龍は嵐(ラン)に遊ぶ
四龍(スーロン)島シリーズ記念すべき十作目であり、
三ヶ月連続刊行の第二弾は『龍は嵐に遊ぶ』です。
まさに波乱万丈、嵐のような展開です。
母かもしれない玲泉(リンチュアン)が目の前で海に呑まれていくのを、どうすることもできなかった……。
青龍(チンロン)の襲撃はくいとめたものの、飛(フェイ)の中で何かが崩れかけていた。
『青龍』は高楼街(カオロウチエ)をつかって陸路から再び白龍(バイロン)を狙うが、
それに反発した高楼街の頭(トウ)、酔熊(ツォイション)は、青龍屋敷を見限る決定を下す。
大詰めを前に飛の脳裏に浮かぶ敵の姿は、『青龍』ではなく冷たい銀灰の瞳だった……。
激動の四龍島シリーズ第10弾!
(文庫折り返し部分より)
うっ、うっ、うっ……(嗚咽)だんだん飛くんが壊れていく…
この辺りから、追い詰められていく飛くんの心情が痛々しくて、
こちらも胸を痛めつつ、読んでいた記憶があります。
「マクのバカー、バカー、バカー!!」と文句垂れながら読んでいたような記憶も(苦笑)。
その一方でものすご〜く気になっていた気になる前回の飛くん貞操の危機。
…無事でした(当たり前/笑)。
あまりの衝撃に茫然自失状態だった飛くんは、
マクが文字通り喉元に噛み付いたときの痛みでやっとこさ正気に戻ります。
その途端、玲泉の名を叫んで、海へ乗り出そうとする飛くん。
それを後ろから強引に抱きとめ、羽交い絞めにしたマクから「無駄だぞ」と言われ、
「わからないッ」と吐き捨てる飛くんの痛々しい姿に、こっちはもう泣きそうです(涙)。
しかし、その崖上から、敵と戦いながら、海牙(ハイヤ)へ向かってくる李(リー)たちの舟が見え、
そこでまた飛くんは我に返ります。
青龍との戦いは始まったばかり。
白龍を守る為には、この勝負を落とす訳にはいきません!
飛くんはもう一度だけ大きく玲泉の名を叫んでから、迷いを振り切り、戦いへと身を投じるのです(涙)。
しかし、喪失感はどうしても拭えず……
更に飛くんの心を抉るような言葉を吐くマクに対する怒りも徐々に溜まってくるのです(汗)。
それでも、千々に乱れる気持ちを抑えて戦う飛くんは本当にえらいです!!
まずは、向かってくる敵を倒し、海牙へと乗り込んできた燕(イェン)たちと合流します。
そこで、マクと助けた千雲(チェンユン)を先に帰し、飛くんは燕の舟で白龍の港へと向かい、
休む間もなく、陸へ上がっていた敵と戦います。
飛くんの心情も気になりつつ、ここの辺りから、葉柳は結構わくわくしながら読んでました。
何とか、五分と五分の戦いを繰り広げていた仲間が、飛くんの参戦によって、一気に勢いを盛り返し、
勝利を収めるところなど最高です。
腕っ節の強さもさることながら、なるべく怪我が少ない戦い方を素早く仲間に指示して、
見事港からの敵を全て押さえ込んだ飛くんの技量にひたすら感心。
流石、花路(ホワルー)の頭!!
仲間がメロメロになっちゃうのも分かるね♪
しかし、敵は港からだけではなく、陸からも攻めてきます。
飛くんは、ここでも休むことなく、走り続けます。
花路の仲間を引き連れ、羅漢率いる手勢が、陸の敵、高楼街と睨み合う島の中心、
街と街の境目でもある天園(ティエンエン)へと向かいます。
そこで、びっくりの高楼街の頭であった酔熊との再会。
飛くんが花路の頭であったことに驚きながらも、
飛くんを「別嬪さん」と呼ぶのを止めない酔熊が何だか好きです♪(同士愛?/笑)
彼が海牙からの襲撃の知らせをくれたことに礼を言う飛くん。
しかしながら、高楼街は青龍屋敷の命令でここまでやって来たのです、
挨拶のみで終わる訳がありません!
そこで、双方とも名高き猛者軍団(笑)、花路と高楼街の頭との一騎打ちとなるのです。
ってことで…
・「龍は嵐に遊ぶ」名場面
「海のほうで一戦交えたあとだなんてぇ言い訳は、ここじゃあ通じないぜ、別嬪さん!」
手加減のない攻めに思わずいったん退き、間合いをはかり直してから、飛は一気に低く攻める。
切り込むように鋭かった天狼(ティエンラン)の刃とは、また違う高楼街の頭の得物つかい。
(中略)
「ちいっ」
引くと思わせて真上から襲いにくる。
辛くも避けて逆から攻め込めば、相手の髭面がからりと笑み、
「舌打ちする余裕があるたぁ、花路の頭の冠もだてじゃあねえな」
「言ってくれるッ!」
素面で調子が出なかったとは言わせない、と吐き捨てざま、飛は相手の喉もとを真正面から狙った。
ひょい、と避ける酔熊の手もとに、一瞬わずかな隙ができる。
そこをすかさず打ち払い、さらにかわすところをすばやく蹴りつけた。
(本文74〜75頁より)
手強い相手に苦戦しながらも、相手に引けを取らない見事な戦い振りを見せる飛くん。
かっこいいのです!!
やはり、この身軽さと素早さが飛くんの武器なのですな!
この巻では、ピックアップしたシーンのみならず、そんな飛くんの勇ましい戦いッぷりが、
随所で窺えるのです。
だからこそ、読んでいてわくわくしたのかもしれません。
ホント、今、読み返しても(笑)わくわくするよ…
そして、酔熊はこんなときでも、飛くんを「別嬪さん」と呼んでます(笑)。
この一騎打ちで、飛くんが酔熊の得物を弾き飛ばしたと同時に、耐え切れずに高楼街が動き出し、
それに応えるように花路勢も前へ出て、ついに正面対決!!
…となる手前で、青龍大酒庁(ターチュウティン)長老、文海(ウェンハイ)がその間に駆け込み、争いを阻止するのです。
文海老、何とか、捕らえられた青龍屋敷から脱出して、ここまで駆けてきた御様子…
彼の求めに応じて、双方とも刃を引き、飛くんは酔熊ともう一度話をします。
そこで、酔熊は、大酒庁に付いて、青龍屋敷を見限ることを飛くんに告げるのです。
青龍の白龍攻めを見事阻止して、白龍へとんぼ返りをする花路御一行。
飛くんはまたまた、休むことなく、白龍屋敷へと向かいます。
失った玲泉のことを思い出し、動けなくなってしまうのを避けようと、
ひたすら急かされるように走る飛くんの姿がホントに痛々しい…(泣)
白龍屋敷で飛くんは、何かを企んでいるらしいマクから、大酒庁長老へ宛てた書状を預かり、
そのまま花路へ戻らずに青龍へ向かいます。
この花路へ戻らなかったところが、飛くんの心に余裕がないことの証でありまして…(痛)
飛くんは白龍屋敷が大船主、祥船(シャンチョアン)を抑えたことや、
海牙で助けた千雲の行方も知らないまま出立してしまうのです。
・「嵐に遊ぶ」ベストオブイラスト。
…え〜、実は、この巻には浅見さんの一色イラストがありません。
あるのは表紙イラストのみ。
という訳で、今回は表紙イラストについて語ります。
イラストは凛々しくも麗しい飛くん。
澄んだ眼差しは鋭いくらいなのに、紅く色付いた唇が何とも艶です♪
このアンバランスとも言える雰囲気が飛くんの魅力なのです!!(力)
更に、この表紙イラスト、次巻と続き絵になっておりまして、
飛くんの隣にマクの髪と肩が見えているのです。
このマクが何をしているのか、無性に気になるぜ!(誰)と思いながら、
一ヵ月後の次巻発売を心待ちにしたものです(笑)。
実際、やらかしてくれたんですがね!!
ま、詳細は次回に(笑)。
飛くんは白龍屋敷執事の万里(ワンリー)と共に、青龍へと出向き、酔熊と共に身を隠していた文海に、
マクから託された書状を渡します。
マクが言うに、その内容は、青龍の無体な所業を強く責めるものだとのみ聞かされ、
実際に書状を確かめることのなかった飛くん。
最初は、厳しい面持ちで書状を読んでいたものの、最期には明るい表情となった文海の様子と、
書状が二通あったことに不審を憶えます。
しかし、今更書状を確かめる余裕はなく、飛くんはそのまま青龍屋敷へ上がると言う文海に、
護衛もかねて付いていくことにします。
真っ直ぐに敵へと向かう飛くんの胸に蟠る憤り。
それを向ける先がこれから会おうとする敵ではなく、マクである、
その理不尽さを充分分かっていながらも、飛くんはその気持ちを抑えることができません。
一方、白龍を襲う企みを悉く打ち砕かれ、追い詰められた『青龍』、麗杏(リーシン)は、溺愛する姉、
雪蘭(シュエラン)に、マクが会えるよう手引きした侍女で、
楽海(ユエハイ)の娘でもある美芳(メイファン)に刃を向けます。
そのとき、丁度現場に辿り着いた飛くんたち。
文海は必死に『龍』としての道を麗杏に説き諭しますが、案の定、麗杏はそれを聞こうともせず、
文海を切り捨てるよう言い放ちます。
ピンチ再来?!と思われたところに、高楼街の手勢が駆けつけ、
その場にいた青龍屋敷の手勢を抑えました。ほっ。
抵抗する手段を無くした麗杏の前に、文海は白龍からの書状を差し出すのです。
白龍屋敷の調べにより、海牙の船団の件は、『青龍』の謀であると露見したこと、
『青龍』側に反省の色がないようであれば、他の二市にも事の次第を伝え、
相応の謝罪を求めるつもりであること…と、書状の内容を伝えた後に、
文海は驚くべきことを告げます。
雪蘭の輿入れの準備をするようにと。
ことを荒立てずに治める代わりに、『青龍』の姉姫を妻として娶ることで、
今までのことは水に流すという『白龍』からの提案だと言って、
文海はもう一通の婚儀申し入れの書状を差し出すのです!!
…と、いうことは……
マクが…雪蘭と結婚?!!
な、何ですと〜〜〜っ!!!(悲鳴)
初めてことを知った飛くんも茫然。
こっ、これが、マクの企みだったのか!!!
ぎゃ〜!バカ〜、マクのバカ〜〜っ!!飛くんというものがありながら!!
こぉの浮気者がっ!!(ちと違う/苦笑)
次巻はついに、青龍篇最終巻!!
マクの真意は一体どこに?!そして、何より飛くんの心の行方は?!!
と、主人公の飛くんと共に、千々に乱れた心地のまま、次巻へ!!
今回のれびゅはここまで。
…毎度ながら語り過ぎです(苦笑)。
お付き合い頂いた方、どうも有難う御座いました(礼)。
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