『花片戯曲』
四龍(スーロン)島シリーズ通算三十冊目となりますのは、「花片戯曲」。
主に朱龍(チューロン)が舞台のお話です。
『朱龍』夏燐(シアリン)を始めとした朱龍の懐かしい面々も登場。
しかし、やっぱりメインは、マクと飛(フェイ)くんのらぶらぶ(笑)だということを示すように、
表紙イラストはこのふたりのツーショットです。
本編での、飛くんが花旦(ホワタン)として舞台に上がり、
そこにマクも飛び入り参加(?)するという場面を髣髴とさせる着飾ったふたりの姿が新鮮。
一風変わった形に髪を結い、幾つもの簪(?)で飾っている花旦姿の飛くんが素敵なのぉ♪♪
本編にあるように、派手な舞台化粧を敢えてせず、唇と目尻だけに紅を注しているのが、また何とも艶っぽい仕上がりで♪
そうそう、飛くんのような生来の別嬪さんには、厚化粧はご法度!!
マクと並ぶと、自然に美男美女カップルに見えます♪(笑)
暑気に灼かれる四龍島の夏。
白龍(バイロン)屋敷で一緒に暮らしはじめた飛とマクシミリアンだったが、
色街・花路(ホワルー)の束ね役で忙しい飛はなかなか屋敷に居着かず、
それが不満なマクシミリアンは、飛に黙って夏の祭礼が近づく南里に旅立つ。
後を追いかける飛だったが、ふたりを待ち受けていたのは、
気鬱にふさぐ南里主人の夏燐と、木材商を狙った連続火付け騒ぎだった。
大人気四龍島シリーズ、最新刊!
(文庫折り返し部分より)
↑だと、マクと飛くんが同じ屋根の下で暮らしてるっぽいニュアンスですが、正確には同じ敷地内です。
飛くんは、白龍屋敷離れの南荘(ナンチャン)住まいなので、
同じ屋根の下ではないんだなあ…当然寝台も別!残念!!(誰に向かって言ってるのか…/笑)
更に、↑だと、一見飛くんが旦那で、マクが妻(…/汗)っぽくも感じられるのですが、
実際は飛くんが妻で。←一部妄想解釈あり(苦笑)。
このシリーズでは、姫のほうが活動的なのです♪
活動的な姫、大好きです!!(唐突)
暑気続きの上、花路で起こる種々の揉め事を治めるのに、寝る間も惜しんで忙しくしている飛くん。
この暑さは、マクと飛くんの仲を妬く神龍(シェンロン)の仕業ではないかと孫(スン)が言っている辺り、
大分ふたりの仲は皆に認められつつあるようです。
認められるというか、認めざるを得ないというところが正しいのでしょうが(笑)。
忙しい合間を縫って、飛くんが屋敷に顔を出したりもしたようですが、そんな時に限って擦れ違いがあったりして、
飛くんを傍に置くどころか、顔すら合わせていない状況に、我儘なマクは不満たらたら(苦笑)。
そこで、飛くんの気どころか身も引くべく(笑)、悪戯を仕掛けます。
再び忙しい合間を縫って屋敷を訪ね、やっとマクと顔を合わせた飛くんが、少し気が緩んだのか、
溜まっていた疲労の為に、つい転寝をしてしまっている隙に、マクは夏の祭礼への招待があった朱龍へと出掛けてしまいます。
しかし、転寝する飛くんの肩に、上着を掛けてやってるところ、夫(笑)としての優しさが多少なりとも(笑)感ぜられます。
マクの夢を見てる(らぶらぶだな/笑)飛くんの寝顔を愉しんだ礼かもしれませんがね!(笑)
目覚めた飛くんは、マクにしてやられたことに、舌打ちしつつ(苦笑)、すぐさまマクを追って朱龍へと旅立ちます。
朱龍入りした飛くんは、まず、縁深い木材商の樹林房(シュリンファン)の店里(ティエンリー)を訪ねます。
俥を降りて、店里入口へと向かう短い間、陽よけ布越しでも、目敏く美貌を見抜いた女たちに、
飛くんは早速ナンパされそうになってしまいますが(笑)、ちょうど外出先から戻ってきた桃(タオ)と梁(リャン)が、
目敏く飛くんを見付けて、その魔の手(笑)から逃れさせます。
すぐに樹林房主人の松妙(ソンミャオ)の元に案内された飛くんは、朱龍屋敷への手引きを頼み、松妙は快く承知してくれます。
その代わりに、飛くんは、松妙から『朱龍』の様子を見てきて欲しいと頼まれます。
訝しく思いつつもその件を引き受ける飛くんでしたが、そのとき、木の焦げた匂いに気付きます。
飛くんの鋭い指摘に、松妙は、つい昨日店里が火付けに遭ったことを打ち明けてくれます。
しかし、身内も雇い人も売り物の材木もみな無事で、戯苑(シイユァン)として店に入った犯人一味のひとりは、
既に桃と梁が取り押さえて、屋敷に引き渡したという話でした。
実母が先代『朱龍』だったこともあって、すぐに、屋敷に招じ入れられた飛くんは、さほど苦労せずにマクと再会します。
迎えに現れた三ババ…もとい(笑)、飛くんのお母さんの頃から屋敷身内として街のことにも携わっていた三夫人(サンフーレン)も、
相変わらず元気です。
マクのことを、「魂が吸われるかのような美男ぶり」
「『龍』の立場でなければ、縄を掛けてでもこの屋敷に籠めたいほどの神々しさ」
(「縄を掛けててでも」って…すげえ/笑)と言い、飛くんのことは、「澄んだ水のようにお美しいお姿」
「こうしてお見上げすれば、我らの寿命もぐんぐんと延びるよう」(この先どんだけ生きるの?/苦笑)とか、
言うております。←飛くんのほうだけ強調してみました♪(笑)
心なしか、飛くんに対する言葉遣いのほうが丁寧なのは、やはり、かつての主の実子だから?(笑)
で、マクと飛くん、ふたり並んだ姿を見れば、「なんとお似合いのお姿」「羨ましい限りの仲睦まじさ」
「絵に描かれたような美しさ」とさんざ褒めたてると。
当のふたりは、顔を合わせて軽い悪口の応酬をしてるんですが(笑)。
そんなマクと飛くんに、三夫人は当代『朱龍』夏燐が、現在気鬱の病であることを知らされます。
一月ほど前、彼女が初めて、裁きの場で斬罪を申し渡した重罪人の係累に嘆願され、
それでもなお行われた裁きを正面切って責められたのが原因のようで。
以来、彼女は『八仙花(パーシェンホワ)』と呼ばれる侍女とふたり、部屋に籠り切りになってしまい、政務も滞っているとのこと。
そこで、目の醒めるような美男である(笑)西の『龍』を呼べば、
夏燐の気鬱も晴れるかもしれないと三夫人は考え、マクに招待の書状を送ったのでした。
しかし、今尚、夏燐は部屋に閉じ籠り切りのままで、なかなかに症状は重いようです。
そんな三夫人の相談(?)に対し、「罪人の首を打ちおとすことを愉しみとするよりよほどましだ」とマクは、
辛辣なことを言って、我関せず的な態度を取りますが、飛くんは放っておけません。
せめて見舞いの文句なりともと勧める飛くんに、他市の『龍』よりも、
自分の主を慰めるのが先だろうと嗤ったマクは、案内もなしに夏燐の居室へ踏み込もうとします。
流石にそれはまずいと止めに入った飛くんに、マクは女官の腰にあった飾り刀を引き抜いて突きつけます。
やむを得ず、短衫(トアンシャン)の帯で応戦する飛くん。
ふたりの実に目に快い(笑)立会いに、最初は慌てていた三夫人も含め、その場にいる者皆が見惚れ、
飛くんがマクの刀を帯で絡め取って勝負を収めると、更に大きな歓声が上がりました。
そのとき飛くんの麗しい姿に胸高鳴らせた女官か誰かが
「あんな男と、ただ一晩でも契りたい」(76頁)と、言うんですよね(笑)。
ここで、飛くんは男にモテるばかりではなく、女にもモテるんだ
と私は改めて感心させられましたよ!!
普段から飛くんは、周りを男ばっかりに囲まれてるもんだから、
何となく男にばかりモテるイメージになりがちですが、そんなことはないのです!(笑)
老若男女問わずモテる、それでこそ我が姫!!(笑)
…とまあ、そんな感じで騒がしかった所為で、ついに夏燐が部屋から出てくるのでした。
マクの目論見、成功☆(笑)
その後、宴の席に顔を出したものの、夏燐の不機嫌さは一向に治まらず、
彼女は気に入りの侍女と共に、途中で退席してしまいます。
その後も宴は続き、マクと飛くんを酔い潰してあわよくば頂いてしまおうとする(笑)
侍女たちの方が先に酔ってしまった(つまり、マクも飛くんも結構な酒豪ということです/笑)頃、
飛くんは酔い覚ましに外へ出て、ちょうどひとりでいた夏燐と話をします。
『龍』の重責に挫けそうな不安を怒りに代えて、叩きつけてくる夏燐の言葉を、
飛くんはしっかりと受け止めて静かに諭し、彼女が『龍』の器だと信じていると告げます。
そこに、『八仙花』が夏燐を迎えに現れるのですが、彼女は飛くんに、
マクが宴の席で戯れに言った「火に包まれてさえともにある仲」という言葉を指して、
そんなことはあるはずもない、ときっぱり言い放ちます。
それまでの楚々とした印象とは違う顔つきとなった彼女に、色を移ろわせていく八仙花…つまり紫陽花の花を重ね合わせ、
少々目を瞠りつつも、飛くんは自分とマクのことはともかく、
火に包まれても互いに寄り添う運命はあるに違いないと、穏やかに彼女の言葉を否定します。
…飛くんのご両親がそうだったものねぇ…(ちょっとしんみり)
しかし、飛くんの応えを更に強情に否定した彼女は、これが証拠だと、ふいに自分の胸元にある酷い火傷の痕を見せ付けます。
それにさして驚いた様子も見せず、何も言わないことを指摘されると、
ただ、さぞかし、痛い想いをしただろうとしか言えないと応えた飛くんに、彼女は驚いた様子でした。
そして、ポツリと「これを見て、悲鳴を上げなかったのは二人目だ」と呟くのです。
何となく、彼女と夏燐が似ているように飛くんが感じたとき、先を歩んでいた夏燐が、気紛れに樹林房主人のことを訊きます。
それに元気だと応えた飛くんは、ついでのように、樹林房が火付けにあったことを伝えます。
声の良い戯苑の役者が犯人として捕まったことを教える途中で、突然、『八仙花』が怯え出し、
怖いと訴えて夏燐に縋り付き、二人は寄り添うように戻っていきました。
それから、立ち聞きしていたらしいマクと飛くんが話している途中、
飛くんは屋敷から逃げ出そうとしている様子の男を見咎めます。
取り抑えようとしますが、その男の顔色が次々と変わるのに驚かされ、男を逃がしてしまいます。
同時に、火付けの犯人として捕らえられた役者が、「百面化(バイミェンホワ)」を売りとしていたという桃の話を思い出し、
すぐさま追い掛けようとしますが、マクがわざと姿を眩ましたのに気を取られ、ついに、男の逃亡を許すことに。
そうして、またもマクの目論見により(笑)、逃がした賊を捕らえることになった飛くん。
しかし、その夜が明けないうちに、もうひとつ事件が発生します。
『八仙花』が、突然姿を晦ましてしまったのです。
夜明けを迎えても逃げた罪人は捕まらず、『八仙花』も行方知れずのまま。
目撃者の言によると、『八仙花』は自ら屋敷を出て行ったようでした。
夏燐は罪人のことよりもひたすら、『八仙花』のことばかり気に掛けています。
姿を消したふたりがどちらも火に関わることを気に掛けつつ、飛くんは屋敷とは別に罪人捕縛に動くべく、
樹林房に戻ろうとしますが、そこにマクも着いてきます。
更に、夏燐までもが自ら街に出て、『八仙花』を探すのだと我儘を言い、飛くんたちと共に行くと宣言するのでした。
結果、飛くんは、目立つ上に、共に苛烈な気質である『龍』ふたりの相手をしなければならなくなったのです(苦笑)。
樹林房に戻った飛くんは、事情を説明すると、松妙は喜んで協力を約束してくれます。
桃と梁が中心となって、手を貸してくれることとなりました。
夏燐は樹林房に人手を借りて、すぐさま『八仙花』を探して、祭礼で賑わう街中に繰り出すつもりでいましたが、
飛くんはそれを止め、まずは、逃亡した罪人、伍林(ウーリン)が加わっていた火付けの一味のことを知るべく、
被害にあった店里を訪ねることにします。
被害にあったふたつの店里を訪ねて、当時のことを聞いてみると、
どちらも似たような状況であったことが明らかになりました。
いずれも伍林のいた戯苑の舞台を見に、店里の殆どの者が出払っている隙に、店に火が付けられたこと。
自分が火の不始末をしたかもしれない、或いは、大切なものがあるからと店に戻った雇い人の娘が、
そのまま行方不明になっていること。
そして、その娘が火付け一味の戯苑を主人や主人の娘に見るよう勧めたこと。
その話で、『八仙花』を思い出した飛くんは、彼女も火付け一味に関わりがあるのではないかと気付きます。
マクもまた、そのことに気付きますが、『八仙花』を信じきっている夏燐は気付きません。
しかし、彼女は後に訪れた店里で、その娘が実の娘を亡くした主人に取り入ったのだと陰口のように告げた身内を面罵します。
例え、取り入ったのが事実であろうとも、その娘が子を失った悲しみに沈む主の心を慰めたのは事実ではないかと。
そのことの何処が悪いと言い放った夏燐の言葉には、『八仙花』への想いが込められていたのかもしれません。
『八仙花』は、夏燐が罪人の係累に罵られた日、俥での帰り道の途中で拾った娘でした。
道に倒れていた彼女を俥で危うく轢きかけ、小さな怪我を負わせてしまったのを屋敷に連れて行き、
行く当てがないと言うのでそのまま屋敷に止め置いたということで。
雨に打たれて泣いているような彼女の姿が季節の花に似ていたので、夏燐は彼女に『八仙花』という呼び名を与えたのです。
泣きながら幾度も礼を言う彼女に、夏燐は随分と心を慰められたのだそうです。
そのことを桃に語った折に、夏燐が『八仙花』がよく歌ってくれた歌を口ずさみますが、
それは火付け一味の戯苑が客の呼び込みの演目の目玉としていた『龍王別姫』で歌われるものでした。
桃の指摘に、夏燐はついに、『八仙花』が火付けに関わっている可能性に気付き、
同時に、飛くんがそのことに気付いていることも悟ります。
飛くんを捕まえて、詰問する彼女に、マクが煽るような言い方でそのことを認め、
逆上した夏燐は『八仙花』への嫌疑を頑なに否定し、ひとりで『八仙花』を探そうと賑わう街中へ飛び出してしまいます。
すぐさま、彼女を追い掛けた飛くんでしたが、そこで、夏燐とぶつかって揉めていた小男が、
火付一味の一人であることを、共に夏燐を追っていた梁が教えてくれ、その男を捕まえます。
捕まえた小男の話から、『八仙花』…本当の名は彩華(ツァイホワ)が火付け一味の一人で、
火付けの主犯を担っていたことが明らかとなります。
捕らえられた伍林は、ただ、本当に芝居をしたいだけの役者で、歌と芝居は上手くても、盗みの腕はいまいちだったので、
専ら狙う店里の者たちの気を惹いて、盗みを働きやすい状況を作る役目を担っていたそうです。
また、彼は彩華に好意を持っていたとのこと。
彩華の胸に火傷痕があることを知らされた時点で、彼女の無実を信じたかった夏燐の密かな願いは打ち砕かれます。
その後、気を利かせた松妙の計らいで、飛くんとふたりきりになった夏燐は、
自分もマクのような『龍玉』が欲しかったのだと零します。
実は、「飛くん」が欲しかったんじゃないかという気もしますが(笑)。
そんな彼女に、飛くんは、彼女が信じていた『八仙花』を自分も信じると言います。
その後、マクの発案で、樹林房出入りの戯苑に、『龍王別姫』をやらせて、彩華と伍林をおびき出すことになったのでした。
火付けは先ほど捕まえた小男の仕業だろうとのマクの言を、桃たちは信じている様子でしたが、飛くんは頷けません。
マクの嘘を見抜き、火付けをしていたのは、彩華だろうとも予想しますが、
夏燐があそこまで想いを掛ける彼女が、真の悪人とは思えず、何か事情があるのではと考えていました。
・「花片戯曲」名場面。
人探しをするなら舞台の上のほうが良く見渡せるので、自分を端役で舞台に立たせて欲しいと松妙に頼んだ飛くん。
すると、ここぞとばかりに(笑)松妙は飛くんを、
端役ではなく『龍王別姫』の主役のひとりである「紅姫」にしてしまいます。
最初は辞退しようとした飛くんですが、何だかんだと言いくるめられ、
結局、剣舞をする場面で紅姫として舞台に出ることに。
紅姫の衣裳を纏った飛くんの姿を、戯苑の人々も感嘆して眺めます♪
マクもまた、飛くんの艶姿を褒めて寄越し、それに飛くんが取り合わないでいると、
「神龍(シェンロン)がさらいに来なければいい」(208頁)
と、言います。
『龍王別姫』というのは、人の姿に化身した神龍と美しい人の娘紅姫の悲恋がテーマ。
それに引っ掛けたマクの上記の言な訳です♪
そんなマクの言葉に飛くんは、マクの胸を逆なでするのを承知で、
「さらいに来る相手が、天におわす神龍だとしたなら、西の『龍』もさすがに太刀打ちできないか」(209頁)
と訊くのです。
そのときは何も応えなかったマクですが、飛くんが舞台に上がった後、
神龍役が薄布で顔を隠しているのを良いことに、役者に代わって舞台に上がり、その応えを言います。
…という場面を今回は、名場面としてセレクトしました。
とまると思った相手が、ぐ、といきなり間合いを詰めてきて、こちらの腰を手荒に抱き寄せた。
顔のまえに垂れた薄い布越しに、その瞳が確かに嗤っていると思う。
『白龍』。
わざわざ確かめなくともその正体は知れるのだと、舞のつづきらしく装い、かろうじてその場を取り繕った。
引き寄せられ、のけぞって、きらびやかな相手の衣装の胸をおす。
……そうして質の悪い戯れを仕掛けてみせなくとも、俺はあんたのものなのに。
……どの枝、どの籠に囀ろうとも、西の『龍』の飼い鳥であることに違いはないというのに。
鉦の音のあい間、低い美声が耳もとに囁いてよこす。
「神龍を向こうにまわしたとしても、退くものか」
知っている。
ああして訊ねたのは、あんたの皮肉な、物言いを真似ただけ、と。
つい笑みそうになるくちびるを紅い袖に隠して、つ、と斜めに顔を背けた。(215頁)
衆目の前で何をらぶらぶしてるんでしょうかね!このひとたちは!!(笑)
しかし、傍目には舞台の演技のひとつとして見られているだろうところが、
秘密めいててなんかときめき♪(歪んでますか?/笑)
マクの自分に対する執着を理解していながらも、不安が拭えず、敢えて確かめてみたくなっちゃった飛くんなのでした。
大丈夫だよ、マクは、飛くんのことしか見えてない筈!!
きっと一部(クレイや万里(ワンリー)とか)を除いた他の人間は皆、イモに見えてるよ、きっと!!←どうかなあ(苦笑)。
でも、マクのほうが、飛くんが他の人間に奪われるかもしれない可能性を察知して、
やきもきしてることが多いのは確か(やきもきの仕方が普通の人とは違うけど/笑)。
飛くんは全く無自覚ですけどね!!←でも、そこが良い♪(笑)
で、ターゲットのひとり伍林が、密かにその舞台を見に来ていて、飛くんが見事お縄にするのでした。
捕らえられた伍林は、火付けを含めた全ての罪を認めました。
夏燐は、これで『八仙花』の無実が証明されると喜びますが、
こうまで素直に罪を認めるのなら、最初から伍林は逃げ出す必要が無かったはずと、飛くんは納得がいきません。
罪人として捕まる前、歌の上達の仕方を訊ねた桃に、気持ちを込めて歌うことと教え、
自分は今でも想う相手に気持ちが届くよう精一杯歌っていると言った彼。
彼が想う相手は彩華ではないかと見当を付けていた飛くんは、彼女の名を出します。
彼女は大分前に戯苑から抜けているので、火付けとは関係ないと応える伍林。
そこに、マクが先に捕まえた小男が、彩華が火付けの犯人だと言っていたことを告げた途端、伍林は激しくそれを否定します。
その姿に、逆に火付けの犯人が彩華…『八仙花』であることを知らされ、衝撃を受ける夏燐。
最後に飛くんが、彩華のことを問うと、芝居好きで、とびきり上等の紅姫を舞うことの出来る女だと、
強い振りをしているが決して悪い女じゃない、火付けなどできる訳が無いと伍林は応えます。
その言葉に、違うと知りつつ、『八仙花』の幸せのため、夏燐は伍林を火付けの罪人として、斬罪に処すことを決めます。
更にそこで、マクが余計な口出しをし、断罪の日を明日にすることが決まってしまうのです。
飛くんは、同じく夏燐の決定に納得していない松妙の好意で、もう一度牢に閉じ込められた伍林と話をします。
彩華の胸の火傷痕を見て、痛い想いをしただろうと最初に気遣ったのが、彼でした。
彩華は火を怖がっていて、夢にうなされてる時もあったといいます。
役者の身では贅沢な暮らしは与えてやれないと承知しながらも、彼女に真っ直ぐな想いを告げ、プロポーズし続けていた伍林。
その彼から逃げるようにある日、姿を消した彩華。
彼の彩華への深い想いを知らされ、また、彩華も彼を想っていることを察した飛くん。
彼女が屋敷の侍女として、不夜宮にいたことを教え、今も主の夏燐が傍に置きたいと彼女を探していることを伍林に告げると、
彼は心から安堵したように良かったと言います。
彼女の為に、迷いなく自分の命を投げ出すつもりでいる彼に、やるせない気持ちを飛くんは噛み締めます。
しかし、最後に伍林が言った「彩華は毒を抱えて生きている」との言葉に松妙から聞かされた材木商のことを思い出します。
五年と少し前、火付けに遭って店里が全焼し、身内全てが失われたという紅財房(ホンツァイファン)という材木商です。
強気な主人は、いざという時の為に、常に毒薬の入った小瓶を胸に下げていて、
身内全員にも同じものを下げさせていたといいます。
そして、芝居にちなんで「老紅姫」と渾名された主人には、跡継ぎとして可愛がっていた孫娘がいたという話で、
彩華が戯苑の小男に拾われたのが五年前。
そこで、はたと、彩華の正体に気付いた飛くんは、明日に迫った斬罪を止めるべく策を巡らします。
断罪の日の当日。
飛くんは、夏燐に今迄で分かったことを改めて告げます。
伍林が罪を犯していないと分かった上で、『八仙花』を守るために、
敢えて罪人として処罰するという明らかに街の主としては間違った道へ進もうとしていることに、
苦悩している夏燐は、更に心を乱すような事実を教えてくる飛くんに逆ギレしてしまいます(苦笑)。
他の『龍』の龍玉の癖に、余計なことを言うなと怒る訳です。
また、言ったからには、自分のものとなれ、と、どさくさ紛れに恐らく無自覚の告白を飛くんにしてるんですが(笑)、
飛くんもこれまた無自覚にあっさり断りの返事(苦笑)。
しかし、やはり迷いがあるのでしょう、結局夏燐は、途中で騒ぎが起こった場合は、
裁きの期日を延べると、暗に彩華が現れた時に飛くんが動いても良いと許しを与え、裁きが始まります。
裁きの間、桃と梁の協力も得て、集まった人々の中から、彩華を探し出そうとする飛くん。
伍林は読み上げられる罪状の全てを自分の仕業と認めます。
そして、最後に歌を歌わせて欲しいと言うのです。
彩華へ向けた最期の歌を。
そうと悟った夏燐は、伍林に許しを与えます。
伍林が歌ったのは『龍王別姫』のあまりにも住む世界の違いすぎる神龍との恋に苦しみ、
一人死のうとする紅姫へ向けた龍王の歌でした。
興味半分で集まっていた野次馬でさえ、心打たれ、涙ぐむほど素晴らしい歌でした。
そうして、静まり返った裁きの場に、髪を短く断ち切った彩華が飛び込んできます。
飛くんはすかさず動こうとしますが、マクに腕を掴まれ、無理やりその場に止められてしまいます。
飛くんが割り込む間もなく、彩華は伍林の無実と自分の罪を夏燐に訴えます。
そして、夏燐の傍で過ごしていて、やっと自分の罪を認められるようになったと言うのです。
夏燐が彼女に癒されていたように、彼女もまた、夏燐に癒されていたのでした。
何も言わぬ夏燐に、自害の許しを求めた彩華は、最後に人垣が邪魔で、歌が良く聞こえなかったと伍林に告げ、
胸に下げた小瓶の毒を煽ります。
一度だけマクの胸を叩いて、倒れ臥した彩華に駆け寄る飛くん。
伍林は絶叫し、夏燐は声もなくその場に立ち尽くします。
良くぞ裁いたと無責任な喝采を口々に唱え始める人々。
苦い思いでマクを見上げ、彩華の骸を抱き上げようとした飛くんは、しかし、ふと気付きます。
そして、涙を拭う桃に、密かに樹林房店里に医生(イーシェン)を呼んでくれるよう頼むのでした。
・「花片戯曲」ベストオブイラスト。
樹林房の面々に別れを告げ、白龍へ向かう俥に乗った飛くんの顔は晴れやかでした。
そのことを隣に座るマクが指摘すると、飛くんは種明かしをしてみせるのです。
彩華はやはり、紅財房の主人の孫娘でした。
そして、彩華が飲んだ薬は毒薬ではなく、眠り薬でした。
恐らく、主人が幼い孫娘に毒を持たせるのは忍びないと別の薬を持たせたのでしょう。
芝居が大好きで役者になりたかった彼女は、店里の跡を継ぎたくありませんでした。
そんなある日、家を飛び出し、神廟でひとり芝居の真似事をして遊んでいた彩華は、
戯れに店里を灰にして捧げますと願ってしまいます。
不幸なことにそのすぐ後に、店里は本当に全て焼け落ちてしまうのです。
胸に火傷を負い、自分の所為で店も祖母も死んでしまったのではという罪悪感が拭えぬまま、
盗みを働く戯苑に拾われた彼女は、いつか自分も皆の後を追わねばならないという強迫観念めいた想いに駆られて、
火付けを繰り返していたのです。
真摯な想いを向けてくれる伍林から逃げたのは、罪深い自分こそが彼には相応しくないと思ったからなのでした。
さながら、『龍王別姫』の龍王と紅姫のように。
切ないねぇ…(涙)
目覚めて自分の状況を理解した彩華は、罰を受けさせて欲しいと願います。
それに飛くんは、それを定めるのは南里の『龍』だと、裁きの采配を夏燐に渡すのです。
夏燐の裁きは、彩華を伍林と共に、密かに他市へ追放することでした。
二度と南里の地を踏むことを禁じる一見厳しい罰でありますが、
ふたりに夫婦になれと言った夏燐の真意はやはり、『八仙花』の幸せを願ってのもの。
ふたりにも彼女の真意は充分に伝わり、彼らは深く夏燐に感謝をするのです。
そうして、ふたりを見送った夏燐を、良い主になったと三夫人は言い合います。
しかし、それは飛くんの助言があったればこそ。
彼が南里の龍玉であれば…と叶わぬ願いをふと三夫人は口にし、すぐに口を噤むのでした。
白龍への帰り道で、この件の種明かしをしてみせた飛くんは、改めて夏燐のことを思い出し、
マクに似ていると思わず笑みを零そうとすると、妬きもちを焼いた(?)マクにいきなり引き寄せられます。
今回のベストオブイラストはラストのそんな場面を描いたイラストをピックアップ♪
311頁のマクと飛くんのらぶらぶな(?)ツーショットイラスト。
間近で視線を合わせているマクと飛くんの姿を拝見していると、こっちまで恥ずかしくなってきます(笑)。
必要以上に、ベタベタして見えないのは、飛くんの涼やかな横顔のお蔭でしょうか♪
マクの手はしっかり、飛くんの腰に回されていますがね!!(笑)
間近に仰ぐ銀灰の双眸が、嗤うとも憤るともつかない色を湛えているようだ。(309頁)
と、飛くんに余所見を許さないマクに、飛くんがふと思い付いて、
もし、裁きの場に引き出された罪人が飛くんで、裁きを下すのがマクだったならどうするかと問います。
その問いにマクは、「見守る野次馬どもの目を片端からくりぬいてやればいい」(310頁)と、
何とも過激な(苦笑)マクらしい応えを返します。
その応えを甘く感じながら、マクにお前ならどうすると無言で問われた飛くんは、立場が逆だとしたら
(飛くんもまた、『龍』の血筋ですもんね)、きっとマクに罰を与え、
自分にも同じ罰を科して共に逝くだろうと考えますが、結局応えをはぐらかすのでした。
飛くんの応えも実に清廉潔白な彼らしいです♪自分も周囲も誤魔化さない感じで。
やがて、俥は西里へと入り、マクの揶揄めいた問い詰めに促され、
飛くんは寄り道をせず、そのままマクと共に白龍屋敷への帰途へ着いたのでした。
そんな感じで、「花片戯曲」れびゅも終了です!
お疲れ様でした!(笑)&お付き合い有難う御座いました♪
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