龍は夜を抱く
ストーリーに不穏さが増すと共に、主人公、
飛くんの艶っぽさも増す(笑)四龍(スーロン)島シリーズ十五作目は、『龍は夜を抱(いだ)く』です。
「夜を抱く」って…何か意味深だなあ…♪(そうか?)
私の好きなタイトルのひとつです。
そして、表紙イラストも、四龍島シリーズ歴代表紙イラストの中で、ベスト5に入るお気に入りです♪
菊の花を背景に、佇むマクと飛(フェイ)くん。
白地に淡い紫を帯びた白(?)の大きな菊の花の模様をあしらった袍(パオ)を纏い、静かに目を伏せている飛くんの麗姿…(ラヴ♪)
そして、後ろから彼の額に手を当てているマク。
ふたりが触れ合っている部分といえばそこだけで、あとは視線を絡ませもしない、
らぶらぶとは言い難い(笑)イラストなのですが、それだけにそこはかとない色香が漂うのが、何とも言えずイイ♪
…で、このイラスト、次巻のあとがきで明らかになるのですが、編集部に送られてきたときにイラスト担当、
浅見さんのメモ書きが添えられていたそうで…それが、「お腹の子はあなたの子よ」(爆笑)。
そう思って見ると、確かに飛くんの左手が彼自身のお腹に触れているように見えます(笑)。
そして、マクが身重の妻を労わる優しい(苦)夫に見えてきてしまいます……(堪笑)
いやいや、ナイスです、浅見さん!!(馴れ馴れしいな)
しかし、本編の展開はその真逆を行っている感じです…(汗)
青龍(チンロン)の後見について、ようやく『黒龍(ヘイロン)』と対面したマクシミリアンだが、『黒龍』はのらりくらりと返答を避けるばかり。
その様子からマクシミリアンは、『黒龍』は無能を装っているだけではないかと疑いを抱いた。
一足先に白龍(バイロン)に戻った飛(フェイ)は、市街でつまらないいざこざが起きていることを知る。
が、悩みのあまり花路(ホワルー)に心を砕けなくなっている自分に気づいて…。
緊迫の四龍(スーロン)島シリーズ題14弾!
(文庫折り返し部分より)
そう、「緊迫の」なのです!
…というか、第二部が始まって以来、ずっと緊迫しっぱなしです!(笑)
まずは気になる、前巻ラストの「目が覚めたらそこに王子様が」(笑)状態の飛くんが、
口を滑らした(?)その後から。(10頁〜13頁)
「訊いてもいいか、マクシミリアン」
「……なにを訊きたい、花路」
「俺は…………あんたの…………!」
そのとき、吹いてきた強い風に、飛くんは次の言葉を封じられます。
そして、これは訊くべきことではないと気づくのです。
問いの続きを迫るマクが、「…………なんでもない」と口を閉ざす飛くんの唇をこじ開けようと、
差し込んできた指を容赦なく噛んで、飛くんはその場から逃げ出すのでした。
そのときの、
「逃げるな」
「……逃げる」
「逃げるなっ」
「…………逃げてやる!」
この辺りのやりとりが、痴話喧嘩っぽくてときめき…♪
責めるマクの口調に、余裕がなくなってるのがちょっぴり感じられますね(笑)。
でも、自分のことでいっぱいいっぱいの飛くんは、そんなマクの様子にまで気づけないのです(汗)。
さて、この巻ではついに、ヘタレ(笑)と噂の北里の主『黒龍』が本格的に(?)登場します。
本名は不明ですが、渾名は「冬眠(トンミェン)」。
これは本人の希望で、身内のものが「『黒龍』さま」と呼び掛けるたびに、「冬眠」と呼んでくれと要求する拘りぶり。
そんな『黒龍』は御年二十八で妻子なし、膝丈まである伸ばし放題の髪に顔を隠し、
草朗(ツァオラン)という美しい侍者なしには、何も出来ないと他市にまで聴こえる方です(でも、美男らしい…←重要/笑)。
マクとの対面でも、早速、身内が頭を抱えるような情けない姿を晒しますが、
マクの手厳しい言葉にやり込められそうになった身内を助けるように、のほほんと間に入った『黒龍』の様子を見たマクは、
彼が噂どおりの腑抜けではないことを察します。
…察しますが、それ以上どうこうしようという気はないんですね、このひとは(笑)。
彼の目下の(というか毎度の/笑)関心事は飛くんのことです。
『黒龍』との対面は果たしたものの、青龍の後見についての返答は保留にされ、マクは一旦白龍へ戻ることにします。
飛くんに噛まれた指を唇に押し付けて、「……いったい、なにを、訊こうとした」と、ひとりごちるマク。
頭の中は飛くんでいっぱいいっぱいのようです(笑)。
・「龍は夜を抱く」名場面。
ところ変わって、舞台は白龍。
もちろん、飛くんが登場する場面は常にときめきなのですが(笑)、
第三者の視点で飛くんのことが語られる場面も捨て難いってことで、今回はこの場面を名場面としてセレクト。
東州茶房で、飛くんの帰りを待つ怪しさ全開の師父(シーフ)+雷英(リーイン)の会話。
飛くんが育てた菊の鉢を眺めながらの会話はなされます(36頁〜41頁)。
雷英が語るには、飛くんは、本土に居た頃も、干した花が目の薬になるからという理由で、一生懸命菊を育てていたそうで…
それは目の悪い師父の為にしていたことで…本当に「見ていて歯痒くなるほどのやさしさ」(by雷英)なのです。
穏やかに同意する師父に、雷英は飛くんを拾ったときのことを訊ねます。
「知りたくなったのです。美しく咲いた花を目のあたりにして……
それが手折られるまえに、色や香りをじゅうぶんに愉しんでおきたいと欲ばりを起こすのと、たぶん、同じ気持ちでしょう」
(中略)
「人に徒な気持ちを起こさせる……それは、罪な花ですね」
「花が罪なら、育てた手も罪です」
「おや、わたしを難じますか、雷英」
「…………口が過ぎました」
「いいでしょう。ただしこの先、手折られる花を惜しいと思わないことを約すのならば……教えます」
なんかね、飛くんを「花」に例えて会話してるって辺りでもう堪らない感じです♪(笑)
ただの養い子、義弟のことを語るには、あまりにも美し過ぎる例えというか…何か別の想いを感じさせるのですよね。
「手折られる花」との台詞には、不穏なものを感じざるを得ませんが…(汗)
そして、師父は、他ならぬ白龍の海で飛くんを拾ったことを雷英に語ります。
そして…
両手で菊の蕾を包み込むようにして、茶房主人は微笑する。
いまにも咲きこぼれんばかりのふくらみを持った蕾は、けれどまだ頑なにその花弁を閉じたまま。
……もう間もなく開くはずと、蕾に望みをかけて待つあいだが……至福。
そう囁きかける茶房主人の声音が、いつにもまして穏やかだ。
「人を、殺したいと思ったことがありますか、雷英」
「師父?」
「では、人を生かしたいと思ったことは」
「……難しい問いです」
「では、教えておきましょう、雷英。ふたつの想いにさほど差はないのですよ。
ぴたりと背中合わせになって、ともにこの愛しい蕾のなか……」
この意味深な師父の台詞の意味が分かるのはもう少し先のことになりますが、師父が飛くんのことをひたすら愛おしむ一方で、
それとは逆の想いも抱えていたかもしれないことは、十二分に察せられます(どきどき…)。
こんな彼らを信じきっている飛くんはこれからどうなってしまうのでしょう…不安です(汗)。
この会話のすぐ後に、疲れきった飛くんが戻ってきますが、そこで緊張の糸が切れたのか、
彼は途中で意識を無くすようにして寝込んでしまいます。
しかし、花路のことを案じた飛くんは、気が付いて間もなく、花路へと出向きます。
そこで、夜市(イエシ)で山の手(『白龍』)の悪口が囁かれていること、
近く控えた菊花の祭礼の為に育てられていた菊が折られる事件が相次いでいること、
更に、それらが花路の仕業なのではないかと、密かに噂されていることを知らされます。
いらぬ汚名を着せられては叶わない…ということで、飛くんたちはその噂の出所を確かめるべく、動き出します。
飛くんは、花路と知られないよう、夜市の様子を確かめる為、雷英と共に夜市へ行くことにします。
ふと、思い付いて、黒龍行きで世話になった蜂大人(フォンターレン)が営む菜館(ツァイカン)を訪れた飛くんは、
そこで蜂大人と再会し、彼からも菊を折る賊の話を聞かされます。
しかし、蜂大人の店の雇い人が見たという賊の姿は、ひょろりと痩せた男ふたりとのことで、
屈強な男という噂とは違っていました。
白龍屋敷にことが知れる前に、事件を片付けようと知らず焦ってしまっていた飛くん。
しかし、夜市での噂はマク不在のあいだに既に、白龍屋敷に知らされていました。
そして、落とし穴は意外なところにあったのです。
前巻で怪しい動きを見せていた蜂大人、彼が手下の者に菊荒らしをさせ、不穏な噂をばら撒いた張本人だったのです!
それに気付くことのないまま、飛くんはますます追い詰められていきます(泣)。
一方、白龍へ戻ったマクは、帰りに花路へと寄りますが、飛くんに会うことはできないまま、屋敷へと戻ります。
それから、本土から呼び寄せていたマクの養育係にして、過去は花路の頭(トウ)でもあった、王老人(ワンラオレン)と対面します。
そこで、マク父、大龍(ターロン)が始めから、マクを跡継ぎにするつもりであったことが明らかとなります。
また、先代南里主人であった尊夫人(スンフーレン)の身分を明かさずに正妻に迎え、彼女とのあいだに子を為すことがなかったのは、
四市の和を持って成り立つ島の平穏を乱さない為であったかと、マクは見抜きます。
更に、マクは北里が西里を恨む心当たりや、
尊夫人と彼女付きの侍女(マク的にはこっちが本題でしょう)であった玲泉(リンチュアン)のことを、
王老人に訊ねますが、しかとした応えは得られませんでした。
やはり、本人を問い詰めるしかないとマクは思い決めたようです(苦)。
・「龍は夜を抱く」ベストオブイラスト。
今回は、場面的にどうとか言うよりも、本当に自分の好みのみで選んでみました(笑)。
197頁のイラストです♪
茶房給仕姿の飛くん+雷英のイラストです。
この飛くんの給仕姿が、何とも可愛いんだわぁ♪♪
さり気なく分けられた前髪や後ろで結わえられて肩に振り掛かっている漆黒の髪が柔らかそうで…触りたい〜〜♪
緊迫度を増すストーリー展開の只中にいて、はらはらさせられつつも、飛くんは私にとってのオアシスです♪
そして、姫です!!(笑)
さて、緊迫度を増すストーリー展開の方はといえば。
飛くん不在時に、茶房を黒党羽老頭(ヘイタンユイラオトウ)が訪れ、師父を長らく会えなかった主人として仰ぎ、平伏します。
そこで、雷英が黒党羽の頭の息子であることが明らかに(汗)。
そうすると、暗躍する蜂大人も師父の配下ということになり、彼らが北里、黒龍と関わりがあること、
また、師父が白龍で何か不穏な企みを抱いているらしいことが、徐々に見えてきました…
う、うわ〜ん、飛くん〜〜っ…(不安)
そして。故意、或いは偶然が重なって、飛くんはマクと黒龍で別れてから、
ただの一度も顔を合わせることなく、菊荒らしの賊を捕らえる為に夜市へと出向きます。
そこに現れた賊を一旦は追い詰めますが、すんでのところで逃げられ、
そのとき現れた白龍屋敷の手勢に飛くんが賊として捕らえられてしまいます。
蜂大人の策に、飛くんは見事嵌められてしまったのでした(汗)。
賊として牢房(ラオファン)に入れられたのが、飛くんであると気づいた執事の万里(ワンリー)は、
事情を聞いた上で飛くんを逃がそうとします。
マクから逃げないで欲しいと頼む彼に、進退窮まった飛くんは、
それまで散々会うのを避けていたマクに会いたいと懇願するのです。
そうして、やってきたマクに、飛くんはついに決別宣言をするのです…!(256頁〜266頁)
何故、よそ見をする、自分を愉しませるという約束はどうしたのだ、と責めるマクに、飛くんは、
ずるずると坂道を滑り落ちていくよりも、同じ落差を一気にとび降りてしまったほうがいくらかはまし。
もうこのままでは堪えられないのだと、胸に浅く息を吸って、
「許してくれ」
そう、相手の肩の上へと吐き捨てた。
「苦しい……だから、許してくれ。あんたを起こしたのは…………俺の間違いだった」
「……間違い、だと」
「そうだ。間違いだった……だから、いいかげんに、俺のなかから出ていってくれ。
俺のなかにかき立ててくれた邪魔なものごと、きれいに消えてくれ、マクシミリアン。もう……たくさんだ。
その目で俺を見るな。俺に、二度と……触れないでくれ」
そして、自分を二度と龍玉とは呼ぶなと、マクを諦めさせるために、
飛くんは自らの身体を投げ出すようなことまでします。
…いや、そんなすごいことではなくて(すごいことって何さ/笑)、あらわにした喉にマクの手を掛けさせただけですが。
まあ、そこでマクが自分を殺してくれても構わないとまで飛くんが思っていたことは確実ではないかと(涙)。
しかし、マクはその手を離し、その場に飛くんを残して牢を出て行きます。
そして、後ろ姿。
顔を覆って、嗤い声を吐いた。
闇のなかに、おのれの声ばかりが虚ろに響く。
……おかしい……苦しい……消えてくれ…………消えないでくれ。
…どうよ、この飛くんの乱れた心地!(いや、どうと言われても/苦笑)
そうして、ひとつ居場所をなくした(泣)飛くんは、花路に心の拠り所を求めるのです。
そして、迎えた菊花の祭礼の日、飛くんは具合が悪いと言って屋敷への同道を断り、
師父と雷英は、ふたりで茶房で育てた菊を納めにお屋敷へ出掛けます。
そのとき、雷英は低い声でぽつりと言います。(274頁)
「罪な花が開きましたが、師父」
微笑む東州茶房主人が、穏やかにそれに応えた。
そのようですね、と。
何だよ、何だよ!タイムリミットは間近ってことか?!(焦)
そして、ついにこの瞬間がやってきました。
祭礼まえに尊夫人から届けられた菊の小鉢のお礼に、南荘(ナンチャン)を訪れた、
マクの名ばかりの妻(笑)雪蘭(シュエラン)が、ひょんなことから薄布に隠されていた尊夫人の素顔を見てしまいました。
誰かに似ていると首を傾げる雪蘭が、あとから南荘にやってきたマクを見て、思い出したと無邪気に手を打ちます。(294頁)
「ええ、そう、思い出した。似ているのだわ。
ほら、『白龍』……あなたの……美しいけれど、傷だらけの犬に」
それすなわち、飛くんのことです!!
思いもかけぬ落とし穴(?)、
飛くんは見事なまでに母親似だったのです!(まあ、女と見紛う美貌という時点で、想像は付くと思われますが)
雪蘭の発言により、やっとマクは、飛くんの様子がおかしくなった理由を知らされたのでした。
この場面にて、『龍は夜を抱く』完!となります。
もう…この…続きが、ものすごく気になるところで!!(笑)
飛くんの出生の秘密に気付いたマクは、これからどんな行動をとるのでしょうか?
そして、飛くんは?!!
…と、どきどきしっぱなしだったことを思い出します(笑)。
取り敢えず、今回のれびゅはここまで。
長らくのお付き合い有難う御座いました♪
|