったのです。
「身勝手」と言いながら、本当に身勝手なことを頼まないのは、とっても飛くんらしいのですが(笑)、
梨樹は飛くんの望みを賢く悟って、飛くんのためにと嘆願しに行ってくれたのです。愛されてるねえ…♪(笑)
飛くんの代わりに元家がきっと、街と屋敷とを守り立てていくからと、半泣きになりながら、
必死に頼むのに、冬眠は負けてしまったのだと言います。
命懸けの飛くんに、一番飛くんを白龍へ帰したくなかった雷英も頷かざるを得なくなり、
冬眠は飛くんに初めて、見送り代わりに今までの感謝を告げるのでした。
ゆっくりと衣装を脱いだ飛くんは、雷英に黒党羽老頭に対する言伝を託し、館を後にします。
回廊向こうに、老銭(ラオチェン)を始めとした数名の身内も、飛くんの見送りに来てくれていました。
中には涙してくれている身内もいて、そんな様子に何だかこっちもちょっと貰い泣き。←あれ?(笑)
屋敷の裏手では、梨樹と猫が待っていました。
猫は軽い口調で別れの挨拶をし、梨樹は目の周りを赤くしつつも、明るい声で飛くんを見送ってくれるのです。

で、ただでは還らないのが飛くんです。
黒党羽老頭は引退して蟄居の身とはいえ、遊びに来る近隣の子供たちに棒術を教えるなどして、
それなりに穏やかな日々を過ごしていました。
そこを訪れた雷英にも、街での飛くんの噂で月亮の若い頃を思い出したなどと、
明るく話し掛けますが、何処か一方的な様子は、無理に明るく振舞っているのだと感じさせます。
ただ、焼け崩れた龍巣の廟堂が建て直された件に話が及んだ時は、その顔に寂しさが滲みます。
残骸も残らぬほど焼け落ちた廟堂跡からは月亮と玉蘭(ユイラン)の遺骸は見付からなかったという話に、
落胆と安堵の混じった笑みを見せた老頭は、飛くんが白龍へ帰った顛末を聞き、
代わりに雷英が『小黒龍』にという話を受ければいいと言います。
祖母と北里のことを頼むとだけ雷英に言い残し、自害する覚悟を決めて、部屋へ引き取ろうとする老頭。
その後を雷英は付いてきます。
今度ばかりは邪魔するなと言う老頭に、まだ伝えていないことがあると、雷英は飛くんの言伝を伝えるのです。
何か、やっぱり雷英、自分の父親に対しても微妙にクール。
飛くんに対する執着とはえらい違いです(笑)。
飛くんの伝言はこういったものでした。↓
自分が今あるのは、老頭のお蔭でもある。感謝すると。そして、また、いつか会いたいと。
そして、この老頭が蟄居する館の庭にも咲く月亮に縁深い白木蓮の花を穏やかな気持ちで眺められる日が来たら、
共にそれを眺め、懐かしい人のことを語り合おうと言うのですね、多分。
優しいなあぁ、飛くん♪♪
そんな優しい言葉に、老頭は半泣きで(笑)「これでは西に足を向けて寝られなくなる」と言って、自害を止めるのです。
ここの件で、雷英が庭の白い花に飛くんを重ねて、
「罪な花です」とぼやいたところも密かにニヤリですよ♪♪(笑)

その頃、白龍屋敷では、執事の万里(ワンリー)が、花路の大兄に向かって、街の主の命を書きとめた書状を読み上げていました。
この日の正午になるまでに、飛くんの帰還がないときは、力を持って北里を侵すよう、という命の書かれた書です。
その内容に慌てるのはクレイひとりで、書状を読み上げる万里もそれを受け取る羅漢(ルオハン)たちも、本気です(笑)。
一方、そんなことは知らずに、白龍へ帰ってきた飛くんは、師父と共に暮らしていた東州茶房へと向かいます。
そこで、マクの命で、茶房を預かることになった玲泉(リンチュアン)と再会します。
帰還を喜ぶ玲泉から、飛くんは玉蘭が預けていったという子守唄を受け取り、涙する場面も感動的。
それから、茶房の自分の部屋で白い袍に着替えた飛くんは、白龍屋敷へと向かいます。
しかし、マクとはすぐ会えず、代わりにクレイに会います。
最初は驚いて口も利けず、次いで喜びの表情になったクレイに、
マクの居場所を訊ね、大龍(ターロン)の廟ではないかと言われ、飛くんはそこに向かいます。
しかし、廟へ向かう途中、ふと、母が住まっていた南荘(ナンチャン)へと足が向きます。
入った庭では、玉蘭が飛くんを思って植えた白木蓮の花が咲き乱れていました。
そこに、引き合うようにこれまた白の袍姿のマクがやってきて、ついにふたりの再会!!となるのです!
いや、この白木蓮の木の下での飛くんとマクのやり取りでね!
私、ふたりはちゅうをするんじゃないかと、ハラハラドキドキしちゃいましたよ!!
…しないんですが(笑)。
北里攻めのことマクが口にして、飛くんはすぐに我に返っちゃうのです。
せっかく飛くんが、抵抗する気をなくしてチャンスだったのに(笑)、自らそれをふいにするとは、マク、何と惜しいことを!
流石に帰ってきたばかりの飛くんを後で怒らせたくないと思ったのか、
まだこれからチャンスは幾度でもあると余裕こいたのか、それとも焦らし焦らされる過程を愉しみたいのか(笑)。
理由は定かではありませんが、取り敢えず、マクはここで飛くんの唇を奪うことはせずに、飛くんを花路へと行かせます。
…いや、ただ単に、マクにとって大切なのは、飛くんとちゅうすることじゃないってだけのことだと思うのですが(苦笑)。
求めてるのはそんな生半可な(?)絆ではないということで!
しかし、たかがちゅう未遂ごとき(笑)で、ここまでときめかせられる話は、なかなかあるまい(笑)。
…良く考えると、このふたりちゅうまがいのことは既にしてるのですが(笑)。
花路の大牌楼では、マクが北里攻めの為に召集を掛けていたこともあってか、いや、飛くんの帰還を予想していたのでしょう!
皆勢ぞろいで、飛くんを迎えてくれます。
そんな彼らの元へ飛くんは歩んでいくのでした。
あらゆる苦難を乗り越え、やっと、帰りたい場所へ帰り着いた飛くん。

いつまでも、ここに、ともにある。(270頁)

ラストのこの短い文章に何ともいえない感慨を覚えてしまいます(涙)。
本当に良く頑張ったね、飛くん!!(所詮骨の髄まで飛くんファン/笑)

本編はこれにて終了ですが、この後、四龍島は一年に一冊、番外編を刊行していきます。
もちろん、その番外編のレビューもしますよ!(笑)
そんな訳で四龍島れびゅ、まだまだ続きます。
今後もよろしくお付き合いくださいましたら嬉しいです♪